山本順一被告
名古屋高裁に入る斉藤俊さんの父・正人さん=5日午前、名古屋市中区、福留庸友撮影
大相撲・時津風部屋で起きた序ノ口力士の暴行死事件で傷害致死罪に問われた前時津風親方・山本順一被告(60)に対する控訴審判決が5日、名古屋高裁であった。片山俊雄裁判長は、懲役6年とした一審・名古屋地裁判決を破棄し、改めて懲役5年を言い渡した。被告が遺族に対する被害弁償金を一審判決後に積み増したことなどを考慮した。
一審判決は、山本被告が同部屋の斉藤俊(たかし)さん(当時17)=しこ名・時太山(ときたいざん)=が愛知県犬山市の宿舎から逃げ出したことに憤慨し、2007年6月25日夜、ビール瓶で額を殴った上で、兄弟子3人に指示して、けいこ場の柱に縛り付けるなどの暴行を加えたと認定した。
さらに翌26日午前、「ぶつかりげいこ」の形をとって、土俵上に体を打ち付けるように倒し、倒れた斉藤さんの尻や脇腹をけったり金属バットで殴打させたりするなどして死亡させたと認め、ぶつかりげいこを「けいこを逸脱した違法な暴行」と指摘していた。
山本被告は一審判決を不服として控訴した。控訴審では一審での公判に引き続き、「兄弟子には暴行を指示していない」「ぶつかりげいこは技能向上が目的の通常のけいこで、けいこを受けることに斉藤さんも同意していて違法性はない」と主張。一審判決後、日本相撲協会からの退職金1588万円を新たに遺族に支払ったことも説明し、執行猶予付きの判決を求めた。
兄弟子3人に対しては、名古屋地裁が懲役3年執行猶予5年〜懲役2年6カ月執行猶予5年の有罪判決を宣告。すでに確定している。(志村英司)
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〈時津風部屋力士暴行死事件〉 愛知県犬山市の時津風部屋の宿舎で2007年6月、入門2カ月足らずの斉藤さんがけいこ後に急死した。県警は当初、病死と判断したが、遺族の希望で新潟大が解剖した結果、外傷性ショック死の疑いが強まった。事件から約8カ月後、前親方と兄弟子3人が傷害致死容疑で逮捕された。事件後、日本相撲協会は再発防止検討委員会の設置や、外部役員の登用など「角界改革」に着手した。