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救い求め 神に集う――第10部〈鼓動潮流〉

2010年2月22日9時46分

 埼玉県のJR西川口駅に近い賃貸ビルの一室に、中国語の説教が響く。「基督教国際福音教団」の礼拝室だ。オフィス向けの部屋のため、蛍光灯の明かりがやや強い。2月中旬の日曜日の朝、華人約100人が訪れていた。男女半々で、会社員、留学生、主婦が多かった。礼拝後、談笑しながら食事をした。生活や育児などの悩みを語り合う場でもある。

 「国際福音教団」は2年前に設立。川口、市川(千葉県)、横浜の三つの「華人教会」を新設、あるいは傘下に入れた。計約200人が訪れる。毎年1教会を増やす目標で、今年は東京西郊に設立する計画だ。

 建設関連会社に勤める遼寧省出身の女性(32)は1年前から川口の教会に通う。「会社の経営が不振で給料が大幅に減った。中国に残った友人たちは仕事が順調なのに、どうして自分だけと思うとつらくなった」

 市川の教会に通う上海出身の主婦(42)は「息子の幼稚園の母親たちと友達になれない」との悩みがあった。「神の愛を受けている」と思うと心が穏やかになった。

 「日本では自由に教会に行けるので、信仰に熱が入る」と語る人も。中国には多数のキリスト教徒がいるが、宗教活動に制約があり、大部分の信者は「家庭教会」と呼ばれる非公認の教会でひそかに祈るという。

 教団を設立した李宏裕牧師(51)は台湾出身で、2004年に来日した。日本人への宣教を目指していたが、日本での生活や仕事で悩む華人の多さに驚き、「信仰をより必要としているのは華人だ」と考えて方針転換した。

 「日本は毎年3万人を超える自殺者がいるほどのストレス社会。文化や習慣が違う華人も深刻だ。華人は増え続けており、もっと心の問題に目を向ける必要があるのではないか」と心配する。

 李牧師と活動する朴日永伝道師(32)は遼寧省出身。00年に日本に留学。学費と生活費のためアルバイトに明け暮れる日々に「将来どうなるのか」と不安が募った。教会を訪れ、「不安や苦しみが消えた」。多くの華人を救いたいと、牧師を目指す。

 在日華人の急増、中国人への布教者の登場、不景気などが「華人教会」の広がりを加速する。関係者らによると、全国に約30教会がある。この10年余りで倍増した。

 「華人之家」は名古屋と京都に教会を持ち、福井と東京でも聖書勉強会を開く。約100人の信者の大半が中国人留学生と元留学生だ。1956年設立の東京国際基督教会(東京都渋谷区)でも、中国出身の信者が急増し、約400人が集う。(山根祐作)

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