天安沈没騒ぎの中、金総書記訪中の狙いは?

「自分たちとは関係ない」というメッセージか

 昨年10月、中国の胡錦濤国家主席が「いつでも都合の良いときに来て下さい」と述べ、金正日(キム・ジョンイル)総書記を招待した。その後、常に関心の的となっていた金総書記の訪中だが、ついに目前に近づいていることが、先月31日分かった。

 複数の専門家は「北朝鮮も中国も金総書記の訪中が必要な時期となっている」と語る。北朝鮮としては、中国からの太っ腹な経済支援を何としても手にしたい状況にある。高麗大学のチョ・ヨンギ教授は、「北朝鮮ではデノミネーション(貨幣呼称単位の変更、デノミ)が失敗してから、激しく上昇する物価を抑えることができない。そのため国民の不満をかわすためには、食糧などの供給を十分に増やさねばならないが、今頼れるのは中国以外にない」ということだ。北朝鮮が中国から食糧の不足分(年間100万トン)の支援を受けることができなければ、今年5月から6月ごろの時期に餓死者が続出するという予測もある。

 6カ国協議議長国の中国も、北朝鮮を協議の場に引きずり出すためには、金総書記を直接説得する必要がある。東国大学のキム・ヨンヒョン教授は「北朝鮮が中国から経済支援を受けるには、何か手土産が必要だろう。それが、金総書記による6カ国協議復帰への約束となる可能性がある」と述べた。後継者として注目される三男のジョンウン氏を、この機会に中国に紹介するのでは、という見方もある。

 近いうちに金総書記が中国を訪問するのであれば、2000年や01年のときのように、「改革・開放」が主な議題ではなく、「体制の引き締め」が目的になるとの見方も有力だ。これについて統一研究院の鄭永泰(チョン・ヨンテ)研究院は、「現在、金総書記の最大の関心は、中国の後押しを受けて体制の引き締めを行うことにあるはずだ」と説明する。金総書記は昨年11-12月、体制を守るにあたっての最側近であるウ・ドンチュク国家安全保衛部主席副部長(韓国の国家情報院長に相当)と、チュ・サンソン人民保安相(同じく警察庁長に相当)を相次いで中国に派遣したが、これについて北朝鮮情勢に詳しい消息筋は、「脱北者の取締強化などについて話し合ったようだ」と語る。

 今回の「訪中が近い」との話は、すでに昨年から予定されていた通りのことだ。しかし韓国で天安号が沈没したことで、韓半島(朝鮮半島)の緊張が徐々に高まりつつある状況からすると、今回の訪中に関しては数々の憶測が飛び交っている。韓国であれば最高指導者が海外に歴訪していたとしても、北朝鮮で大規模な事故が起これば急いで帰国し、状況を把握しようと務めることだろう。また北朝鮮は金総書記だけが重要な意思決定のできる立場にあるにも関わらず、今のような状況で金総書記が北朝鮮から出ることを決めたことから、その背景について疑問を投げかける見方もある。

 世宗研究所の宋大晟(ソン・デソン)所長は「天安号の沈没には北朝鮮が関係しているのでは、と疑う国際社会の関心をかわすために、訪中を決めたのだろう」と述べた。また治安政策研究所のユ・ドンリョル研究官は「北朝鮮と天安号は関係ないので、予定されたスケジュールをこなすに過ぎないとのメッセージを送っているのだ」という見方を示している。

 一方で慶南大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授のように、「天安号の沈没と北朝鮮は別問題でもあるため、金総書記の訪中と天安号を結びつけて考える必要はない」という見方もあり、さらにある国立研究所の研究院は「予定されていた訪中を先送りすると、逆に“盗人猛々しい”と見られると判断したのだろう」と述べた。

アン・ヨンヒョン記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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