きょうの社説 2010年4月6日

◎株価の高値更新 期待したい円安の追い風
 日経平均株価が年初来高値を更新し、約1年半ぶりに1万1400円台を回復する場面 があった。リーマン・ショック前の1万2000円台まで、あとわずかのところまで戻してきたのは、雇用統計などの主要指数で米国経済の着実な回復ぶりが再確認され、94円台半ばまで円安が進んだのが大きな要因である。

 日銀金沢支店が発表した北陸短観(3月調査)は、製造業の業況判断指数(DI)が前 回調査より大きく改善し、2010年度の設備投資額も前年比16・9%増と3年ぶりのプラスとなり、投資マインドが上向いてきた。円安は輸出産業が多い北陸にとって、大きな追い風である。緩やかな改善が続くことを期待したい。

 北陸短観を見ると、製造業の改善を支えたのは、好調を維持している外需である。製造 業の需給DIは国内がマイナス49から同43だったのに対し、海外は同じく40から28へと改善幅が大きかった。生産、販売ともリーマン・ショック前の水準にはほど遠いが、効率化やコスト削減の効果が収益に結びつくようになり、薄日が差してきた印象がある。

 米景気の回復期待で、日米金利差の拡大観測が高まり、円売りドル買いの流れが加速し 始めている。先行きに楽観的な北陸の企業はまだまだ少数派とはいえ、円安の追い風を受けて「大底は脱した」という見方はほぼ定着してきたのではないか。

 北陸の雇用環境は依然として厳しく、製造業の雇用者数は、昨年末段階で前年同期比4 ・0%も減った。外需主導による業績改善効果が雇用にまで波及するにはまだまだ時間が必要であり、できることなら、もう一段の円安が望ましい。

 株価の上昇と円安の進行は、消費者心理を好転させる。円安で輸入品の価格が上昇し、 消費者には不利な面もあるとはいえ、経済全体で見れば、円安の恩恵ははるかに大きく、個人消費の拡大にもプラス要因である。特に北陸は、輸出関連の製造業が景気回復をけん引するケースが多いだけに、他産業への波及効果が高い。株価に続いて、地価が下げ止まってくれば本格回復の期待が膨らんでくる。

◎フランス芸術週間 おしゃれな金沢目指そう
 5月の第2回日仏自治体交流会議に合わせ、金沢市内で行われるフランス芸術週間の概 要が固まり、シャンソンやオペラ、大道芸、料理などの多彩な文化が紹介されることになった。日仏43都市が参加する会議の規模もさることながら、街がフランス一色となり、洗練された文化を身近に感じられる機会は貴重である。

 金沢はユネスコの「創造都市ネットワーク」登録、国の「歴史都市」認定などで新たな 看板が増えたとはいえ、その呼称にふさわしい都市づくりはこれからである。フランスには国挙げての文化政策を背景に、芸術や歴史を生かし、魅力ある都市づくりに成功している自治体がいくつもある。方向性を同じくする金沢にとっても学ぶ点は多いだろう。会議や芸術週間をフランスとの結びつきを強め、おしゃれで洗練された金沢を目指すステップにしたい。

 日仏自治体交流会議は日本側25都市、仏側18都市の参加が決まり、ナンシーで第1 回が開催された一昨年の29都市を大きく上回る規模となる。2日間の会議を挟み、5月8日から14日までのフランス芸術週間では、まちなかの15カ所でコンサートや大道芸があり、ホテルでは食関連イベント、百貨店でもフランスフェアが展開される。

 ミシュラン観光ガイド本で「三つ星」評価を得た兼六園の入園者数をみても、フランス 人観光客は年々増加している。ナント市発祥の「ラ・フォル・ジュルネ金沢『熱狂の日』音楽祭」は今年で3年目を迎え、今月10日に開館する、しいのき迎賓館はフランス料理の名店が中核施設となる。フランスとの交流が広がりをみせるなかで、芸術週間は多彩な文化を市民レベルで共有する機会となる。

 今回のような2国間の国際会議で、相手国の文化を大々的に紹介し、市民がそれを楽し むことは会議開催地としての最大のもてなしとなる。会議や芸術週間を成功に導くことは、金沢をフランスに発信するとともに、これからも質の高い国際会議を誘致していくための得難い経験になる。参加団体をさらに増やし、官民一体で盛り上げていきたい。