歴博「集団自決」説明改変
千葉県の国立歴史民俗博物館にある沖縄戦での「集団自決」(強制集団死)を説明した文章が問題になっています。「集団自決」が起こった原因について、もともとは「軍人からの指示や命令など、住民の意思決定を左右する戦時下のさまざまな要因があった」と書いていたのに「『集団自決』に追い込まれた人びともいた」という文章に変えたからです。つまり日本軍が「集団自決」にかかわったことを文章から削ったのです。
このことに沖縄戦を経験した人や沖縄戦を研究する人たちが怒りました。彼らは「自分は軍人から手榴弾を渡された。『これで死になさい』という意味だったから日本軍が『集団自決』に関係があったのに、なんで削るんだ。これでは沖縄戦の本当の様子は伝わらない」と言います。2008年には今回と同じように高校の歴史教科書から日本軍がかかわったことが削られ、問題になりました。
65年前、沖縄にアメリカの軍隊が攻め込んでくると、いろいろなところで「集団自決」が起こりました。兵隊でない普通の人たちも手榴弾や毒薬を使って自殺したのです。家族を殺してから自殺した人や死にきれずに生き残った人もいます。「自殺するように無理やり追い込まれたのだから、殺されたのと一緒だ」という意味で「強制集団死」という言葉も使います。
博物館に助言する先生たちも「集団自決」に日本軍がかかわったことは認めています。なのになぜ、文章を変えたのでしょうか。いま、軍人が住民に「自決しなさい」と命令したかどうか裁判になっていてその結果が出ていないから「文字資料で検証できるレベル」にしたと説明しています。
裁判のために沖縄戦を体験した人の証言を説明に採り入れなかったのです。沖縄戦で住民がどういう風になったかは文章でほとんど残っておらず、大学の先生たちは証言をいっぱい集めて研究してきました。この先生たちは「住民の証言を無視したら、沖縄戦の本当の姿は伝わらなくなる」と注文を付けています。
ただ博物館は「いろいろな人の意見を聞いて、近いうちに展示を見直したい」と言っていて、博物館が日本軍について書くのかどうか注目されています。
(荒井良平(あらい・りょうへい))
次の記事:<28>「エントツ男」現る ...>> 今日の記事一覧
今月の記事一覧
最近の人気記事
Photo History
琉球新報掲載写真でつづるオキナワの歴史
しんぽう囲碁サロン
世界中の囲碁ファン会員と対局
ライブカメラ
琉球新報泉崎ビルに設置したライブカメラ
りゅうちゃん商店
ウェブサイトからも購入可能に!
ちょBit
新報パーソナルアド
ウイークリー1
沖縄県内・県外就職・求人情報ニュースサイト
琉球新報の本
琉球新報の本がネットでも購入できます
週刊レキオ
生活情報満載の副読紙。毎週木曜お届け
新報カルチャーセンター
130講座 学ぶ楽しさがいっぱい
新報ローカルブログ
ミニコミ紙連動のローカル情報
〒900-8525 沖縄県那覇市天久905
紙面・記事へのお問い合わせは、読者相談室までどうぞ。
電話098(865)5656 (土日祝日をのぞく平日午前10時〜午後4時)
©The Ryukyu Shimpo
本ウェブサイト内に掲載の記事・写真の無断転用は一切禁じます。すべての著作権は琉球新報社または情報提供者にあります。