連続テレビ小説 ゲゲゲの女房(1)<新>「ふるさとは安来」 2010年03月29日(月)
(飯田布美枝)いいご縁で ありますように。
(飯田源兵衛)ミヤコ ええか?
(飯田ミヤコ)はい。布美枝の横にはわしが おるようにするけん。お前は ちょっと 離れて座れ!布美枝が大きく見えるけんな。はい 分かりました。うん。あっ! 厠は 磨いたかや?はい。 今朝 早くに ちゃんと。もう一度 よく見ちょけよ。家の格はそげなとこに 出えけんな。はい!あら? しつけ糸…。何しちょ〜? 早ことしぇ!・
(源兵衛)布美枝!何 もたもたしちょ〜だ!じき 見合い相手が来るだぞ〜!布美枝!はい!
(飯田登志)
この のっぽの娘がこれから始まる物語の主人公飯田布美枝です。 今日は布美枝の見合いの日なのです
何を もたもたしちょ〜だ!もう一遍 言っとくぞ。お前は 台所で 抹茶をたててふすまの前で控えちょれ。はい。よきところで わしが「ううっ」とせきばらいをする。それを合図に 座敷に入ってわしの横に座れ。
(ミヤコ)来られたようです。
(源兵衛)来たか〜お見えにならしゃったぞ〜!用意は ええか
(ミヤコ)お父っさん!どげしよう。 ドキドキしてきた!
これが布美枝の父の源兵衛でこちらが 母のミヤコです
(村井絹代)しげさん気張っていかっしゃいよ!
(村井修平)まあまあそう気張らんと自然体でいったら よかろう。えんや 今日は しくじれません。39にもなって 嫁がおらんでは人生 お先真っ暗ですが!ふんっ!
(村井 茂)酒屋かあ。う〜ん えらいクラシックな家だなあ。「座敷童子」か「小豆はかり」でも住み着いとりそうだ。
そして これが 私。布美枝の祖母の登志と申します。8年前にあの世に呼ばれたのですが孫の行く末が 気がかりでこうして 見守っているのです
はあ… まだかな?あの人か…。
見合いの相手は 村井 茂。職業は 漫画家。ペンネームを水木しげる と言いました
・「『ありがとう』って伝えたくて」・「まぶしい朝に 苦笑いしてさ」・「あなたが窓を開ける」・「舞い込んだ未来が始まりを教えて」・「いま輝いているんだ」・「『ありがとう』って伝えたくて」・「あなたを見つめるけど」・「繋がれた右手が」・「まっすぐな想いを」・「不器用に伝えている」・「いつまでも ただ いつまでも」・「あなたと笑っていたいから」・「信じたこの道を」・「確かめていくように」・「今 ゆっくりと 歩いていこう」
(ラジオ体操)
(指導員)元気よく〜!
見合いの末は また後ほどお話しするとして…。 昭和14年布美枝が7歳の時から物語を始める事といたしましょう
(ラジオ体操)
(指導員)ほい 参加賞。
(子供1)赤いあめ玉だわ。ほい 参加賞。
(子供2)だんだん。ほい 参加賞。
(布美枝)あれ… あめ玉?
(野村チヨ子)先生! フミちゃんは皆勤賞だけん 賞品もキャラメルじゃないかね?ちょっと見してほしいんよ。や お前 毎日来ちょったか!ちっとも気づかだったわ ハハハ!はい! 皆勤賞のキャラメル。だんだん…。フミちゃん いっつも忘れられてしまうな。うん… なしてかなあ?おとなしすぎるけんおるか おらんか分からんもん。そげかな…?そんなら明日 学校でな。私 そげん目立たんかなあ…。
(鐘の音)
安来は 島根県の東の端にある歴史ある町です。中海に面した港から 6kmほど内陸に入ったところに布美枝のふるさと大塚の町があります。周りは一面の田畑。奥出雲の山並みの向こうに見えるのが「出雲富士」とも呼ばれる「大山」です
この頃の我が家は 先代から続く呉服店を営んでいました
(3人)よいしょ! よいしょ!よいしょ! よいしょ!
(飯田ユキエ)お母さん おひつ。ああ。 よっ! お願いね。はい!・
(3人の掛け声)
父と母 娘が3人 息子が2人。そして 祖母の私。飯田家は 総勢8人の大家族です
お母さん 見てごしない。 今日体操で これ もらったよ。ああ そげかね。おばば ほら。 皆勤賞だよ。ああ よかったな。ちっとも聞いちょらん!
(登志)ああ ちょっと 布美枝!何みそが切れちょ〜わ。 みそ取ってきてごせ。え〜。みそ樽 奥かなあ?
(物音)何の音?
(天井からの音)何か おるかなあ…。
(音 大きくなる)あ きゃっ!何を びくびくしちょ〜だ!
(源兵衛)布美枝は 2年生にもなって 弱虫で えけんのう。だけん 変な音がして…。
(源兵衛)お前やち夏休みの宿題は 済んどんのか?明日から学校だけんよく確認せえよ。
(子供達)はい。あのね さっき…。おい 飯 お代わり。はい。
(飯田暁子)今日裁縫に行ってくるわ。あ 私も。みそ部屋の天井で…。
(飯田哲也)俺 山に行くけん。あ 弁当は?いらん。
(源兵衛)弁当は持ってけ!
(哲也)いらん。
(源兵衛)お握りじゃけ持ってけ!
(登志)うん お握り作ってやる。何か 音が…。
(飯田貴司)ああ〜!
(貴司の泣き声)
(登志)早こと 拭くだが!誰も聞いてくれん…。
(源兵衛)ピーピー泣くな もう!
大家族の中で布美枝の小さな声はしばしばかき消されてしまうのでした
(自転車のベル)
(留蔵)フミちゃん おはよう!おはようさん!ヘヘヘ!その お魚安来の港で買ってきたかね?そげだ。輝子叔母ちゃんに会った?元気だったかね?濱乃屋のおかみさんか?今朝は会わんだったな。3日ばかし前は 「体が えらい」言ってらっしゃったけど。叔母ちゃん 病気?夏風邪かもしれんな。
(克江)あんた 早こと 魚 並べて。おっ!叔母ちゃん…。 回想
(宇野輝子)はい フミちゃんに!これ なめると元気が出るけんね。
輝子叔母さんというのは母の妹で安来港の魚問屋に嫁いでいます。内気な布美枝を誰よりも かわいがってくれる叔母さんの事が布美枝は 大好きでした
叔母ちゃん 大丈夫かな?なあ なあ 安来は どっち?ここを まっすぐだが。ずっと まっすぐ?そげだ!出雲富士を右に見てな。だども 1里半もあるげな。自転車で行くのも遠くて 骨が折れ〜わ! ハハハ!あれ? フミちゃん?
(農夫)嬢ちゃんどこへ行かっしゃ〜かね?港の叔母ちゃんのとこ〜。
(農夫)そげん急いで 転ぶなや!うん!
叔母の住む安来の港に向かって布美枝は 遠い道のりを走りだしていきました
港は魚市場に出入りする人達で大層 賑わっていました
(通りのざわめき)
(店員達の掛け声)
(店員)お嬢ちゃん お使いかね?そげなとこ おったら邪魔だぞ!叔母ちゃん おらんかね?
(客)これ いくらかね?はい 15銭になります。は〜 もっと安くならんかねえ?いや ならんわねえ…。ああ 叔母ちゃん おった…。よかった 元気にしちょ〜。
(番頭)おかみさん ち〜と仕入れの事で。ああ。
(番頭)実は 浜の方でがいに取れて…。それは かえって いけんねえ?へえ!忙しそうだな…。おい! 何をウロウロしちょ〜だ?親は どげしただ?ああ…。 回想 この だらずが!どこ行っちょった!どこ行っちょった!どこ行っちょった!
誰にも告げずに家を出てきた事を布美枝は 思い出しました
いけん お父さんに叱られる…。叔母ちゃん あれ? おらん…。これ 叔母ちゃんに!え? おっおい!これ どげす〜だ?
(汽笛)あっ!おい 危ねえぞ!
(店員達の掛け声)
行きは 張り切って走った6kmの道が帰りは ひどく遠く感じられました
(ヒグラシの鳴き声)
(鳥のはばたく音)
(奇妙な鳴き声)
(草履の足音)今 足音がしたが…。
(布美枝の足音)
(つけてくる足音)誰か おるかねえ。何か おる…。
誰も いない 田舎道怪しい足音が布美枝の後ろをついてきたのです
いや〜っ!
(飯田源兵衛)ミヤコ ええか?
(飯田ミヤコ)はい。布美枝の横にはわしが おるようにするけん。お前は ちょっと 離れて座れ!布美枝が大きく見えるけんな。はい 分かりました。うん。あっ! 厠は 磨いたかや?はい。 今朝 早くに ちゃんと。もう一度 よく見ちょけよ。家の格はそげなとこに 出えけんな。はい!あら? しつけ糸…。何しちょ〜? 早ことしぇ!・
(源兵衛)布美枝!何 もたもたしちょ〜だ!じき 見合い相手が来るだぞ〜!布美枝!はい!
(飯田登志)
この のっぽの娘がこれから始まる物語の主人公飯田布美枝です。 今日は布美枝の見合いの日なのです
何を もたもたしちょ〜だ!もう一遍 言っとくぞ。お前は 台所で 抹茶をたててふすまの前で控えちょれ。はい。よきところで わしが「ううっ」とせきばらいをする。それを合図に 座敷に入ってわしの横に座れ。
(ミヤコ)来られたようです。
(源兵衛)来たか〜お見えにならしゃったぞ〜!用意は ええか
(ミヤコ)お父っさん!どげしよう。 ドキドキしてきた!
これが布美枝の父の源兵衛でこちらが 母のミヤコです
(村井絹代)しげさん気張っていかっしゃいよ!
(村井修平)まあまあそう気張らんと自然体でいったら よかろう。えんや 今日は しくじれません。39にもなって 嫁がおらんでは人生 お先真っ暗ですが!ふんっ!
(村井 茂)酒屋かあ。う〜ん えらいクラシックな家だなあ。「座敷童子」か「小豆はかり」でも住み着いとりそうだ。
そして これが 私。布美枝の祖母の登志と申します。8年前にあの世に呼ばれたのですが孫の行く末が 気がかりでこうして 見守っているのです
はあ… まだかな?あの人か…。
見合いの相手は 村井 茂。職業は 漫画家。ペンネームを水木しげる と言いました
・「『ありがとう』って伝えたくて」・「まぶしい朝に 苦笑いしてさ」・「あなたが窓を開ける」・「舞い込んだ未来が始まりを教えて」・「いま輝いているんだ」・「『ありがとう』って伝えたくて」・「あなたを見つめるけど」・「繋がれた右手が」・「まっすぐな想いを」・「不器用に伝えている」・「いつまでも ただ いつまでも」・「あなたと笑っていたいから」・「信じたこの道を」・「確かめていくように」・「今 ゆっくりと 歩いていこう」
(ラジオ体操)
(指導員)元気よく〜!
見合いの末は また後ほどお話しするとして…。 昭和14年布美枝が7歳の時から物語を始める事といたしましょう
(ラジオ体操)
(指導員)ほい 参加賞。
(子供1)赤いあめ玉だわ。ほい 参加賞。
(子供2)だんだん。ほい 参加賞。
(布美枝)あれ… あめ玉?
(野村チヨ子)先生! フミちゃんは皆勤賞だけん 賞品もキャラメルじゃないかね?ちょっと見してほしいんよ。や お前 毎日来ちょったか!ちっとも気づかだったわ ハハハ!はい! 皆勤賞のキャラメル。だんだん…。フミちゃん いっつも忘れられてしまうな。うん… なしてかなあ?おとなしすぎるけんおるか おらんか分からんもん。そげかな…?そんなら明日 学校でな。私 そげん目立たんかなあ…。
(鐘の音)
安来は 島根県の東の端にある歴史ある町です。中海に面した港から 6kmほど内陸に入ったところに布美枝のふるさと大塚の町があります。周りは一面の田畑。奥出雲の山並みの向こうに見えるのが「出雲富士」とも呼ばれる「大山」です
この頃の我が家は 先代から続く呉服店を営んでいました
(3人)よいしょ! よいしょ!よいしょ! よいしょ!
(飯田ユキエ)お母さん おひつ。ああ。 よっ! お願いね。はい!・
(3人の掛け声)
父と母 娘が3人 息子が2人。そして 祖母の私。飯田家は 総勢8人の大家族です
お母さん 見てごしない。 今日体操で これ もらったよ。ああ そげかね。おばば ほら。 皆勤賞だよ。ああ よかったな。ちっとも聞いちょらん!
(登志)ああ ちょっと 布美枝!何みそが切れちょ〜わ。 みそ取ってきてごせ。え〜。みそ樽 奥かなあ?
(物音)何の音?
(天井からの音)何か おるかなあ…。
(音 大きくなる)あ きゃっ!何を びくびくしちょ〜だ!
(源兵衛)布美枝は 2年生にもなって 弱虫で えけんのう。だけん 変な音がして…。
(源兵衛)お前やち夏休みの宿題は 済んどんのか?明日から学校だけんよく確認せえよ。
(子供達)はい。あのね さっき…。おい 飯 お代わり。はい。
(飯田暁子)今日裁縫に行ってくるわ。あ 私も。みそ部屋の天井で…。
(飯田哲也)俺 山に行くけん。あ 弁当は?いらん。
(源兵衛)弁当は持ってけ!
(哲也)いらん。
(源兵衛)お握りじゃけ持ってけ!
(登志)うん お握り作ってやる。何か 音が…。
(飯田貴司)ああ〜!
(貴司の泣き声)
(登志)早こと 拭くだが!誰も聞いてくれん…。
(源兵衛)ピーピー泣くな もう!
大家族の中で布美枝の小さな声はしばしばかき消されてしまうのでした
(自転車のベル)
(留蔵)フミちゃん おはよう!おはようさん!ヘヘヘ!その お魚安来の港で買ってきたかね?そげだ。輝子叔母ちゃんに会った?元気だったかね?濱乃屋のおかみさんか?今朝は会わんだったな。3日ばかし前は 「体が えらい」言ってらっしゃったけど。叔母ちゃん 病気?夏風邪かもしれんな。
(克江)あんた 早こと 魚 並べて。おっ!叔母ちゃん…。 回想
(宇野輝子)はい フミちゃんに!これ なめると元気が出るけんね。
輝子叔母さんというのは母の妹で安来港の魚問屋に嫁いでいます。内気な布美枝を誰よりも かわいがってくれる叔母さんの事が布美枝は 大好きでした
叔母ちゃん 大丈夫かな?なあ なあ 安来は どっち?ここを まっすぐだが。ずっと まっすぐ?そげだ!出雲富士を右に見てな。だども 1里半もあるげな。自転車で行くのも遠くて 骨が折れ〜わ! ハハハ!あれ? フミちゃん?
(農夫)嬢ちゃんどこへ行かっしゃ〜かね?港の叔母ちゃんのとこ〜。
(農夫)そげん急いで 転ぶなや!うん!
叔母の住む安来の港に向かって布美枝は 遠い道のりを走りだしていきました
港は魚市場に出入りする人達で大層 賑わっていました
(通りのざわめき)
(店員達の掛け声)
(店員)お嬢ちゃん お使いかね?そげなとこ おったら邪魔だぞ!叔母ちゃん おらんかね?
(客)これ いくらかね?はい 15銭になります。は〜 もっと安くならんかねえ?いや ならんわねえ…。ああ 叔母ちゃん おった…。よかった 元気にしちょ〜。
(番頭)おかみさん ち〜と仕入れの事で。ああ。
(番頭)実は 浜の方でがいに取れて…。それは かえって いけんねえ?へえ!忙しそうだな…。おい! 何をウロウロしちょ〜だ?親は どげしただ?ああ…。 回想 この だらずが!どこ行っちょった!どこ行っちょった!どこ行っちょった!
誰にも告げずに家を出てきた事を布美枝は 思い出しました
いけん お父さんに叱られる…。叔母ちゃん あれ? おらん…。これ 叔母ちゃんに!え? おっおい!これ どげす〜だ?
(汽笛)あっ!おい 危ねえぞ!
(店員達の掛け声)
行きは 張り切って走った6kmの道が帰りは ひどく遠く感じられました
(ヒグラシの鳴き声)
(鳥のはばたく音)
(奇妙な鳴き声)
(草履の足音)今 足音がしたが…。
(布美枝の足音)
(つけてくる足音)誰か おるかねえ。何か おる…。
誰も いない 田舎道怪しい足音が布美枝の後ろをついてきたのです
いや〜っ!
2010.03.30 Tuesday