批判が宣伝に…猪瀬“エロ漫画の見本”作者激怒で思わぬ余波

2010.04.01


猪瀬副知事がやり玉にあげた「奥サマは小学生」が異様な人気に【拡大】

 東京都が漫画の性表現を規制する条例改定を進めるなか、規制推進派の猪瀬直樹副知事が民放の報道番組で「実例」として取り上げた漫画が話題になっている。自身の作品を“悪い見本”と糾弾された作者が、猪瀬氏に対してツイッターで怒りを爆発。この“場外バトル”で、くだんの漫画の購入希望者が急増し、全国的に品薄状態となっているというのだ。

 東京都が今年7月の施行を目指す改正青少年健全育成条例では、年齢設定が18歳未満と判断されるキャラクターの性表現が含まれる漫画やアニメは、販売や所持の規制対象となる。これに対し、漫画家や出版業界からは「表現の自由を損なう」と批判が出ている。

 猪瀬氏は、この問題を取り上げた先月29日放送の報道番組「プライムニュース」(BSフジ)に出演。2008年11月発売のコミックス「奥サマは小学生」(チャンピオンREDコミックス、秋田書店)を持参し、問題視するページの一部を付箋で隠す形で提示しながら「このような過激な表現物を誰でも入手可能な場所に置くべきではない」と語った。

 これを知った作者の松山せいじさんは、自身のツイッターで次のように怒りをぶちまけた。

 《仕事の合間TVをちょっと観る。僕の漫画がテーブルに置かれている! おい! 誰に許可取っているんだ!》

 《奥サマは小学生は既にかなり前に、秋田書店に絶版の申請をしてあります。それにセックスシーンは一切無い漫画なのに、、、、ちゃんと読んでいないのが丸わかり》

 「奥サマ−」は、25歳の男性教師と12歳の教え子女児との純愛(?)とギャグがベース。セックスを連想させるシーンもあるが、バナナや練乳といった比喩に置き換えられ、すべては教師が抱いた妄想という設定だ。松山さんの怒りは続く。

 《かつての松文館事件のように、スケープゴートされた時の為に、ブログやツイッターやmixiで、遺言書でも書いておくべきなのだろうか》

 「松文館事件」とは2002年10月、成人向け漫画を出版する松文館(東京)の社長と編集局長、契約漫画家がわいせつ物頒布罪で警視庁に逮捕された事件。07年6月、最高裁は、漫画もわいせつ物に当たるという二審判決を支持。憲法における表現の自由の侵犯には当たらないと判断し、上告不受理で二審判決が確定した。

 議論の是非はさておき、このバトルは成人向け漫画のファンらに一気に知れ渡り、「奥サマ−」は複数の大手通販サイトで在庫切れ。東京・秋葉原の成人漫画専門店でも品薄が続いている。

 批判が宣伝になるとは何とも皮肉だが、発行元の秋田書店は「当社の発行物がたまたまそこにあり、内容を見ずにごく一部をとらえて批判の材料に仕立て上げたのでしょう。特に猪瀬氏は発言の影響力が大きい。当社も作者も非常に困惑しております」(広報)と話している。

 一方、東京都の猪瀬副知事室は「当該のコミックは、議論を主管する青少年治安対策本部がピックアップし、条例提案に際し都議会総務委員会の席上で紹介した複数のタイトルのひとつ。いずれも、いきすぎた性的表現があるとの認識は変わりません」としている。

 

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