Air [True heart to you.]
逃亡者様の作品
[ 蝶の効果 ]
2010.03.15 *Edit
サードインパクトは起こらなかった。
それだけは事実である。
ただそれがどのような過程で回避されたのかはごくごくマクロの事象となるため、関係した当事者にも分かってはいなかった。
それに、その事を確認しようにもその当事者はその事を語る事が出来なかった。
蝶の効果
作：逃亡者
３０を過ぎたばかりの曹長は、一個分隊を引き連れジオフロント内の捜索を行っていた。
捜しているのはエヴァンゲリオン初号機パイロット。
発見しだい“ＤＥＬＥＴＥ”せよ、と言うのが彼らに課せられた任務であった。
曹長は一応の了解をしたものの、本心としてはあまり気乗りがしないのも事実であった。
まだ１４歳の子供を手にかけるのは、長年戦場を往来してきた曹長の、兵士としてのプライドが許さなかった。
ジオフロント内に潜入して、はや１時間以上が過ぎていた。
トップダウン（師団本部）から、定時連絡が入る。
『ヒトフタマルマル（１２００）に目標を発見せずとも、大隊をジオフロントに突入させる』
あと３０分ほどである。
戦術指揮官、しかも部隊として最小単位の部隊しか率いていない曹長に、その決定を覆すだけの術はない。
了解するしかなかった。
しかし、３０分経っても初号機パイロットは見つからなかった。
大隊によるジオフロントの制圧が始まった。
「ジオフロントの制圧が始まったか。穏便に済めばいいが」
曹長は楽観的予測を口にする。
しかしその予測は大きく裏切られる事になる。
数分後、数多くの銃声が曹長の耳に届いた。
「どうしたか！」
曹長が部下に向かって叫ぶ。
「じょ、状況を確認します」
通信下士官が、大隊本部へ連絡を取る。
一通りの通信を終えた後、通信下士官が曹長へ報告をする。
顔がやや青褪めている。
「だ・・・ 部隊が・・・ と、突入を開始しました」
当然過ぎるほど当たり前の解答を、通信下士官は返してくる。
冷静さを失っている証拠である。
曹長にはそれが分かっていたが、状況が状況だけに苛立ちを覚える。
ゆえについ部下に怒鳴ってしまう。
「そんな事は分かってる！ 一体どうなっているか！」
何となく曹長には事情が分かっていた。が、より詳しい状況が欲しいのも事実である。
恐らく自分には知らされていない残酷な命令が下されたのだろう。
その裏付けが欲しかった。
通信下士官は情けない声を出して答える。
「は、も、申し訳ございません。じ、実はジオフロントを制圧・・・ では無く、殲滅せよ。と、命令が下されたみたいです」
「ば・・・ 馬鹿な・・・」
曹長は絶句するしかなかった。
ネルフがサードインパクトを企図していたとしても、司令以下の高級幹部を拘束すれば済む話である。
その為の武力制圧であったはずである。
それを殲滅など・・・。
（正気の沙汰ではない）
男はそれを声に出さず、視線を落とした。
別の部下が曹長に報告する。
「隊長、ターゲットを発見しました」
曹長は視線を上げ部下を見る。
部下の顔もやや困惑気味であった。
曹長は部下の報告を聞くと分隊を率いて、エヴァのパイロットのところへと向かった。
「・・・ 君がエヴァのパイロットか？」
問い、では無く、確認。
エヴァのパイロットの少年は軽く頷く。
しかし膝を抱えて蹲っている為、顔は見えない。
部下達が曹長を見る。
一人の部下が曹長に尋ねる。
「どうしますか隊長？」
部下の戸惑いも分かる。
少年と言えど武器を持っていたなら容赦しなかったかもしれない。
しかし今、目の前にいるのは無気力に膝を抱えている少年だ。
曹長にはどう見てもサードインパクトを企んでいる首魁の一人には見えなかった。
「君はサードインパクトを起こそうとしてるのか？」
まさに恐る恐るといった感じで聞いてみる。
少年の体がピクンと跳ねる。
そしてゆっくりと頭を上げ曹長の顔を見る。
その目にはまったく力がない。
「どういうこと・・・ ですか？」
目と同じく力のない声。
曹長の違和感は確信へと変わった。何かがおかしい、と
使徒、と呼ばれる未知の生命体。それが新しい種となるためサードインパクトを起こし、現人類に取って代わる。
使徒と呼ばれるものを肯定するなら、ありえない話ではない。
そして実際に、それと人類は戦ってきたのだ。数名の少年少女を犠牲にして。
その一人がこうして目の前にいる。
そして全ての使徒は殲滅されたはずである。
曹長はそう聞いている。
ならどうやってサードインパクトを起こすと言うのか。
何か自分達の知らない悪意が蠢いているのだろうか。
曹長は少年に事の次第を明らかにした。少年は驚愕していた。
「な・・・ なんでだよ・・・ 僕達は何の為に戦ったんだよ」
少年の瞳から大きな涙が零れ落ちた。
曹長は決心した。
「分隊！ 整列！」
部下が横隊で列を作り命令を待つ。
「我が分隊は、独自の作戦を遂行する」
部下達の間に緊張が走るのが分かる。
「我々の任務はこの少年の保護！ そしてネルフへの搬送である！ 異議のある者は部隊へ戻り、新たな命令を受領して欲しい！」
曹長は部下の顔を一人一人眺める。
部下の誰も、異議を唱える者はいなかった。
部下の一人が前に進み出る。
「指揮権に服します。隊長殿」
部下の発言は分隊の声を代弁していた。
「ネルフに通信を！」
曹長が通信下士官に命令を下す。
「しかし、今現在この近辺はチャフ（ＥＣＭ）の影響下にあります」
「どこかに通信ケーブルがあるはずだ。それを使えばいい」
通信下士官はニヤリと笑う。
「コピー！（了解）」
通信下士官は２名ほど引きつれ通信ケーブルの接続にかかった。
曹長はその間に少年に向き直り、話し始める。
「君を護衛する事になった。君をなんとしても無事にネルフ本部に届けてやる」
「僕は・・・ 僕は・・・ もう、死にたいんです。何もやりたくないんです」
消え入りそうな声で少年は呟く。
「そうか。だが俺は君を守ると決めたから、その提案は却下だ」
その時、通信下士官が曹長の元へ戻ってきた。
「報告します。通信ケーブルの接続、完了しました。
受信状態は良好です」
「分かった」
曹長は受話器を取り、相手と話をする。
相手は女だった。
「自分は戦略自衛隊、第１師団、第３特別機動大隊、第２中隊、第１小隊所属。
第１分隊隊長であります」
『協力ありがとうございます。私はネルフ作戦部所属、葛城３佐です』
曹長は自分より年下かもしれない女性に、子馬鹿にされたような感覚だった。
『分隊規模なら、シンジ君を守る事が出来るわ。
本当にありがとう。我々に協力してくれて』
「少しばかり状況を確認したいのですが。
ネルフ本部はどうなっていますか？」
女性士官の話では、戦略自衛隊がネルフ本部に突入を開始し、無差別に職員を殺していると言う。
「何をしてるんですか！ 一般職員に避難勧告は！ メインゲートの封鎖は！ もう一人の子供の保護は！」
曹長の矢継ぎ早の質問に、女性士官は戸惑うだけであった。
「いいですか。ゲートを封鎖、ＭＡＧＩを使って酸素濃度を調整したり、封鎖した空間に水を流し込んで電気を流したり出来るでしょう。
その間に一般職員の誘導を行ってください！ 無駄な殺戮の中で、少しでも多くの人命を救うのが軍人の勤めでしょう！
冷静さを失ってはいけません！ 我々もすぐに駆けつけます！」
曹長は電話を切ると、少年に向かって荒々しく声をかける。
さすがの曹長も、時間的余裕がなくなってきた。
「もう、時間がない。君がそうしている間にも多くの命が失われているんだ！
君がネルフに行ったからって何かが変わるわけでもない。でも、君は生き残るべきだ」
「なぜ・・・ ですか？」
「こんな馬鹿げた一方的な殺戮に、君が付き合う必要がないからだ。
この殺戮は俺達大人の責任だ！
君は十分自分の使命を果たした。人の生き死ににまで責任を感じる事はない！」
「でも、僕は、最低なんだ・・・ 女の子を傷つけて・・・ そして卑怯で・・・」
曹長は自分の手の平を少年に向ける。
「俺の手はすでに他人の血で汚れている。最低と言うなら、君より最低だ。
女の子を傷つけた？ そんなもん生きていれば謝る事も出来る。
卑怯？ 子供を戦場にやっといて、必要なくなれば殺そうとする大人とどっちが卑怯なんだ？
俺にはさっぱりわからんよ」
他の隊員がシンジの肩をぽんと叩く。
「隊長の言うとおりさ。女の子を傷つけた、って思ってるって事は、その娘を好きだって事だろう？
だったら、やっぱり生き残って仲直りしなきゃな。
生きてりゃ、いい女にもうまい飯にもありつける。カハハハ・・・」
他の隊員もユニゾンして笑う。
少年は涙を拭う。
そして俯き加減に言う。
「よろしく・・・ お願いします・・・」
どこか大人びた少年が見せる、年相応の顔だった。
「２列縦隊！ 車両を奪取し正面突破を試みる！」
「サー・コピー・サー！（了解しました）」
全員の復唱。それを確認すると曹長は「前進」の命令を下した。
「君は俺の傍を離れるなよ」
曹長は少年に言う。
その言葉を聞いた隊員が少年に向かって喋る。
「そうそう、隊長についていれば死ぬ事はない。
なんせどんな最悪の戦場からでも生きて帰る『生還者』だからな」
そうなんですか？ と問いたげな少年の瞳から視線を逸らし、曹長は「まあな」と曖昧に答える。
曹長にとってその字（あざな）は不愉快だった。
太陽の見える外界に出る。
曹長達は外に乗り捨ててある車両を数台確保する。
「よし！ それではネルフ本部へ直行する！」
それぞれの車両がネルフ本部を目指して疾走する。
そしてネルフ本部。
そこで曹長はありえないものを見た。
そこにあるのは人の死・死・死・・・。
「無抵抗の人間まで殺しているのか」
曹長の声に怒りが滲む。
全員が下車して陣形を取る。
そこに別の分隊が現れる。
「う、裏切り者どもだ！ 目標と共に殲滅しろ！」
しかし、一瞬早く曹長が命令を下し、元同僚達を殲滅した。
「もう、裏切りがばれていたか」
曹長は奥歯を噛締める。
急ぐぞ！ と、曹長は部下に伝達する。
ネルフ本部内に突入する。
通信下士官の通信機がけたたましく鳴り響く。
「こちら独立分隊。どうぞ」
『こちらは葛城３佐です。分隊長はいらっしゃいますか？」
曹長は受信機を受け取る。
「変わりました」
『葛城です。今、あなた方を確認しました。
戦略自衛隊の本部侵攻は今現在約２５パーセント。
職員の非難率は８０パーセントです。
ですが・・・』
彼女の不安は分からないでもなかった。
実戦部隊が少ない為、本部占拠は時間の問題なのだ。
言葉に不安が滲み出ているのが分かる。
「ところで、いまチャフの影響下にあると思いますが」
『本部内にＥＣＣＭを散布しました。
本部内のみなら通信は可能です』
「その件は了解です。ではパイロットはどうしますか？」
『そこから右突き当りのエレベーターに乗って、最下層に向かってください。
そこからエヴァの置いてあるゲージに向かえます』
「しょ、少年をもう一度戦わせると言うのか！」
『国連軍が、量産機をネルフ本部に差し向けました。
あればかりは通常兵器では・・・ エヴァの力を借りないと・・・』
曹長は少年を見る。
少年は情けなく笑い、コクリと頷いた。
曹長は一振り頭を振ると、了解の意を女性士官に伝えた。
曹長は他２名の部下を引き連れ、エレベーターへ向かう。
他の隊員は、ネルフ作戦本部の傘下に入ることになった。
曹長他３名は、エレベーターに飛び乗る。
扉の金属が擦れ、嫌な音が響く。
そして扉が開き奇妙に高いシグナル音が、目的の階についた事を報せた。
瞬間、エレベーター内に銃弾が打ち込まれた。
用心していた為、部下もかすり傷程度だった。
通路の奥から声が聞こえる。
「ここで裏切り者を張っていて正解だったな。
さぁ、チルドレンを渡してもらおうか」
曹長は何も答えず、ハンドガンを構える。
両手でしっかりホールドし、体を半身の状態にして一発ずつ確実にヒットさせていく。
「援護」
曹長は短く言うと、残弾の少なくなりつつあるハンドガンを打ち続けていく。
小さくカウントしていく。５・・・ ４・・・ ３・・・ ２・・・。
残り２発の所で、部下が発炎筒を通路に投げ込む。
曹長は部下からカービン銃を受け取ると、片手でハンドガンを打ちつくし、リロードすることなくハンドガンを床に落とす。
そして左腕に持ったカービン銃を構え、煙幕の張ってある空間に打ち込んでいく。
相手からは何の反応もない。
同士討ちになる事を恐れたのだろう。
曹長は単身、煙幕へと突撃を敢行した。
深い煙の中の格闘音。しかし戦況がどうなっているか待機している者には分からない。
音が止む。しばらく後、煙幕の立ち込めていた通路に視界が開ける。
少年と待機兵が見たのは、倒れる兵士達を見下ろす曹長の姿だった。
手にはカービン銃は無く、両こぶしが血で滲んでいる。
戦闘の余韻がまだ残っているのだろうか、やや興奮した声でエレベーターに向かって叫ぶ。
「この通路はクリアーした」
その声に安堵し、３人がエレベーターから出てくる。
曹長は少年に声をかけた。
「ここからもうケージまでは近いのか？」
「はい」
「なら、一人で行けるな？」
少年はコクリと頷くと、通路の奥へと走っていった。
部下の一人を見る。
「一応最後まで付き合ってやってくれ」
「コピー（了解）」
部下の一人が少年を追いかけていく。
それを見送ってから、もう一人の部下に声をかける。
「では俺達は分隊と合流するとしようか」
「サー！」
部下は敬礼でその命令に応じた。
３０分後、別ルートから別れた部下達と合流する。
しかし、合流した部隊はすでに５名のＫＩＡ（作戦中死亡）を出していた。
指揮を執っていた古参の１等軍曹が曹長に対し敬礼する。
「指揮権を返上します。隊長殿」
曹長は年上の１等軍曹に返礼する。
通路にはすでに土嚢が積まれており、一定のバリケードの役割を果たしている。
そして後ろには補給をするための、ネルフ職員が待機していた。
彼らはネルフにある武器を根こそぎここに運び込んでいた。
それを見て曹長が苦笑する。
「ご協力ありがとうございます。今ある武器をここから１００メートル後ろに運んでください。
そしてそこにバリケードを作ってください」
自分より上官の士官に命令をする。
ネルフ士官達はその命令に従う為、行動を開始した。
それと同時にバリケードの向こうから激しい銃撃戦が展開される。
男達は反撃の機会を待つ。
そして銃撃が止む。
状況を確認する為、曹長はバリケードの隙間から外を見る。
一直線の通路を戦略自衛隊が強行突入しようとしていた。
曹長は突撃をしようとする敵に向かい、発砲を命令する。
銃弾は突撃を敢行する兵士に当たり、兵士をミンチへと変えていく。
曹長は後ろに向かって叫ぶ。
「準備は？」
「出来ました！」
ネルフ仕官の声を聞き、分隊に対し後退の指示を出す。
曹長は持っていたアサルトライフルをオートモードに切り替え、銃とトリガーを固定する。
動くに動けない戦略自衛隊。
敵の銃撃が止むのを待つ。
しばらく後、反乱を起こした分隊の銃撃が止む。
部隊長は部下に突撃を命令する。
部下は敵のバリケードに向かい突撃を敢行した。
応戦する気配はない。
少しばかり興奮した精神が、冷静さを失わせていた。
本来なら気付くべき違和感に気付かなかった。敵が反撃してこない事に。
バリケードの向こうに敵はいなかった。
しかしそこにはプロパンに、火のついたバーナーを巻きつけてある物体が置いてある。
部下の半数がバリケードに辿りつく。
通りの向こう。そこに膝打ちの構えでハンドガンを構える男がいる。
そして男がトリガーを引き絞る。
弾は狙い違わずプロパンを貫通する。
プロパンガスに弾を当てただけでは爆発はしない。
そこに火点が必要なのだ。
貫通した穴からガスが噴出する。
それが火につき爆発を起こす。
曹長が放棄したエリアでは、半個小隊が戦闘不能となった。
以上のような進退を２，３度続けただろうか。
曹長率いる分隊は、すでに半数がＫＩＡ（作戦中死亡）していた。
しかも敵は師団単位である。
分隊規模しか持たない曹長から見れば、無限の回復力を持っていた。
その差は如実に表われてきた。
曹長は決める。ここが最後の防衛線、と。
ネルフの士官達には、すでに退避するように伝えてある。
それでも最後まで戦う、と主張した士官達がいたが、曹長はそれを許さなかった。
「隊長、すでに弾が底をつき始めています」
これまでか。曹長は決断を迫られていた。
「全員退避」
曹長は命令を下す。
満身創痍の部下が怪訝な顔をする。
「隊長はどうするつもりですか？」
「・・・ 戦う」
鋭く冷たい声。
アサルトライフルに短剣を着剣する。
そして発炎筒を投げる。
曹長は雄叫びを上げ、敵中にチャージをかける。
狭い通路、敵側からは何も見えない。その状況を黙ってみているだけであった。
理由は先ほどまでの戦闘で、十分な授業料を払わされたからであった。
しかし今回はそれが仇となる。
目前に迫る死神に、彼らは気付かなかった。
前方を確認する若い伍長が、隣の同期を見る。
戦闘の合間の少しの休息。緊張が緩んだとしても仕方が無かった。
同期の頭が吹き飛んだ。
伍長は前方を見るが、そこには何も見えない。
スモークがまだ晴れていないから。
この時伍長は、闇雲にでも小銃を乱射するべきであった。
しかし、その意思を実行する前に伍長はこの世の別れを告げていた。
曹長は手にした銃剣で、部隊に突撃をかけた。
一人、二人、三人と敵を倒していく。
その時、曹長の動きが止まった。
部隊を指揮している仕官が狙いを定め曹長の右肩を打ち抜いた、そのせいであった。
もう一度トリガーを引こうとする士官。
しかし、トリガーを引く事は出来なかった。
曹長の乱射した弾に当たり、絶命した為である。
その頃、取り残された部下達はスモークの向こうをただじっと眺めているだけであった。
年長の１等軍曹が代理の指揮を任されていた。
「我々は、これより最後の突撃を敢行する！ 隊長を援護する！
退きたい者は退いてくれ」
誰も反対するものはいなかった。
どうせ生き残っても彼らに帰る場所などないのだから。
１等軍曹は全員の意思を確認する。
「総員！ 着剣！」
「サー・イエス・サー！」
部下が異口同音で答える。
「我々はこれよ敵を殲滅する！ 総員！ チャージ（突撃）！」
着剣したアサルトライフルを手に、ここまで生き残った分隊全員が突撃を敢行した。
葛城ミサトは戦闘が行われているであろう場所に、単身乗り込んでいた。
戦闘終結を伝える為に。
しかし、全ては無駄であった。
ジオフロントを守った英雄達はすでにただの肉塊と化していたから。
生き残った戦略自衛隊も撤退を開始している。
葛城ミサトはあたりを見渡す。
散乱した贓物や、血の匂いが彼女の鼻腔を麻痺させている。
目を覆いたくなるような惨状。
しかし、葛城ミサトにはそれらを嘆いている暇も、構っている暇も無かった。
その時、壁際に寄りかかる一人の男性を見つける。
葛城ミサトはその男の元へ駆け寄る。
そして襟章を確認する。
襟章は曹長の階級であった。
「あなたが・・・」
「・・・ かつらぎ、３佐？」
男の声にすでに力はない。
葛城ミサトにはすでに手遅れである事は分かった。
しかし・・・。
「黙って、今医療班を呼んで来ますから！」
「多くの部下や・・・ 同僚たちを・・・ 手に・・・ かけてしまった・・・ ゆるさ・・・」
少しずつ小さくなる声。
男はゆっくり瞼を閉じる。
葛城ミサトの叫ぶ声が五月蝿かった。
男の時間はこれより先に進む事は無かった。
しかし歴史は進む事を止めない。
サードインパクトは起きなかった。
− おわり −
あとがき
tomatoさんこん○○は、逃亡者です。
うーん、なんと言っていいかわからん作品ですね。
ＣＰも無く、主要メンバーもほとんど出てこないエヴァＳＳ．
でも、書きたかったんですよ。
最後の戦略自衛隊の侵攻、まったく作戦の意味が解からなかったので。
あんなのはただの大量虐殺で、戦争でも何でもないんですよ。
しかも誰もそのことに疑問を持たない（戦略自衛隊の方がですよ）。
で、この作品の曹長に疑問を持ってもらいました（笑）。
一人ぐらいこういう人がいれば、サードインパクトは回避されたのでは？ との思いがあったので。
で、シンジ君です。頑張って戦ったのに、誰にも感謝されない。
しかも最後まで戦う事を強要される。
せめて戦わせるなら彼に多少の戦う理由ってモンを与えてあげよう。という作者の心遣いです。
多少暗めの作品は勘弁してください。
本編よりはかなりハッピーエンドのはずですから（この作品の主人公は死んでますが）。
ちなみにこの裏で、量産機相手に奮戦している二人のチルドレンがいますが、その話は書きません。
今回のコンセプトが、名もない人物による歴史の干渉ですから。
それでは、逃亡者の稚拙な文章に付き合っていただき感謝します。
ではこれにて失礼します。
逃亡者さん、こんばんは。そして投稿ありがとうございました。
少々荒削りな処はありますが、こう言う大人な作品まってました、大好きこう言うの。
曹長の言葉にもなんか"ジーン"と来ちゃって、うんうんって頷きながら読んでしまった。
この、部隊の反乱と同時にあったであろう量産型EVAとの戦闘がとても気になります〜A^^;
そんな、逃亡者さんによろしければコメントを残してあげて下さいね。
tomatoでした。
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Comment
Re: ありがとうございます
こんばんは、逃亡者さん。
ごめんね、もっと、沢山読みに来てくれれば、もっと沢山の拍手がもらえるだろうに…
おいらの努力不足を許してねA^^;
tomato
ごめんね、もっと、沢山読みに来てくれれば、もっと沢山の拍手がもらえるだろうに…
おいらの努力不足を許してねA^^;
tomato
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ありがとうございます
僕的にはまだまだ未熟な作品だと思っておりますが、ここまで読んでいただきまことに有難うございました。
これを励みに次回作頑張りたいと思います。
それでは平身低頭もう一度、有難うございます。 逃亡者