東京ディズニーリゾートで入場者は「ゲスト」と呼ばれている。一方、スタッフは全員「キャスト」。数々のステージやアトラクションを含むパーク全体を、一つの大きな舞台に見立てている。
その壮大な仕掛けは、ゲストがJR舞浜駅に降り立つところから始まる。ホームでディズニーソングを耳にする。改札を抜け屋外のデッキへ出ると、シンボルのシンデレラ城の先端が視界に飛び込む。二つのパークにいったん入れば、今度は外界が建物や盛り土、樹木で巧みに隠される。
計算を尽くした空間の配置や演出。夢を支える技術の一つが「景観デザイン」だ。
シンデレラ城にも仕掛けがある。高さ51メートルだが、近くで見上げると、はるかに高く感じる。低層は大きく、高層は小さく……と、比率を微妙に変え、遠近法を駆使して迫力を増しているのだ。
「遠くで景色、近くでは細部を感じさせるのが、発想の原点です」。オリエンタルランドで景観デザインに携わる中村千草マネジャー(49)は言う。03年冬、城を夜の撮影スポットにしようと、光や音楽で雪の結晶が舞い降りる演出を手掛けた。閉園後の真夜中に何度も試演。本番の夜、中村さんはゲストの反応を探った。若いカップルの男性の感極まった声が今も耳に残る。「やばいよ。きれいで体がガクガクする」
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国内のテーマパークで独り勝ちを続け、入場者が5億人に近づく東京ディズニーリゾート。その魅力の秘密に迫る。【山縣章子】
毎日新聞 2010年4月4日 東京朝刊