札幌地検が北教組の書記長と会計委員を起訴せず起訴猶予にとどめた理由は、長田秀樹被告や委員長(故人)の命令に従って機械的に資金の出し入れをしていただけと判断したからだろう。だからといって、悪質性が低いわけでなく、組織の幹部や会計責任者として、違法性の認識は当然あったはずだ。法定刑こそ軽いが、最近は政治資金規正法違反を形式犯でなく、(有権者に具体的な不利益を生じさせる)実質犯ととらえる傾向がある。労組が起訴された例は珍しい。日教組の下部組織が刑事訴追の対象となったことで、全国の労組に与える影響は大きい。
今回の事件は、北教組側に「政治家個人への献金」との認識があったかどうかを立証するのは難しい。検察が何度も家宅捜索したり、完全黙秘の事件で起訴猶予処分とするなんて前代未聞だ。検察が暴発したとしか思えない。札幌地検は容疑者が黙秘することも想定した上で、逮捕前にもっと証拠を詰めるべきだった。しかし「何か話すだろう」という甘い見通しで、いきなり身柄を取ってしまったのではないか。逮捕を急ぐ政治的背景があったのでは、と推測したくなってしまう。公判前整理手続きで、検察側がどんな証拠を示すことができるかが今後のポイントとなるだろう。
毎日新聞 2010年3月23日 北海道朝刊