小島麻由美×八馬義弘 vol.1


4年ぶりのアルバム『ブルーロンド』を発表したシンガーソングライター、小島麻由美。文字通りにスウィンギンな前作『スウィンギン・キャラバン』から作風が大きく変化し、60年代のガレージ・ロックやモッズ・テイストが盛り込まれた今回のアルバムはドラマーに元デキシード・ザ・エモンズ/ハッチ・ハッチェル・バンドの八馬義弘氏をフィーチャー。彼の起用が今回のアルバムの大きな鍵を握るとあって、botraでは彼女と八馬氏の対談を敢行。その秘密に迫ってみた。

3年ドラムを叩いてなかったのに小島さんに押し切られてしまった


──今回、4年ぶりのアルバムでは、ドラマーに元デキシード・ザ・エモンズ/ハッチ・ハッチェル・バンドの八馬義弘さんが初めて参加されていますよね?
小島「全く面識がなかったんです。でも、私と同じ事務所のピアニカ前田さんがハチマさんとライヴで一緒になったんですよね?」
ハチマ「そう。ピアニカさんは前から知り合いで、ライヴ後に事務所の社長さんを交えて飲んで、何事もなくその日は終わって」
小島「で、後日、社長が“ハチマさんのドラムがすごいよかったよ”って教えてくれて」

──八馬さんは小島さんをご存じでしたか?
ハチマ「社長さんから“うちの小島麻由美でドラムを叩いて欲しいんですよ”っていう電話がかかってきた時、失礼ながら作品は全く聴いたことがなくて。それに俺、以前やってたデキシード・ザ・エモンズってバンドが終わってから、3年くらい丸々ドラムを叩いてなかったので、“体もなまってるし無理ですよ”って答えたんですけど、“大丈夫です。とにかく今度スタジオに来てください”って押し切られて(笑)。そこで初めて、CDショップで小島さんの一番新しいアルバム『Swingin' Caravan』を手に入れて聴いてみたら、いきなり1曲目からやられてしまって、“すげえな、このメロディは!”って。しかも、ドラムはASA-CHANGで、すごい上手いし、俺には無理かもしれないけど、とりあえず行くだけ行ってみよう、と」
小島麻由美×八馬義弘 vol.2


今回のアルバムは少ない楽器で録ろうと思ってました


──ドラマーが変わったことで、小島さんが書く曲も当然変わりますよね?
小島「そうですね。八馬さんだったら、スウィングではなく、ドコスコドコスコさせて欲しいというか、8ビートだったり、60年代っぽいうるさいガレージがどうしてもやりたくなってしまって。だから、レコーディング・メンバーととりあえずリハーサルに入って、ラフな感じで演奏してみたんです」
ハチマ「色々やってみてくださいって言われたので、まずは自分の得意なパターンで攻めたんですけど、昔の癖でどうしても叩きすぎてしまうので、それを抑えつつ。未だにどれがいいのか、どういうものを求められているのか、探り探りやってる感じですね(笑)」
小島「でもね、少ない楽器でやろうと思っていて、そこで出来た隙間を埋めてくれるじゃないですか? それが良かったんです」
ハチマ「そう。つい埋めちゃうんだよなぁ。デキシーでは、ヴォーカル/ギターだったアベ・ジュリーのギターが下手だったので、なるべく、そのギターを聴かせないように、いつも思いっきり叩いていたので、その癖が出てしまって(笑)。でも、今回は塚本(功)くんという最高に上手いギタリストだったから、叩いていても気持ち的に楽だったというか、そこまで疲れないで済むっていう」
小島「でもね、塚本さんも八馬さんが入ったことで、以前のプレイとは全然違うんですよ。それがまた良かったんですよね」
小島麻由美×八馬義弘 vol.3


私は悪い感じの音楽にずっと惹かれているんです


──30、40年代にかけてのスウィングや50年代のガールズ・ポップの影響が感じられた作風が、今回は60年代のガレージやモッズに触発されているという印象を受けました。
小島「モッズ大好きですよ。デビュー当時から好きではあって、やってみたいことではあったから、今回やっと念願叶いましたよ」

──小島さんの一番新しいアーティスト写真ではフレッド・ペリーのポロ・シャツ着ていらっしゃいますけど、フレッド・ペリーと言えば、やはりモッズが思い浮かびますよね。
小島「八馬さんも好きでしょ? だって、今日もフレッド・ペリーだもんね。」
ハチマ「あ、ホントだ(笑)。いや、もちろん、好きですよ。というか、ドラムはザ・フーのキース・ムーンから入りましたから」
小島「あれ、ジミ・ヘンのドラマーは?」
ハチマ「ミッチ・ミッチェル。彼のちょっとジャズっぽいドラムももちろん大好きですよ。今、僕、ハッチ・ハッチェルって名前のバンドをやってるくらいだから(笑)」
小島「あの時代の音楽は音とか雰囲気が好きですね。リハーサルではスモール・フェイセズの“Own Up Time”を演ってもらって、カセットに録ったんですよ。私、そういう悪い感じの音楽にはずっと惹かれていて、逆に優等生っぽいと醒めちゃうんです。自分のレコーディングでも、歌入れの時には、みんなの歌のお姉さんみたいな、優等生っぽい歌にならないように注意しているくらいだし」
小島麻由美×八馬義弘 vol.4


ライヴは盛り上がりすぎて困ったことは一度もないです。


──4月には八馬さんをドラマーに迎えたツアーも予定されていますよね?
小島「お客さんが喜んでくれるといいんですけどね。自分だけ盛り上がって、“いやー、今日はいいライヴでした”って言っても、お客さんがしらーっとしてたら……」
ハチマ「悲しいねぇ(笑)」
小島「でも、自分では上手くいったなと思っているのに、スタッフが暗い顔で目も合わせてくれないっていうこともある(笑)。逆に今日はダメだったなと思っても、“よかったよ!”って言われたりもするし、その辺の感覚って、自分では分かってないかもしれないですね。あと、その日のお客さんの雰囲気も違うじゃないですか。やたら反応がいい時もあれば、しーんとしている時もあるし」
ハチマ「あれ何なんだろうね? ステージへ出ていく瞬間にその日のライヴがどういう風になるか、大体決まるよね。チケットをもぎる人の機嫌とか店員のビールの出し方とか、そういうことも関係したりして(笑)。そう考えたら、あまり頑張らなくていいのかも」
小島「でも、歌っているうちに、お客さんがどんどん静かになっていくライヴがあって、あれが結構堪えるんですよね」
ハチマ「それはじっくり聴いてるってことなんじゃないの? (笑)」
小島「そうだといいんだけど。でも、盛り上がって欲しいというか、盛り上がりすぎて困ったことは一度もないですから(笑)」


『ブルーロンド』
AWDR/LR2
発売中
小島麻由美
東京都中野区出身。シンガーソングライター。
1995年シングル『結婚相談所』で突然デビュー。同年発表アルバム『セシルのブルース』はジャズ、ジンタ、歌謡曲などの影響と少女的感性が結びついた“古くて新しい”音楽として注目を集める。以来、作品毎に意匠を変化させながらも“スウィングする日本語の唄”を軸に、圧倒的な個性と作品性でジャパニーズ・ガールポップの新境地を拓いてきた。最新アルバムは、ハッチ・ハッチェル(ds)、塚本功(g)、ほか参加。ガレージ・コンボ率いて “小島麻由美、いよいよ8ビート・エラに突入か!?” と巷で話題のビート・ナンバー集『ブルーロンド』(2010年2月)。
OFFICIAL SITE http://www.kojimamayumi.com/


八馬義弘
1997年にガレージ・ロック・バンド、デキシード・ザ・エモンズのドラマーとしてメジャー・デビュー。2006年にバンド解散後、エレキギターを手にし、ブルース・バンド、ハウリンハチマとして3枚のアルアムをリリース。2007年に新バンド、ハッチハッチェルバンドを結成。最新作は2009年10月リリースのハッチハッチェル名義のソロ作『旅のアルバム』。小島麻由美の最新作『ブルーロンド』では3年ぶりにドラム・スティックを握り、レコーディングに参加している。
OFFICIAL SITE http://officebarbecue.com/

Live Information
アルバム「ブルーロンド」発売記念 2010 Spring Tour


4/19(月)名古屋クラブクアトロ

4/20(火)大阪・心斎橋クラブクアトロ

5/05(水・祝)東京・赤坂ブリッツ


photo:石川ユーコ intervew & text:小野田雄
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