過激な環境保護団体「シーシェパード」と豪ドルの意外な関係
日本人にとってオーストラリアといえば、オージービーフが身近だが、最近メディアを騒がせているのは、オーストラリアを実質的な母港とする過激な環境保護団体「シーシェパード」による調査捕鯨やイルカ漁への妨害行為である。
国際的に認可されている範囲内で、調査捕鯨を行っているにもかかわらず、日本に対して国際的な風当たりも強い。中でも、オーストラリアのケビン・ラッド首相は鯨の全面的禁漁を公約として掲げて政権を獲得しているので、成り行きによっては、国際司法裁判所に提訴する方針のようだ。
両国の関係が悪化すると、困るのは貿易関係者で、オーストラリアの貿易相手国として、日本・中国・韓国の3ヵ国で約40%も占めていて、東アジア、特に日本とは強い関係を保っている。
当然、日本からの投資も多く、1980年代には生保などの機関投資家が積極的に行っていたが、最近では個人投資家も外貨投資や豪ドル建て債券などで盛んになってきている。
これまで順調な貿易関係を続けてきた両国が、過激な環境保護団体による抗議活動で悪化することはなんとしても避けたいところだろう。
貿易関係が強いということは、当然為替の動向にも大きな影響があるが、一部の過激団体による行動で左右されるとなると、市場関係者も頭の痛いところだ。日豪政府の冷静なる判断が重要だが、一般的な日本人として疑問なのは、捕鯨やイルカ猟の現状を知る機会が少ないということだろう。
報道されるのは、シーシェパードなどによる調査捕鯨の妨害行動やイルカ猟の隠し撮り映像など、一部の報道だけで、これまでの歴史的な経緯や背景など、一般の日本人はほとんど知らされていない。
一般の日本人は鯨やイルカにはまったく興味がない
これだけ世界から興味本位で、批判的に報道されていても、実は一般の日本人は鯨やイルカは食べていないどころか、お目にかかったこともない人がほとんどであろう。つまり、自分たちの身に覚えがないところで非難されているのだ。
鯨が貴重なタンパク源として、学校給食で出されていたのは、いまから30年以上も前のことで、現在では鯨ベーコンとして、一部のスーパーや食堂に並べられるだけである。おそらく日本人の多くは、1年に数回、食すればよい方であろう。
その上、イルカに至っては、遊園地の曲芸で見るくらいで、食用とはまったく縁がない。そんな一方的な状況で非難されても戸惑うばかりだが、責任の一端は伝統的漁法とか歴史的な食文化という名目のもとで、情報公開と説明責任を怠ってきた日本側にもある。
これだけ報道が制限されて、本来の状況がわからないと、そこには利権などのブラックボックスが存在するのではないかと勘ぐられても仕方がないであろう。(次ページへ続く)