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【コラム】

筆洗

2010年4月4日

 <米軍の駐留は憲法九条に違反する>。半世紀前、歴史に残る判断が示された。憲法の教科書で必ず紹介される「伊達判決」である▼東京都北多摩郡砂川町(現立川市)の米軍の飛行場に不法侵入したとして、旧日米安保条約に基づく刑事特別法違反罪で起訴された被告に、東京地裁の故伊達秋雄裁判長は一九五九年三月三十日、無罪を言い渡した▼墨筆で書いた辞表を懐に判決に臨んだ裁判長の覚悟に慌てたのは、当時のマッカーサー駐日大使だった。判決翌日、藤山愛一郎外相と会談、東京高裁を飛び越えて最高裁への上告を促した。田中耕太郎最高裁長官とも密談している▼裁判は大使の思惑通りに進んだ。検察は最高裁に跳躍上告。最高裁は地裁に審理を差し戻し後に有罪判決が確定する。露骨な内政干渉の事実が明らかになったのは二年前、米公文書が機密指定を解除されたためだ▼外務省は元被告の情報公開請求に「記録がない」としてきた姿勢を最近やっと見直した。大使と外相が会談した事実を認め、速記録を元被告に開示したのだ。政権交代の大きな果実だ▼飛行場は七七年に返還され、昭和記念公園になった。百八十ヘクタールの敷地には三十一種類千五百本の桜があり、ソメイヨシノが満開だったきのうは二万人が訪れた。沖縄の米普天間飛行場の跡地に季節の花が咲き、市民を楽しませてくれる日も必ず来る。

 

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