まず、金利など金融政策、そして資源の輸出入についての情報だ。政策金利は4%で、主要通貨の中では第1位で、0・1%の日本の40倍という金額である。景気自体は好調で、中国、インドなどの大人口を抱える新興国で、資源や食料への需要が高まったことが価格高騰の原因になり、好景気を継続させている。

 銅の生産も世界第4位で、インフラ整備に不可欠なところから、新興国の需要が高まっている。オーストラリアはアジアの新興国に地理的にも近く、恩恵を最大限に受けられるわけだ。日経の週刊経済紙「ヴェリスタ」によると、鉄鋼石を運ぶダンプカーの運転手の年収が、なんと約1800万円になるケースもあるということだ。

 これからも好景気を背景にした高金利政策は継続される可能性が高く、2008年の半ばのような7・25%という嬉しい高金利も夢ではないだろう。

 もうひとつ注目したい情報として、オーストラリアは世界第3位の金の産出国であるということ。それによって、金の価格と通貨価格が連動しやすく、最近の金の高騰によって豪ドルの買い材料になっている。

 また、米国や英国が掲げるテロとの戦いで、同盟国ではあるものの、一線を画しており、地政学的にみても、軍事的なリスクにはつながらない。

 狂牛病などの疫病リスクも、飼料はすべて国内で生産しており、輸入はすべてニュージーランドからのみで、BSEの発生もゼロなので、現在のところ考えられない。

豪ドルの動きを読み取るための経済統計とは?

 では、豪ドルの動向を読み取るための経済指標などは、どんなものがあるだろうか。「役に立つ経済統計ベスト5」ということで、ここで使える情報をあげておこう。

 第1位は、雇用統計で、非農業部門の雇用者数と失業率が重要視されている。米国の統計と同様に、両者の前月比の数値と予測値の差を確認すること。第2位は、実質GDPで、国内の経済活動を包括的に網羅できる指標である。発表のタイミングは、米国や日本、ユーロ圏より遅く、3月、6月、9月、12月の初めに直前の四半期分が発表されることになっている。

 第3位は、小売売上高で、前月比の上昇率に注目する。上昇率が高ければ豪ドル買いの材料になり、鈍化していれば売り材料になる。

 ちなみに、このデータは、GDPの消費を推計する際に使われ、物価を考慮しない名目的なデータである。第4位は、求人広告指数で、文字通り雇用状況の先行きを計る上で必要な数字である。求人広告が増えれば雇用者も増えるということで、雇用統計の先行指標として利用される。

 データの換算方法は、主要各紙の広告数をもとに算出したもので、前月比を見る。最後の第5位は、設備投資で、景気の先行きを予測する上での基本的なデータである。実質GDPと同じく、米国や日本、ユーロ圏よりは少し遅めの2月、5月、8月、11月の終わりに直前の四半期分が発表される。

好況でも変わり身が早い投機資金に注意せよ!

 こうして見ると、他の通貨とほとんど変わらないが、好景気を背景にした高金利政策を継続するオーストラリアと豪ドルに死角はないのだろうか。

 あるとすれば、中国やインドなどの新興国の景気減速と、それに伴う商品価格バブルの崩壊だ。石油などのエネルギー、鉱物資源、農畜産物の価格高騰の背景には、新興国による需給逼迫というファンダメンタルズがあることは間違いないが、年金などの長期投資資金やヘンジファンドなどの投機資金が、それを増幅させている傾向もあるのだ。

 年金などの基金は簡単には投げ売りはしないが、投機筋の場合には、暴落リスクが高くなった、あるいは天井を打ったと判断したら逃げ足は速いし、それどころか、今度はカラ売りで儲けようとする。

 価格が下がり、先安感が醸成されてくると、需要家も様子を見る姿勢に変わるようになる。そうすると、ますます需給が緩み価格は下落し、相場における負のスパイラルが始まるわけだ。 商品相場が天井を打つと、資金は徐々にドルへ回帰するので、豪ドル/米ドル相場も下がると予想されるのだ。

 したがって、豪ドルの行方を考えるうえでは、オーストラリアの景気や金利動向に加えて、世界的な経済状況や原油相場などの商品相場にも注意を払う必要があるわけだ。近い将来、捕鯨やイルカなどの環境保護問題も、経済関係に大きな影響を及ぼすことがありうるので、情報のアンテナは常に敏感に働かせておく必要があるだろう。

参考資料:『日本経済新聞』『「為替」のカラクリ』,『図解「為替」のカラクリ 賢く増やす!外貨投資入門編』(ともに松尾健治・青春出版社)

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プロフィール
橘 尚人タチバナ ナオト

大学卒業後、生命保険会社や投信会社などいくつかの金融機関を経て、現在、外資系投信会社でマーケットアナリストを務める。これまで金融商品の企画・設定から市場の分析に携わり、各方面で実績を積み、高い評価を受けている。一方、格差社会の問題にも関心高く、小泉構造改革の矛盾点を鋭い視点から分析する異色のアナリスト。著書に「石橋は渡るな!‐爆騰狙いのハイリターン投資入門」(光文社ペーパーバックス)がある。


本記事は、投資や貯蓄などマネーを活用するための情報提供を目的としており、続きを見る


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