内藤正光副総務相は2日、携帯電話端末を特定の通信会社でしか使えないようにする「SIM(シム)ロック」の解除を各社に要請することを明らかにした。消費者の利便性向上と携帯電話事業者間の競争促進などが狙い。携帯大手4社は要請に応じる構えだ。
携帯電話には、電話番号などの利用者情報を記録した「SIMカード」が入っている。現在は契約した携帯電話事業者向けの端末でしか使えないよう規制(ロック)がかかっている。このロックが解除されれば、利用者は別の事業者向け端末にカードを差して使ったり、同じ端末に別のSIMカードを差して使ったりできるようになる。利用者にとっては、端末と通信会社の組み合わせの幅が広がるメリットがある。
携帯電話各社は、多額の奨励金を販売店に支払って端末を売り、月々の通信料で回収する仕組みを作ってきた。簡単に別の会社に乗り換えられてしまうと、この仕組みが成り立たなくなるため、ロック解除に慎重だった。
ところが、米アップル社が今月発売する新型端末「iPad(アイパッド)」など、複数の通信会社のカードを差し替えて利用できる製品が登場し、各社の姿勢も軟化してきた。2日に総務省で開かれたヒアリングでは、「販売から一定期間が経過すれば、お客様の意向に従うべきだ」(NTTドコモ)などの意見が出て、総務省がロック解除を努力義務として各事業者に要請することでまとまった。
内藤副総務相は「今後発売される携帯電話端末については、原則SIMロックを解除してほしい」と求めている。総務省は早急に実施に向けた指針(ガイドライン)を策定し、販売後どの程度の期間でロック解除できるようにするかなどを定める方針。
ただロックが解除されても、周波数帯が違う事業者間では乗り換えができず、現状ではメリットは限定的。また、乗り換えるとインターネット接続など事業者ごとに異なるサービスが使えなくなるなどの課題も残る。
総務省は07年の報告書でSIMロックについて「原則解除が望ましい」とし、「端末市場の動向をみて結論は10年に得る」としていた。【望月麻紀】
毎日新聞 2010年4月2日 21時28分(最終更新 4月3日 0時55分)