今月、定年退職する昭和署刑事課の男性捜査員(60)が最後の事件として、これまで自身が勤務してきた警察署で何度も逮捕されてきた蟹江町生まれの男(38)の詐欺事件を担当した。これまでも詐欺を繰り返してきた男に「彼を立ち直らせることが最後の仕事。今度こそ更生を」と願う。
男は2月、キーを車内に残したままドアを施錠してしまったとうそをつき、「業者を呼ぶ金を貸してほしい」と高齢者から現金をだまし取ったとして同署に逮捕された。
捜査員は30年以上、刑事一筋。2002年と06年、当時勤務していた中村署と南署が同様の手口の詐欺事件で男を逮捕しており、事件は担当しなかったが「手口が独特だった」と強く印象に残っていた。
昨年12月ごろから、昭和署管内で「詐欺被害に遭った」との相談が相次いだ。被害者から手口を聞き、「あいつでは」と直感。サウナなどを転々としていた男がよくパチンコ店に行くことも覚えていた。男は市内のパチンコ店で見つかり、昭和署で捜査員と顔を合わせると「お久しぶりです」と頭を下げた。捜査員は「最後にやらせてほしい」と自ら担当を申し出た。
高齢者ばかりを狙った同様の詐欺被害は市内で約50件。調べに対し、男は「捕まってよかった。これでやめられる」と供述しているという。
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