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きょうの社説 2010年4月4日
◎子ども手当審査 自治体に「お任せ」では困る
鳩山政権の目玉施策である子ども手当の申請受付で、混乱が予想されるのは、子どもを
母国に残す在日外国人の取り扱いである。珠洲市では初日に申請が3件、問い合わせが8件あったというが、1人あたり月額1万3千円の支給額は、国によっては一家を養うに十分な金額である。これから申請が殺到し、窓口業務が混雑するのではないか。厚労省は、外国人への支給について、野党から「不正受給が横行する」などと批判され たことから、審査を厳格化する方針を打ち出し、「年2回以上、子どもと面会している」「約4カ月に1回、継続的に生活費などを送っている」などの具体的な条件を定め、自治体に通知した。しかし、多様な国から来た人々に説明し、書類を用意させ、審査する自治体はたまったものではない。子どもの数の水増しや証明書類の偽造による不正受給を的確に見破り、支給を拒否できるのか疑問である。 厚労省は、外国人の親が日本に来る前、子供と同居していたことを居住証明書などで確 認できることを条件とし、証明書は、日本に住む第三者が翻訳し、翻訳した人の署名や連絡先を記すよう求める。だが、第三者の証明があてになるのか判断のしようがなく、偽造が横行しないとも限らない。厚労省が示した条件を厳格に適用し、不公平感のない支給を行うのは至難の業だろう。自治体によって対応が変わってしまうケースも出てくるのではないか。最終判断の責任は国が負うべきであり、自治体に「お任せ」では困る。 そもそも財源不足で苦しんでいるのに、外国にいる子どもにまで手当を支給する理由が 分からない。一方で、子どもを日本に残したまま海外に駐在する日本人には支給されないのである。これは、児童手当に準じた支給要件を安直に採用したためであり、目玉政策と言いながら、制度設計が極めてずさんだったツケである。 子ども手当法は2010年度限りの暫定的なものである。11年度以降の満額支給に備 えて、子どもの「国内居住要件」を加えるなどして、国民が納得できるよう修正する必要がある。
◎救急患者の搬送基準 救命率向上へ連携を密に
石川県は「脳卒中」と「急性心筋梗塞(こうそく)」の救急、転院患者の搬送・受け入
れ基準を策定した。事前にルールを定めることで患者の搬送を円滑にし、「たらい回し」を防ぐ。患者の症状に応じた搬送先リストも作成し、消防と医療機関の意思統一につなげることにしているが、二つの疾病は死亡率や要介護状態となる割合が高く、早期の適切な処置が求められている。今回の基準をもとに連携をより強化して、救命率の向上につなげてもらいたい。医療機関による救急搬送患者の受け入れ拒否問題の改善に向けて昨年施行された改正消 防法で、患者搬送や受け入れ基準の策定、公表が都道府県に義務づけられた。県が作成した基準では、症状別に搬送する医療機関を分類し、消防機関が疾病者の状況を医療機関に伝達するための目安が説明されている。救急医療従事者の一層の研さんとともに、救護現場で的確な判断、処置を下せる救急救命士の養成も大きな課題である。 全国的に救急搬送の改善の取り組みが進められるなか、石川県の場合は照会回数が1回 で医療機関が受け入れているケースは9割余りを占めるが、2008年は重症患者で救急隊が4回以上受け入れ照会したケースが47件、2回以上では421件あった。新たに策定した基準では脳卒中と心筋梗塞の症状であらかじめ病院を絞り込み、救急隊が素早く搬送先を選べるようにしている。 実際に円滑に患者が搬送できるように、消防と医療機関が十分に意思疎通を図る必要が ある。運用するなかで、問題点を検証して搬送基準や搬送先リストの改善を重ねてほしい。 脳卒中、急性心筋梗塞は、発症後早期に適切な治療を受けることがなにより大事である 。急性心筋梗塞では、周囲にいる者の救急要請に加えて、現場での心肺蘇生法などの迅速な処置も求められており、今後も講習会などを通して救命への意識向上を図っていく必要がある。激務の救急医療現場の負担軽減に、救急車と救急病院の適切な利用に向けての息の長い啓発活動も取り組んでいきたい。
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