【萬物相】武功勲章

 西洋の勲章制度は12世紀の十字軍から始まったと言われている。異教徒と戦うためにヨーロッパ各地から十字軍がエルサレムに向かったことから、何かお互いを区別するものが必要になった。各騎士団の服装や色を決め、十字架を独自にデザインした標章を付けた。この時の標章が、戦争後も国または君主に身をささげた者に授与される名誉のシンボルのようになった。騎士団(chivalric order)と勲章(order)を表す英語が重なるのも、このためだ。

 勲章と戦争は切っても切れない関係にある。イギリスで現在、最も栄誉ある勲章の一つが武功勲章「ビクトリア十字章(The Victoria Cross)」だ。ビクトリア十字章は1856年のクリミア戦争で戦功を立てた軍人に初めて授与された。受章対象者は「敵と直接戦う状況で勇気を示した軍人」に限定されており、主に兵士に授与される。これまで授与されたのは1353人。この勲章を贈られた人だけが名前の後ろに「V.C.」という文字を付ける栄誉を得られる。

 米国の軍人が国から贈られる最高の勲章は「名誉勲章(Medal of Honor)」だ。「戦闘で自らの義務以上の勇敢な行為、あるいは自己犠牲を示した米国軍人」に対し、1回の作戦につき1師団に一人だけが受け取れる。名誉勲章を授与された軍人には、本人の階級にかかわらず敬礼をもって敬意を示すのが米軍の伝統だ。

 哨戒艦「天安」沈没で行方不明者を捜索中に殉職した海軍特殊戦旅団水中爆破隊(UDT)のハン・ジュホ准尉に「忠武武功勲章」が授与された。政府は当初、軍隊生活を33年間以上送った尉官クラス以下の軍人に贈られる「保国勲章光復章」を授与しようとしたが、ハン准尉が戦闘状況に準ずる悪条件で、命がけで捜索活動に当たり殉職したことを考慮し、勲章の格を引き上げた。

 国民の生命と財産を守ることに一生をささげる軍人にとって、国がその犠牲や献身を価値あるものと認めることほど重要なことはない。南北の軍隊が鋭く対峙(たいじ)し緊迫している最前線で、ハン准尉が示した勇気や犠牲を思えば、政府の武功勲章授与は納得がいく。その一方で、6・25戦争(朝鮮戦争)時に武功勲章受章者に選ばれた勇士約16万2900人のうち、今も勲章を受け取れていない人は8万5000人余りにも達する。こうした人々に勲章を贈る、軍の「武功勲章者探し」も、最後の一人が見つかるまで続けなければならない。

金泰翼(キム・テイク)論説委員

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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