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起業家支援拠点 惜しむ声 大阪「メビック扇町」月末閉鎖

 大阪市北区のベンチャー支援施設「扇町インキュベーションプラザ(メビック扇町)」が今月末に閉鎖される。市は新たなベンチャー支援拠点を設置するが、起業家に貸し出す部屋はなくなる。起業家と周辺の業者との連携拠点となっていたため、惜しむ声は多い。
 

メビック扇町の閉鎖を前に開かれた最後の成果報告会

 「われわれや入居者の7年間のチャレンジをお聞きください」。メビックで24日催された「成果報告会ファイナル!」。堂野智史所長は100人を超す来場者に語りかけた。

 メビックは市が水道局庁舎の一部を使って平成15年に開設。起業家に貸す部屋(ブースを含む)48室のほか会議室もあり、これまでに約130の起業家が巣立ち、このうち7割以上が事業を継続しているという。

 周辺には関西テレビ放送などの放送局が集中し、広告やデザインを手がける「クリエイター」など約2万人が関連業界で働いているとされる。メビックには市が1年契約で雇った「インキュベーションマネージャー」と呼ばれる職員3人が常駐し、起業の相談にきめ細かく対応。周辺の業者を訪ね、発表会や会議の場を提供して入居企業と連携する仕組みを整えてきた。

 報告会で演壇に立ったナビバード(同市中央区)社長の山中和也さん(46)も“卒業生”の一人。インターネットで日本の商品を海外に売る事業を起こし、21年9月期の売上高は9億円と年々拡大している。

 山中さんは「メビックの情報網、ネットワークを最大限活用させてもらった。仕事のパートナーが見つけやすかった」と感謝。早朝、自分のブースに出社すると、隣から徹夜で頑張った人のいびきが聞こえたのも懐かしい思い出と振り返る。

 そうした起業家を育んだメビックも、戦前に建てられた水道局庁舎が市の耐震基準を満たせなくなり、近く解体されることになった。市は移転先として23年3月、近くの扇町キッズパーク内に「クリエイティブネットワークセンター大阪(仮称)」を設置する。

 関連事業費として22年度予算に約1億1600万円を盛り込んだが、新施設の延べ床面積はメビックの約3分の1の650平方メートルに縮小し、起業家に貸し出す部屋はなくなる。市経済局は「貸し部屋は水道局の遊休資産だったからできた。移転先では費用対効果の面で難しかった」と説明する。

 また、メビックの貸し部屋の賃借料は2万〜16万円前後と当初は起業家向けの割安物件として注目を集めたが、最近は民間の安い物件が続々とオープンし、堂野所長も「行政として、起業家に部屋を安く提供する役割は終わった」。新施設はメビックの近くでもあり、周辺業者とのネットワークを生かしながらクリエイターらの育成・交流に力を入れる考えだ。

【写真説明】メビック扇町の閉鎖を前に開かれた最後の成果報告会=大阪市北区(藤原章裕撮影)

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