【社説】捜索中断求めた乗組員家族、意思をくみ最善尽くせ

 哨戒艦「天安」の行方不明者家族で構成する「失踪将兵家族協議会」は3日夜、記者会見を開き、「(行方不明者の)救助・捜索活動を中断し、船体引き揚げ作業を初めてもらいたい」と軍に要請した。同協議会は「(生存の)望みを捨てたわけではないが、船体内部は爆発による衝撃で海水が流入し、非常に危険な状態だと聞いた。潜水員の犠牲が心配され、現実的に生存の可能性も期待しにくいため、そう決定した」と説明した。

 家族協議会は同日午後、「天安」の船尾にある食堂でナム・ギフン上士(曹長に相当)の遺体が発見されたとの情報を受け、会議を開き、表決の結果、捜索中断の申し入れを決めた。表決で反対した家族も、多数意見を受け入れたという。

 ナム上士の遺体は、行方不明者46人で最初に発見された。「天安」の射撃統制長を務めていたナム上士は、1994年に下士として任官され、16年間にわたり艦上で勤務してきたベテランだ。

 ナム上士が遺体となって帰ってきたことは、他の行方不明者の家族にとっても他人事ではなかっただろう。家族がさらにいらだちを感じ、捜索作業で進展がないことで軍に不満を持ち、さらに多くの要求を突きつけることもあり得た。しかし、家族らは毅然としていた。息子、夫、弟の無事だけを求めるのではなく、彼らを探すために安全ルールを破ってまでも水中に身を投じてきた潜水要員の安全も考慮し、捜索作業の中断を求めたのだ。

 「天安」の行方不明者、チェ・ジョンファン軍曹の姉、ヨンファンさんは今月2日、同艦の生存者に手紙を送り、「46人が行方不明になったという罪悪感で人生を無駄に費すのではなく、国や家族のために懸命に生きてほしい」と呼び掛けた。多くの生存者は自分たちだけが生き残ったという事実に罪悪感を感じ、精神的ショックを受け、治療を受けているという。ヨンファンさんは自分が慰められるべき立場でありながら、むしろ弟の同僚を気遣った。

 海軍は行方不明者の家族からの要請を受け入れ、4日から船体引き揚げ作業を開始した。2002年の第2次延坪海戦で撃沈された130トン級の「チャムスリ357号」は、沈没から53日目、引き揚げ作業開始から17日目で引き揚げられた。「天安」の沈没現場は海流が最高5ノット(約時速10キロ)と速い上、海中は30センチ先も見えないほど濁っている。さらに、1200トンにもなる船体が海底の泥に埋もれており、引き揚げ作業にはチャムスリのケースよりも時間がかかりそうだ。

 それゆえ海軍はさらに有機的かつ組織的な体制を備え、必要によっては米軍から人員、設備の支援を受け、できるだけ早く船体を引き揚げなければならない。海軍は艦内に残されたミサイル、砲弾、軽魚雷、爆雷などの兵器を安全に回収し、万一の事態が起きないように注意を払う必要がある。ナム上士の遺族に、また、困難な決断を下した行方不明者家族の方々に改めて慰めの気持ちを伝えたい。

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

このページのトップに戻る