ペン先字幅について
パイロットの万年筆ペン先は、以下の種類がございます
字幅記号などは他社でも同一名称を使用している場合が多いので、他社製品の字幅表記についても、ご参考になると思います。ただし、海外製万年筆の場合は、字幅が太めです。具体的には、たとえば、同じF表記でも、海外製F字幅のペン先は国産のMクラスの太さの描線字幅になります。一ランクから1.5ランクほど太めの方向にスライドしていることになります。
海外製万年筆は同じF表記がある国産のものと比べて、書き味が良いと言われることがありますが、字幅記号が同じでも、描線字幅が違いますので、後述のように、太いペン先ほど書き味が良くなる傾向にあるので、同列には語れません。比べるとしたら、たとえば、国産のMと、海外製のF、と言ったように、筆記描線字幅がほぼ同じもの同士で比べるべきなのです。
ご注意:ボールペンの表示数値は、描線字幅ではありません。
字幅記号
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一般呼称 |
太さ |
字幅o*1 |
弾力 |
特徴 |
参考:パイロットの推奨する用途 |
参考:パイロットによる軸保持角度による選択基準*2 |
おすすめ |
UEF |
ウルトラエキストラファイン |
超極細 |
0.15 |
硬 |
現代の超劇細ゲルインキボールペンに匹敵する字幅(生産終了) |
UEFの詳細は、こちらをご覧下さい。 |
立てて持つ方
※エラボーのSEFは、やや寝かせて持つ方 |
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EF |
エキストラファイン |
極細 |
0.25 |
やや硬めのオーソドックスな極細ペン先 |
手帳や、数字など細かい字を書く方に
※ペン習字を習っている方におすすめ |
● |
SEF |
ソフトエキストラファイン |
軟 |
ソフト調の極細ペン先 |
軟らかいので極細ながらも描線字幅に若干の強弱/抑揚をつけられる
軟らかく書き味の良い極細をご希望の方におすすめ
※エラボーのみこの字幅が用意されています |
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PO |
ポスティング |
硬 |
ペン先を下向きにした硬めの極細字 |
ペンの開きが少ないため帳簿などで小さな数字や文字を書かれる方 |
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F |
ファイン |
細字 |
0.32 |
やや硬めの細字 |
ノート、日記、手紙、履歴書と用途の幅は広い
初めてお使いの方は、力を入れがちなので細字をお勧め |
やや立てて持つ方 |
● |
SF |
ソフトファイン |
軟 |
ソフト調の細字 |
ソフトタッチなので、字幅の強弱が出やすい*3
筆圧の弱い方向き |
寝かせて持つ方
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FM |
ファインミディアム |
中細 |
0.4 |
硬 |
やや硬めの中細字 |
Fと同様 |
立てて持つ方 |
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SFM |
ソフトファインミディアム |
軟 |
ソフト調の中細字 |
SFと同様 |
寝かせて持つ方 |
● |
FA |
フォルカン |
筆圧により劇的に変化 |
極軟 |
超ソフト調。毛筆の筆跡 |
SFよりもソフトタッチで毛筆の筆跡
字幅の強弱が強調でき、筆圧の高い方には不向き |
やや寝かせて持つ方 |
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M |
ミディアム |
中字 |
0.5 |
硬 |
やや硬めの中字 |
手紙や少し大きな文字を書く方に |
やや立てて持つ方 |
● |
SM |
ソフトミディアム |
軟 |
ソフト調の中字 |
SF・SFMと同様 |
寝かせて持つ方 |
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WA |
ウェーバリー |
ペン先を上向きにした軟らかめの中字 |
筆記角度を問わず、どなたでもご使用いただけます
用途はMと同様 |
どの角度でも |
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B |
ブロード |
太字 |
0.61 |
硬 |
太字 |
宛名書きや、サインなどに |
やや寝かせて持つ方 |
● |
SB |
ソフトブロード |
ソフト調の太字 |
軟らかさを生かして、ゆったりと書き味を楽しめます
※エラボーのみこの字幅が用意されています
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SU |
スタブ |
縦太横細 |
0.63 |
縦の線は太字、横の線は中細字 |
縦線、横線の字幅が異なるため、文字に味が出る |
やや立てて持つ方 |
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BB |
ブロードブロード |
極太 |
0.72 |
極太字 |
Bと同様 |
やや寝かせて持つ方 |
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C |
コース |
特太 |
0.85 |
特太字 |
特に大きな文字を好まれる方、サインなどに |
やや立てて持つ方 |
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MS |
ミュージック |
縦太横細 |
0.9 |
楽譜用写譜ペン |
一般的に楽譜用と言われているが、SUのように字幅が異なるので、カリグラフィーペンのように使える
音符を書くときの独特の使い方につては、こちらをご参照下さい |
やや立てて持つ方 |
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この表の筆圧は、パイロットによる基準、すなわち140gfを基準にしています。それより大きければ筆圧が強い、小さければ弱いということになります。
*1 字幅は、筆圧により変化しますので、目安です。
*2 軸保持角度は、パイロットによる基準、52°を中間としています。この選択基準は一つの見解として傾聴に値しますが、どのような保持角度でも、すべてのペン先は使用できると考えていただいて結構です。立たせて書く方が、B字幅が向かないということは決してありません。上記表の軸保持角度を第一基準に選ばずに、字幅やペン先の軟らかさから選んでください。ただし、SUなどは、やや寝かさないと、縦横差が出なかったりしますし、筆記角度によっては、字幅がメーカー基準の想定字幅にはならない可能性があります。
*3 SFやSFM,SMでは、過度な字幅の強弱を付けるような筆記はできません。柔らかいので、必然的に筆圧に敏感になり、先端の開きが大きくなることがあり、それによって、結果的に字幅に抑揚がつくことがあるかもしれない、というだけです。それほど大きな強弱は出ません。
また、同じ表記(Fペン先など)のペン先でも商品によって硬さ柔らかさは若干異なります。参考記事
●がついているものはお勧めです。
私見
極細域では、EFをおすすめします。POは下向きに曲がっていることによりペン先先端の中心が軸の中心方向に近づくため、やや違和感をお持ちになる方もいらっしゃるかもしれません。
SEFは、エラボーのみこの字幅が用意されています。非常に極細で軟らかいペン先は大変貴重で、めずらしいです。軟らかく書き味の良い極細をご希望の方におすすめです。エラボーのペン先は形状が前屈みになっています(SEFに限らず、エラボーのペン先ならば、すべて前屈み形状になっています)。
細字域では、Fが伝統的なパイロットのペン先弾力です。伝統を実感できるペン先です。
中細域では、SFMが字幅・書き味・弾力のバランスがとれ、とてもすばらしいです。FAは非常に柔らかいので、やや使いにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。昔のつけペンのGペンのようなつくりです。
中字域では、Mが伝統的なペン先です。WAは独特の上向きに曲がっている形状のため、好む方もいらっしゃいます。しかし、その独特の形状のため、ペン先先端の中心が軸の外径方向によりオフセットするので、やや使いにくいと感じる方もいらっしゃるかもしれません。また、伝統的に、WAは筆跡が独特の感じになり、好みが別れるとも言われています。
太字以上ですと、Bは伝統的なペン先ですが、それより太いペン先はやや特殊な領域に入ります。
SBは、エラボーのみこの字幅が用意されています
SUについて、昔のスタブはイリジウム厚みが薄い構造でイリジウム厚みを薄くすることによって細い横字幅を出しておりましたが、パイロットのSUは四角の角で書くような構成のため、筆記角度によっては、縦横の字幅差があまり出ない場合があります。
Cは、通常筆記タイプの最太ペン先です。イリジウム先端が大胆に平面に研がれている部分があるので、筆記角度やひねりによっては若干使いにくい場合があります。その場合でも、調整により問題なく使用して頂けるようになりますのでご安心下さい。
MSは、写譜用の特殊なペン先です。用途もさることながら、形状も変わっていて、切り割りが二本あり、イリジウムを3つに分けています。音符を書くときの独特の使い方については、こちらをご参照下さい。SUと同様のペン先として文字筆記用に使用することも可能です。
なお、ペン先を研削調整することにより、太いペン先を細く削りだして細い方向へ字幅を調整することは可能です。ご希望の字幅oに合わせる調整も可能です。ただし、調整幅としては1〜2ランクにとどめておくべきです。太い方向への調整は出来ません。
ペン先選択手順
パイロットなどでは、筆記測定イベントを開催しております。
イベントでは、筆圧や、筆記角度、ねじれ角度(ひねり)、抑揚、などから、データーベースを参照して、最適なペン先をピックアップしてくれます。ひとつの選択基準としてご利用いただくと便利です。
私の場合は、FMとMがお勧めという結果が出ました。しかし、私はFやSFM、Bなども大好きですし、自分ではFMやMが一番好きという訳でもないです。結果はともなく、ご自身の筆圧が平均と比べてどのくらいか測定してもらえるのは、とても利用価値があります。ちなみに、現代人の平均的な筆圧は、140gfとのことです。
こちらにはパイロットの推奨する用途や角度による選択基準を記しましたが、これも参考にはなり、一つの見解として傾聴に値しますが、どのような保持角度でも、すべてのペン先は使用できると考えていただいて結構です。
私は、以下のような手順でペン先をご選択いただくことをお勧めします。
まず、ご希望の字幅をご選択下さい。用途やご希望による字幅の選択が優先されるはずです。特にご希望が無い場合、一般論として以下のようなことは言えます。
・太いペン先の方が書き味がスムーズな場合が多いです。これは、紙に当たるイリジウムの大きさが大きいので、単位面積当たりの力が小さく、筆圧が分散されるからです。もちろん細いペン先でも書き味は良いのですが、太いペン先の太さゆえの筆圧が分散された書き味は細いペン先では実現できません。
・極細は、書き味の点では細さ故の独特の感じがあります。ものすごく細く安定的に書かれたい場合は、現在主流のパイロット・ハイッテックC025などの超劇細ゲルインキボールペンの方が良い場合も多いです。
なお、余談ですが、ハイテックC025と言った商品名の025はボールの径です。筆記字幅は、ボール径の約半分、ハイテックC025の場合は0.13oになります。
次に、ご希望の字幅域からご選択いただきます。
BやBB、Cなどでは他に無いので、字幅、即ご希望のペン先ということになります。
Sのつくソフト調のペン先がある字幅の場合、ソフト調のペン先と悩むところです。
一般的にはSのつかない通常のペン先をお勧めします。筆圧が強い方にはSのつくペン先はお勧めしません。
筆記の際、柔らかさを実感なさりたい場合は、Sのつくペン先が良いです。ただ、柔らかいペン先ですと、普段筆圧が弱い方でも筆圧が強くなるとき、たとえば、締め切り間際に、焦って大量の文字を筆記したいようなとき、ペン先の柔らかさにとても憤りを感じることがあります。私自身経験したことがあります。柔らかいペン先がお好みの方でも、非常用に硬いペン先もご用意なさる方が賢明です。逆に言えば、焦る可能性があるお席でご使用になるときは、硬いペン先の方が良いです。
この点からも、パイロットのFは、万人にお勧めできます。
※F字幅とM字幅の端的な字幅体験方法
F字幅はおよそ0.3ミリ、M字幅は0.5ミリですので、0.3と0.5のシャープ芯を立てて芯の断面積で書いて頂ければ、それぞれの太さを実感して頂くことができます
その他の特殊ペン先などについては、上記の私見をご参照下さい。
なお、ペン先硬さは商品ごとによって若干異なり、たとえば、同じ14金のFペン先でも、すべて全く同じ硬さイメージで筆記できるというわけではありません。
↓EFとMSペン先
MSペン先の先端が3つに別れていることがわかります。EFは最狭字幅でMSは最大字幅なので、先端幅の大きな違いがわかります
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