清峰の左腕・古川は1回、いきなりピンチを迎えた。2死一、三塁。左打者の山田を捕ゴロに打ち取り乗り切った。「カーブとスライダーでカウントを稼ぎ、真っすぐで勝負した」。「名電の打者は左投手に弱い」という吉田監督の見立て通りでもあった。
粘り強さも兼ね備えていた。150球を超えた10回2死二、三塁の名電のサヨナラ機。最後は外角高めの直球で十亀を空振り三振に切る。愛工大名電の倉野監督も「球数を増やさせようとしたが、150球を超えても球威が落ちなかった」と舌を巻く。
12回、ボール気味のスライダーで二飛に打ち取られた佐々木の言葉が、端的に古川の投球を物語っているだろう。「見逃せばボールだっただろうが、キレにやられた」
その古川は、みずからのバットで決勝点ももぎとった。13回2死二、三塁。6球目、直球を中前に打ち返し走者2人を迎え入れた。思わず塁上で両手を突き上げた。「気持ちで打ちました。自分を信じていた」
春夏連覇の大記録を狙う相手に対し試合前、「同じ高校生。しっかりやれば勝てる」と気後れすることはなかった。
次の相手は昨春の選抜を制し、夏も準優勝した済美だ。「自分の投球をすれば負けないと思う」。さらなる強豪を相手に、初出場校エースの投球が待ち遠しい。