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社説:25%削減行程案 めざす方向性はいいが

 大量消費に生活の豊かさを求めない。地域の特性を生かした低炭素型都市を実現する。技術面でも低炭素化につながるものづくりで世界をリードする。

 環境省の検討会のまとめをもとに小沢鋭仁環境相が公表した温暖化対策のための「中長期ロードマップ(行程表)」試案は、こうした視点に基づいている。

 方向性は間違っていない。鳩山政権がかかげる温室効果ガスの削減目標「2020年までに90年比25%減」「50年までに80%減」を達成しようと思ったら、人々の心のあり方も、社会も技術も、大きく変革しなくてはならない。

 とはいえ、試案が示す個別の目標は、非常にハードルが高い。

 国内対策だけで25%削減することを前提に、住宅の太陽光発電を05年の26万世帯から20年には1000万世帯に。エコカーを6万台から250万台に。自動車走行量は1割削減。住宅以外の太陽光発電による電力を85倍に。原発を20年までに8基新増設し、稼働率を最大88%にする。これ以外にも目標値が目白押しだ。

 目標達成には政策が欠かせない。試案は、国内排出量取引制度や環境税、再生可能エネルギーの買い取り制度、環境基準の強化などを列挙。施策を総動員すれば、目標を達成できると試算している。

 確かに、高い目標は社会を変えるきっかけになる。たとえば、「太陽光発電付き住宅」を標準仕様にできれば、低炭素社会に向けた意味のある一歩だ。

 一方で、施策には具体性の乏しいものが多く、目標の実現性や、目標達成のためのコストを誰がどう負担していくのかも不透明だ。「負担」ではなく「投資」と考えられればいいが、そのためには国民の意識を変える仕掛けがいる。大規模な投資をするには、目標の実現可能性も確かめておかなくてはならない。今後の議論で精査していくべきだ。

 原発の新設や稼働率向上も実現性に疑問がある。地震大国の日本は新たな立地場所を見つけることが難しく、地元の反対も強い。多くの原発が高経年化しつつある今、稼働率の向上が安全性とのバーターになってはならない。原発は事故などで止まると復旧に時間がかかる点も考えておかなくてはならない。

 試案は、家庭などに比べ産業分野の検討が不十分で、さらに議論を詰める必要がある。他省庁との調整も必要となる。経済産業省はエネルギー基本計画の改定を進めているが、温暖化政策とエネルギー政策は分かちがたい。両者がバラバラにならないよう、省庁間の縦割りを超え、一本化にも力を注いでほしい。

毎日新聞 2010年4月6日 2時30分

 

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