岩波書店取締役・小島潔と<佐藤優現象>(1) 

1.

岩波書店には、小島潔という役員(取締役)がいる。90年代以降に「ジャーナリズム」と「アカデミズム」を融合させた形でポストコロニアル系の研究や言説が流行したが、この小島という人物は、プロフィールにある「『思想』編集長(1993-99年)」という経歴やその他の「編集を手がけた」とされる書籍から明らかなように、その流れを編集者として積極的に促進したと言える人物である。当然、ポストコロニアル系の左派や、在日朝鮮人知識人、フェミニスト等に知己が多い。小島は、2007年6月以降、岩波書店取締役(編集局担当)に就任しており、現在に至っている。

小島は、左派系のアカデミズム周辺ではなかなかの有名人である。そういうわけで、私はよく、岩波書店が佐藤優を重用し続けることについて、また、金への岩波書店による攻撃について、「小島氏(小島さん)は何か言っている?どういう対応をしているの?」という旨の質問をよくいただく。

なかなか答えにくい質問だったので、これまではお茶を濁していたのだが、後述のように最近、岩波書店による<佐藤優現象>の積極的推進への批判を弱めるためと思われる、小島の活動が目立つところから、主として上記の問いに関連して小島に関して説明しておくことは大きな公共性・公益性があると考えるので、以下、述べておく。


2.

まず、佐藤優の件に関して言えば、私の聞いている限りでは、小島は別に佐藤の重用に反対しているわけではない。ただし、私の「<佐藤優現象>批判」刊行後は、佐藤優の起用に関して岩波書店に一定の注目が集まっている中で、起用によって岩波書店のイメージが悪化することに過敏になっていたと聞いている(繰り返すが、起用に反対しているわけではない)。まあ他にもいろいろあるが、就業規則との絡みからこれくらいにしておこう。

他方で、小島は、岩波書店による私への攻撃に関しては、極めて積極的であり、役員の中では最強硬派であると、複数のほぼ確実な筋から聞いている。

例えば、既に記したように、岩波書店は私に対して、「金が批判してはならない「岩波書店の著者」とは、岩波書店から1冊でも本を出版するか、または、『世界』等の岩波書店の雑誌で何回か記事を書いた人であって、「岩波書店の著者」が執筆した本や記事への批判は、その本や記事の発行元が他者であっても、岩波書店の本を批判したものと同じと見なす」旨を述べている。要するに、福田和也や鄭大均や工藤美代子が、『正論』や『SAPIO』に発表した文章を私が批判するのも、岩波書店から出た本を批判するのと同じだ、というのである(鄭大均については、実際に岩波書店は私に対してこのように回答している)。そして、その措置に不満があるならば会社を辞めるよう、退職を促してきたのである。

上記の見解は、2007年11月28日に、宮部信明編集部長(取締役(当時。現在は常務取締役)、小松代和夫総務部長(取締役)により私に対して述べられたものである。この日は、私の件に関する記事が掲載された『週刊新潮』発売日の一日前であって、会社は、翌日の『週刊新潮』に記事が掲載されることを知っていた。そしてこのとき、「首都圏労働組合特設ブログ」は存在していない。会社としては、どのようなことを言ってもやっても外部に漏れる恐れはないと考え、このような、「表現の自由」など全く考慮しない措置をとったのだと思う。ちょうど『週刊新潮』で誹謗中傷が書かれて金は落ち込むだろうから、それに便乗して攻撃することで、私が簡単に会社を辞めると思ったのだろう。

そして、実は、この「岩波書店の著者」の途方も無い拡大解釈と、それを前提とした退職勧告という会社の方針決定を主導したのが、小島だったというのである。しかも、小島の案は当初もっと強硬なものであり、さすがにそれはまずいとした他の役員がなだめて、上記の案になったとのことである。

また、佐藤に直接連絡がとれる場所の所在地を調べ、調査結果を東京地裁に報告しなければならないため、2009年6月22日に岡本厚『世界』編集長にメールを送ったこととその後の顛末は既に記したが、岡本から連絡の伝達を拒絶された後、私は、6月24日昼に、佐藤と懇意の馬場公彦学術一般書編集長宛で岡本に送ったのとほぼ同じ文面のメールを送ったのである。

馬場は夕方頃、佐藤への連絡を拒否する旨のメールを私に送ってきたのだが、実は、馬場はこの際に、一応上司である小島に確認したらしく、小島の「一切相手にするな」という指示を得て、私への回答を行なったとのことである。

その他にもいくつか聞いているが、とりあえず書くのはこれくらいにしておこう。

ところで、小島における、佐藤の起用によって岩波書店のイメージが悪化することに過敏らしい点と、岩波書店による私への嫌がらせ・いじめに関しては、極めて積極的であるらしい点とは一見矛盾しているように見える。だが、これは全く矛盾していないのである。

小島の方針は、「良心的な出版社」という、岩波書店に関して存在するイメージをどう存続させるか、という点にあると思われる。そうすると、そのようなイメージを崩しかねないものに関しては、否定的または攻撃的でなければならないのである。私への攻撃に関しては、かつて書いた、以下の執行委員の事例が参考になろう。


「戦後歴史学関係(『岩波講座 アジア・太平洋戦争』など)や中東関係の本(土井敏邦氏のパレスチナ関係の本など)、岩波ブックレットの本を数多く担当している編集者も執行委員の一人である。この人物は、執行委員会による私への一連の嫌がらせにも積極的に加担しているようだから、今回の私への「いじめ」にも積極的に関与していると見るべきだろう。恐らく、私の論文やブログの記事の批判により、岩波書店の「進歩派」としての体面が傷つけられたと考えて、私を潰すことでイメージを維持したいと考えているのだろう。」http://shutoken2007.blog88.fc2.com/blog-entry-13.html


恐らくこれと同じで、小島においては、他の役員よりもより強く、「岩波書店の「進歩派」としての体面が傷つけられたと考えて、私を潰すことでイメージを維持したい」という欲望が働いているように思われる。

(つづく)

(金光翔)
 
[ 2010/04/05 00:00 ] 未分類 | トラックバック(-) | コメント(-)