Air [True heart to you.]
やちる様の作品
EVA劇場館 『泣いた赤鬼』
2010.02.07 *Edit
むかむかしのことでした。とある辺境の山に赤鬼が住んでいました。
赤鬼は、人と触れ合いたがっていました。でも、、その美しすぎる容姿と、そのプライドの高さ、性格のキツさが、
人々を遠ざけ、彼女自身の声をかけられない原因でした。
ある日、赤鬼は人々と仲良くしたいと考え、お菓子を用意し、立て札を立てました。だが、その性格が災いし、つい
キツイ文章になってしまいます。
「ここはとっても優しい赤鬼様の家よ！！お菓子もおいてあるから、来たい奴は来なさい！！！」
ですが、村の人々は恐れをなして、近づきませんでした。これにひどく落ち込んだ赤鬼は、怒って立て札を引き抜い
てしまいました。
「もう人間なんて知らない！！どうして、こんなアタシを放っとくのよ！！」
そこに、昔馴染みの青鬼が現れました。赤鬼は彼と喧嘩ばかりしていたのですが。彼は、自分が村で大暴れしている
所を赤鬼が助ければ、みんな分かってくれる、と言いました。
「なんで、そんなことをしなきゃならないのよ！！！」
「だって、君が本当は優しいのは僕が一番知っているし、君が本当は寂しいのも知っているから」
「分かったわよ！！」
こうして、青鬼は村で大暴れし、それを赤鬼が止めたことで、赤鬼は村人と仲良くなりました。
ある日、いつものように村の子供たちと遊び、青鬼の家に寄ってみたが、扉が開きません。よく見ると、なにやら張っ
てあります。
「赤鬼、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてね。もし、僕が、このまま君と付き合っていると、君も悪い鬼だと思
われるかもしれない。だから僕は旅に出ることにしたよ。でも、いつまでも君の事を忘れない。さようなら、体を大事
にしてね。どこまでも君の友達、青鬼。」
これを見た赤鬼は何度もそれを読み、やがて涙を流し始めました。
「何よ・・・・アタシが一番好きだったのは、アンタだったのに・・・・」
そうして、いつまでも、いつまでも泣いていました。そこに、見かねて雲の上から鬼の大将である黒鬼が現れました。
髭とサングラスをした黒鬼が、赤鬼に聞きました。
「なぜ、泣いている」
「アタシは人間と仲良くなったかわりに、一番大事な奴を失ってしまったの」
そうして、また泣き始めます。
「そんなに会いたいか？」
「ええ、会いたいわ」
「なら、そこにいるぞ、会えばいい」
「え！？」
「青鬼だって行くところは無い。ここにいればいいと思っている」
もし、芝居がバレたら、人間の友達がいなくなる。でも、一番会いたい奴が大切だと伝えたかったのです。
それが、一番の優しさだと思い、決意しました。赤鬼は目の前の扉を何度も叩きました。でも、返事はあり
ません。みかねた黒鬼が一喝しました。「出て来い、青鬼！！！！！」すると、扉がゆっくりと開き、青鬼が
出てきました。その頬はげっそりとこけていました。
赤鬼は泣きながら、
「ありがとう、ごめんね・・・ ありがとう、ごめんね・・・」を繰り返すばかりです。
青鬼は言いました。
「違うよ、違うよ、赤鬼、鬼はね、いつも人間をおどかすばかりで、鬼と人間は敵だったろう？だからね、人
間と仲良くしたいという赤鬼の気持ちを、僕はスゴイと思ったんだ。だからね僕こそ、本当に「ありがとう」な
んだ。」
次の日、赤鬼は、家の前に「心の、みにくい鬼のうちです。」と、立て札を立てました。それを見た人間は不思
議に思い、逆に、いつになく多くの人が集まってしまいました。赤鬼は集まってくれた人間に、隠すことなく正
直に全てを話しました。その話を聞いて人間は、しばらく黙り込んでいましたが、ついに、ある言葉が出ました。
「だましてたんだね」
それから堰（せき）を切ったようにいろんな言葉が出ました。
「芝居を演じたズルい鬼」
「立て札の通り、本当にみにくい鬼だ」
「これまでの優しさも芝居だったのか」
「青鬼がかわいそうだ」
「いや、青鬼は馬鹿だ」
「しょせん鬼は鬼だったのか」
赤鬼は、何も言えず、ただ「人間の友だちがいなくなる」そう思いました。そう思うと、また、しくしくと涙を流
すのでした。しかしそれでも、人々の罵倒の言葉が止まることはありませんでした。 その時、突風と共に、黒鬼が
あらわれました。その力強く、荒々しくも見える姿に人間はたじろぎ、言葉を止めました。黒鬼は、ひとり言のよ
うに人間に問いかけました。
「青鬼は友の願いを叶えるため、犠牲になった。 優しい鬼だ・・・ 友だちが欲しくて寂しがり屋の赤鬼は、人
間にあらん限りのふるまいをしそして、青鬼の優しさを知って、 誤り、全てを打ち明けた。優しい鬼だ・・・だが、
貴様等人間の優しさは、どこにある？」
「人間のやさしさ・・・？」
人間の誰もが、その言葉を心の中で繰り返しました。
・・・・・・・・沈黙が続きました。・・・・・
だれ一人、人間の口からは、言葉が出なかったのです。むしろ、黒鬼の堂々たる姿と言葉に、不動の威厳を感じ、神
々しささえ感じたのでした。誰も黒鬼から目を離すことが出来ませんでしたが、再び、突風が吹き、チリが人の目を
奪いました。そして、黒鬼は突風と共に姿を消していました。 それから、数日後赤鬼も青鬼も山から姿を消してしま
いました。どこにいったか、知る人はいませんでした。 この過ぎ去った出来事はここに集った人々たち１人１人の心
に、深く、深く、刻まれました。その後も、この話題になると、意見は、まちまちでしたが、子どもも大人も自分の
「やさしさ」を見つめようとする心はいつまでも変わることはなく、年を重ねました。そして、事あるごとに人間は、
「やさしさ」を大切にしたいと、赤鬼の家に集い、この出来事を友に伝え、子に伝えました。そして、赤鬼の住んでい
た家の前に書き換えられることがないよう石を刻んで立て札をつくりました。そこには、こう書かれていました。
「心のやさしい鬼のうち いつでも帰っておいで」
終わり
楽屋にて
「なんだ、珍しくシリアスだな」
「あなた、黒鬼ですもんね」
「・・・・・・・・」
「満足なのは分かってますよ、黒鬼は本当の「泣いた赤鬼」に実際にでてきますし、大将ですもんね」
「・・・・・・ああ」
あとがき
やちるです。
何か、シリアスですね。最初は、もっと明るくしようと思ったんですが、続きがあることを知って、こんな感じ
になりました。意外と、ハッピーエンドなんですね。ちょっと意外。これからもよろしくお願いします。では＾＾
ども、カヲル君に間違われて初号機に握り潰されそうになったtomatoです。
間違われるわきゃないけどね……
やちるさん、投稿ありがとうございました。
ナグナブロさんに続いての御伽噺シリーズですね。
ゲンドウ黒鬼はこの物語の中では何気にいい役だなぁA^^;
やちるさんは、なんと…あ、今は言わない方がいいのかな…？
では、超若手作家のやちるさんに、是非感想のコメントをあげて下さいね。
感想はどの作家さんにもやる気を起こさせるビタミンのようなものです。
是非是非お願い致します。
やちるさん、本当にありがとうございました。また、お願いしますね。
tomato
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Comment
NoTitle
うーーん、
最初は前みたいに暴走させようかと思ったんですが・・・
前のタイトル「LAS板」だったし
ちょっと黒鬼ゲンドウにいい役をあげすぎた気も・・
次はカヲル君を出そう、うん
最初は前みたいに暴走させようかと思ったんですが・・・
前のタイトル「LAS板」だったし
ちょっと黒鬼ゲンドウにいい役をあげすぎた気も・・
次はカヲル君を出そう、うん
泣きました
こんにちは。
ナグナブロさんのサイトから足を伸ばしてきました。
「感動した！！」
これに尽きます。
ナグナブロさんのサイトから足を伸ばしてきました。
「感動した！！」
これに尽きます。
黒鬼がっ
夜千流さん、始めまして。作品読みました。
ゲン……黒鬼がカッコイイと惚れてしまう所でした。えぇ、マジに。
この作品を通して泣いた赤鬼に続きがあるのを初めて知りました。青鬼が去って赤鬼が泣くラストで自分も泣いた幼き頃、その話の続きを知り涙ぐんだ今の自分。人間の醜さを見ながら正直になろうとする鬼達が一番「やさしさ」を知っている、と思いました。
鬼のキャストはピッタリあっていると思います。素直じゃない赤鬼、赤鬼の幸せを願う青鬼。そして人々の目を覚まさせる黒鬼。本作では自分の野望の為に全てを犠牲にする黒鬼役の黒髭さんですが、自分のためじゃなく周りにいる者の為に力を使ったらきっとこんなカッコイイ人間になるんだろうなと思いました
ゲン……黒鬼がカッコイイと惚れてしまう所でした。えぇ、マジに。
この作品を通して泣いた赤鬼に続きがあるのを初めて知りました。青鬼が去って赤鬼が泣くラストで自分も泣いた幼き頃、その話の続きを知り涙ぐんだ今の自分。人間の醜さを見ながら正直になろうとする鬼達が一番「やさしさ」を知っている、と思いました。
鬼のキャストはピッタリあっていると思います。素直じゃない赤鬼、赤鬼の幸せを願う青鬼。そして人々の目を覚まさせる黒鬼。本作では自分の野望の為に全てを犠牲にする黒鬼役の黒髭さんですが、自分のためじゃなく周りにいる者の為に力を使ったらきっとこんなカッコイイ人間になるんだろうなと思いました
次作について
やちるです。
昨日、「嘘をつく使徒」の原稿を送りましたが、
とどいてますか？
確認のため、コメントします
昨日、「嘘をつく使徒」の原稿を送りましたが、
とどいてますか？
確認のため、コメントします
Re: 次作について
> やちるです。
> 昨日、「嘘をつく使徒」の原稿を送りましたが、
> とどいてますか？
> 確認のため、コメントします
はい、お返事、遅くなりました。すいません。
確かに受け取りました。ありがとうございます。
あと、申し訳ありません、投稿にあたり改行、行送り等少々手直しを
させて頂きました、事後承諾になってしまった事、お詫びします。
では、機会があれば、お願いしますね〜
tomato
> 昨日、「嘘をつく使徒」の原稿を送りましたが、
> とどいてますか？
> 確認のため、コメントします
はい、お返事、遅くなりました。すいません。
確かに受け取りました。ありがとうございます。
あと、申し訳ありません、投稿にあたり改行、行送り等少々手直しを
させて頂きました、事後承諾になってしまった事、お詫びします。
では、機会があれば、お願いしますね〜
tomato
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１ゲット……できるかな？
赤鬼の初めのお触れには笑ってしまい、明るい調子で進んでいくのかと思いきや、二回程の大きな変換点があり、最後はいい感じで締めくくりましたね。
作品としての話はここで終わりなのでしょうが、赤鬼と青鬼の後の日の生活などを想像もできて、楽しめました。