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最後の一等地 梅田北ヤード、研究施設の情報発信なるか

 都心に残った最後の一等地とされる梅田北ヤード(約24ヘクタール)の第1期工事が31日、始まった。最先端の研究開発拠点やオフィス、店舗が集まる街だ。大阪・関西の活性化の起爆剤になるのだろうか。

 JR大阪駅北側の貨物駅跡地を再開発するもので、着工したのは、東側の約7ヘクタールだ。当初は2011年春の街開きを予定していたが、開発内容を見直したことなどで、完成予定は13年3月と約2年遅くなった。

 地上33〜48階の高層ビル4棟から成り、中核施設は、産学官の研究拠点「ナレッジキャピタル」だ。延べ8万8200平方メートルの施設にパナソニックや奈良先端科学技術大学院大、コクヨなど40以上の事業者が研究施設やショールームを開設する。研究対象は多言語音声同時翻訳機能付き携帯端末や食事支援ロボットなどで、人が集まる都心の立地を生かし、一般ユーザーの感性や反応を研究開発に取り込むことを目指す。

 第1期開発を手がける企業連合(12社)に名を連ねるオリックス不動産の西名弘明会長は「北ヤード再開発は大阪が再評価されるチャンスだ。世界中の企業が、ナレッジキャピタルなどで開発される最高の技術を取り入れようと、集まってくる」と話す。昨年秋以降、フランスの自治体や韓国のソウル市関係者などの視察が相次いでおり、海外の関心の高さをうかがわせる。

 ただ、関西の景気回復の遅れが、不安材料として残る。第1期開発が完成すると、新たに23万6800平方メートルのオフィス空間が誕生する。しかし大阪市内では、事務所縮小や閉鎖の動きが止まらず、数年前に計画されたビルの完成が続き、オフィスビルは供給過剰状態だ。「供給過剰に拍車がかかり、一等地とはいえ、賃料の高い北ヤードに入居したがる企業は少ない」とみる不動産関係者は多い。

 オフィスに加え、専門店を中心とした売り場面積8万700平方メートルの商業施設も計画されているが、11年には目の前にJR大阪三越伊勢丹が開店し、大丸梅田店も1・5倍以上に増床。12年には阪急百貨店梅田本店の建て替えが完了し、競争激化はさけられない。

 三菱地所大阪支店の山口修一・プロジェクト推進室長は「オフィスは駅直結で利便性が高い。商業施設も、生活スタイル提案型など独自色を出して、百貨店同士の競争と一線を画す」と話すが、テナントは明らかにされていない。

 10年後の街開きが目標の2期開発(約17ヘクタール)は、環境関連技術の拠点とする構想が固まりつつあるが、一方で8万人規模のスタジアム建設構想も議論され、全体像が見えてこない。北ヤードがにぎわうためには、街の具体像を描き、情報発信を増やせるかどうかにかかっている。

(経済部 辻本貴啓)
2010年4月1日  読売新聞)

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