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2005年8月9日(火)
 

粘りの追撃及ばず
春日部共栄、強打に屈し逆転負け
全国高校野球

 

(8日・甲子園)

 第3日は1回戦4試合が行われ、春日部共栄は優勝候補の大阪桐蔭に7―9で逆転負けした。

 春日部共栄は一回に先制されたものの二回に逆転。五回に再び勝ち越されたが、七回に同点に追いつく粘りを見せた。しかし、その裏2点を奪われ、九回の反撃も及ばなかった。

 その他、初出場の藤代(茨城)関西(岡山)京都外大西が勝って2回戦に進んだ。

大阪桐蔭―春日部共栄 2回表春日部共栄無死満塁、暴投の間に三塁走者佐藤が生還。ベースカバーは投手辻内

 ▼戦評…春日部共栄は優勝候補に食い下がったが、逆転負け。中盤以降、大阪桐蔭の強打に屈した。

 五回の4失点と七回に2点を奪われたのが痛い。3点リードで迎えた五回、春日部共栄は先発の難波がつかまった。平田の適時三塁打など4安打を浴び1点差にされると、一死二、三塁から暴投で同点。代わった2番手の今井も、川本に右犠飛され逆転を許した。

 再び追いついた直後の七回には、今井が大阪桐蔭の中田にソロ本塁打などを喫して2点を献上。難波、今井とも粘り強かったが、甘い球を逃さず17安打した相手打線は一枚上だった。

 打線は健闘。鶴岡の本塁打などで大阪桐蔭の辻内、中田の好投手から11安打で7得点した。ただ、二回一死二、三塁と五回二死満塁で後続が倒れて大量点の好機を逸したのが響いた。九回にも二死満塁と粘ったが、中田に要所を封じられた。

流れ引き寄せた一発

大阪桐蔭―春日部共栄 3回表春日部共栄1死、鶴岡が中越えにソロホーマーを放つ

 弾丸ライナーがセンターバックスクリーン左横に突き刺さった。主将の鶴岡が三回に試合の流れを引き寄せる一発を放った。「真っすぐを練習していたので、球は速く感じなかった。まさか入るとは思わなかった」と笑顔で振り返った。

 大阪桐蔭の好左腕・辻内とは抽選会での因縁があった。春日部共栄について聞かれた辻内が「知らないです」と答えたのを聞いて、「思い知らせてやろう」とひそかに闘志を燃やして打席に立った。七回にも同点のきっかけとなる二塁打を放つなど、主砲として十分に力を発揮した。

 捕手としても1年生の難波を勇気づける好リード。試合終了後には「夏の大会でも怒られてばかりいたけど、このチームでもっと試合をしたかった」とこの瞬間だけは感極まった。

1年生右腕、真っ向勝負

大阪桐蔭―春日部共栄 5回裏大阪桐蔭1死一、三塁、同点にされ、続くピンチに春日部共栄の難波(11)がリリーフの今井にマウンドを託す

 1年生右腕の難波が大阪府大会で4割4分9厘と打ちまくった大阪桐蔭相手に真っ向勝負を挑んだ。「いつも通りの投球を心掛けて、力を出し切れた」と汗をぬぐった。

 大舞台でも動じることはなかった。数日前に先発を言い渡され、「すごいワクワクした。逃げずに攻めていきたい」と心に決めていた。五回には連打を浴び、苦しい場面に立たされた。だが、ピンチにも動じずに笑みを浮かべるなどさわやかな印象を残した。五回途中で降板したが、観客席からは、175センチ、63キロの細身の体を振り絞って必死に投げる「エース」に拍手が送られた。

 3年生はこの試合が最後。「最終回の粘りを学んだ」と涙をこらえながら、感謝していた。

勝負強さを証明

 5番射手矢が二回、反撃の口火を切る中前打を放った。「真ん中の直球。低めを狙えと言われていたので、狙い通りだった」としてやったり。チーム初安打で打線に勇気を与えた。

 0―1からの2球目を振り切り、技ありの中前打。一塁を回ったところでセンターからの返球がそれ、そのまま二塁に到達した。

 埼玉大会ではチームナンバーワンの12打点を挙げた勝負強い打撃が光った。150キロ超の速球派を向こうに回し、「辻内も普通の投手。楽しめた」と豪胆ぶりを見せつけた。

あきらめない野球貫く

 2点差の九回二死満塁。県大会決勝と同じような場面で、再びミラクルが起きることはなかった。長瀬のバットは空を切り、3時間を超える熱戦に終止符が打たれた。

 相手は優勝候補の大阪桐蔭。敗れたものの、春日部共栄ナインは一歩も引き下がることなく、最後まで粘り強い野球を見せた。

 象徴的だったのが、二、七回の攻撃。一回に連続適時打で2点を失ったが、ベンチに暗いムードが漂うことはない。直後の二回に射手矢、渡辺、佐藤の三連打で同点に追いつき、暴投で勝ち越した。佐藤は「内角直球を打ち返すことしか考えてなかった」とここ一番の集中力を発揮。相手は関係なかった。

 七回には3年生が見せる。一死三塁から6番渡辺が「絶対に打てる。先行されても絶対にしょげることはなかった」と左前に同点タイムリー。自分たちのやってきた練習への自信とイメージが揺らぐことはなかった。

 大阪入りしてからは速球対策として、140―145キロの打撃マシンを打ってきた。初めは戸惑ったが、直球にはすぐに慣れた。この試合で150キロを超す速球投手、辻内を打てたのも、普段からの打撃の基本徹底のたまものだ。本多監督は「バットが振れないとどうしようもない。まず力をつけること」と話す。常に打撃投手の生きた球を打ち、しっかり振り抜くことを身に付けた結果だった。

 3万4千人を超える大観衆が息をのんだ一戦。本多監督は「最後まであきらめない野球を見せてくれて本当に感謝している」とねぎらった。自分たちの野球を貫き通し、春日部共栄が甲子園を去った。

▼ナインひと言▼
 ▽大竹秀義投手 悔しい。やはり強い気持ちと自信が大事。絶対戻ってくる
 ▽鶴岡賢二郎捕手 感謝の気持ちでいっぱい。もっと試合をやりたかった
 ▽射手矢大輔一塁手 校歌が聞けず心残りだが、思い切ってやれたので満足
 ▽長瀬翼二塁手 このメンバーで甲子園に出場できて、すがすがしい気持ち
 ▽佐藤貴穂三塁手 チームが勝てず守備でも取れる球があったのに迷惑掛けた
 ▽前田太一遊撃手 とにかく悔しいが、センバツに向けて切り替えたい
 ▽斉藤彰吾左翼手 ショックだけど、1年生で出してもらって幸せだった
 ▽井上拓哉中堅手 勝てる試合で悔しい思いでいっぱい。不満ばかりだ
 ▽渡辺睦右翼手 2年間半、春日部共栄でやれたことを誇りに思っている
 ▽服部健太郎投手 負けないと思ったが、最後まであきらめない野球できた
 ▽難波剛太投手 楽しんでできた。満足はしていないが、持てる力を出せた
 ▽金子幹捕手 今持てる力はすべて出せた。悔しいが自分たちの野球が貫けた
 ▽篠田朗樹捕手 センバツも夏も絶対帰ってきて、全国制覇をしたい
 ▽山口将司二塁手 途中で交代したが、勝つために自分の役割を果たせた
 ▽今井貴一投手 マウンドに立ったら1点もやらないと思っていたが、残念
 ▽石川貴浩遊撃手 楽しかった。これから楽しく野球ができないのが悔しい
 ▽呉屋利明左翼手 やるしかない、楽しむ気持ちを持って一生懸命頑張った
 ▽庭野啓中堅手 悔しいけど、自分たちの野球を最後までできてよかった

 
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