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ヤマダ電機の激安快進撃の裏に法令不遵守と社員の酷使アリ

サイゾー3月26日(金) 21時54分配信 / 国内 - 社会
「他店より1円でも高い場合はお申しつけください」を謳い文句にする家電量販店。中小の量販店が閉店する中、熾烈な顧客獲得合戦を勝ち上がり、業界の頂点に鎮座するのはヤマダ電機だ。だが、その安売り現場の裏側では、よからぬ噂が囁かれている。

 家電量販店業界では初めて、全国47都道府県のすべてに出店を果たし、売上高は8年連続で業界トップを維持しているヤマダ電機。都市型店舗「LABI」、郊外型店舗「Tech.Land」により稼ぎ出される額は、1兆8700億円(09年3月期)と「DeODEO」などを有する2位エディオングループの8030億円にダブルスコアをつけ、量販店業界ではまさに"独走状態"だ。

 特に、近年は都心への出店が目覚ましく、09年10月には売り場面積2万3000平方メートルを誇る「LABI1日本総本店池袋」がオープン。池袋という地区は業界3位のビックカメラの牙城であり、多数の量販店がしのぎを削ることから、“池袋家電戦争”とも呼ばれている。

 そんな徹底抗戦を展開する両店をよそに、池袋に本社を置き、首都圏を中心に展開する「さくらや」は、2月末に全店舗の撤退を親会社のベスト電器が表明した。

「07年にLABI池袋ができたときから、客足が遠のき始めました。さらに、日本総本店の影響は計り知れないものがあります」

 こう語るのは、さくらや池袋店の店員。郊外を中心に出店、拡大してきたヤマダ電機が、より都心へと方針を変えたのはLABI1号店を大阪に出店した06年。08年には渋谷にも進出している。その戦略が奏功したのか、「額は言えないのですが、ヤマダさんが出店する前の半分くらいの売り上げになりました」(ビックカメラ渋谷店店員)という声も聞かれている。

 ヤマダ電機の進出がさくらやを閉店に追いやった……とは言い切れないが、近隣競合店の売り上げを食いつぶすほどの影響力があるのは誰の目にも明らかだ。そんなヤマダ電機の最大の強みは、大量仕入れによる"安さ"にある。激戦区、池袋のビックカメラの店員はこう見る。

「“家電戦争”ですから、ウチもヤマダさんに合わせた価格にするか、さらに安くする方針です。でも、ヤマダさんの広告の目玉になるような安い商品は、ワンシーズン前のものが多いんです。それはウチに在庫がないこともあるので、すべてに対応しきれていない」

 一方、新商品の価格については、「ヤマダさんの店頭価格に合わせると、ウチでは1台売るごとに2万円ほど赤字になる商品もあります」(同)という。


■ただ働き、自腹は当たり前 疲弊する売り場店員の実情


 徹底した安売り攻勢で売り上げを伸ばし、他社を圧倒してきたヤマダ電機だが、それが直接社員に還元されるとは限らないようだ。公表されている平均年収(30歳)は400万円程度。多少ではあるが、ビックカメラのほうが高い。さらに、残業など、休日出勤については大きく異なる。

 ビックカメラは、約5年前に残業代の未払い問題が表面化してからというもの、社内のコンプライアンスには厳しい取り決めがあるという。例えば、残業は店舗ごとに上限が設けられ、破られることはないのだとか。一方のヤマダ電機はというと、「全部の店舗がそうではないでしょうが、私が以前働いていた関西の店舗では、ただ働きが横行していましたよ」と語るのは、最近転勤してきたという首都圏店舗で働く店員。

「引き継ぎで不具合があった場合の出勤や、お客様とのトラブルで謝罪に行っても、出勤扱いにされませんでした」(同)

 また、売り上げを達成するために、店員の自腹購入もあるという。ビックカメラをはじめとするほかの量販店店員は「そんなことが明らかになると大問題になる。聞いたことがない」というが、前出のヤマダ電機の店員は「(自腹購入は)少なくはありません」と答える。

「その日の売り上げに誤算が生じた場合はレジを使った全員で負担します。あとはお客さんとの交渉で、本部が認めない値段を提示してしまった場合も自腹です」(同)

 こうした「ヤマダのよくない噂」は、業界内では有名だそうだ。前出の首都圏のビックカメラに勤める店員の耳には、こんな話が入ってきたという。

「管理職と一般社員が、裏でよくケンカをしていると聞きました。あるとき、たまりかねた20代の社員が、上司に殴りかかったのを見たことがあります」

 考え方の違いによる上司と部下との対立は、一般企業でも珍しいことではないだろうが、ヤマダ電機に関しては事情が違うようだ。これについて、前出の同社社員は語る。

「店員は皆インカムをしているのですが、あれは店内の全員の声が聞こえるんです。そこでのやりとりはヒドいです。例えば、フロア責任者や店長が名指しで売り上げのよくない社員を指名して、『○○○、今日の自分の売上額、言ってみろ』『そのお客落とせなかったら、転勤候補な』といった暴言が飛び交っています。ほかにも『売る気あるのか? ないなら帰れ』と言われて、本当に帰ってしまう社員もいました」

 すべての店舗でこうしたことがある訳ではなく、また問題のある上司がいることもヤマダ電機に限った話ではないだろうが、今回取材を重ねるに当たって「社員を人として扱っていない」というヤマダ電機店員の声は、驚くほど多く聞かれた。

 さらに、これが理由で、体調に不調を来す人もいるという。最近、関西地方の店舗を退職したという元店員のAさんは、退職理由について重い口を開いてくれた。

「約1年前に、店長、副店長、フロアマネジャーに犯罪者扱いをされたんです。そのことが原因で、外に出ることも、人と話すこともできなくなりました。病院で診断された結果は、急性ストレス性障害でした」

 トラブルの原因は、濡れ衣を着せられたことにあったという。

「あるお客様が電子レンジの付属品を買いにお店にいらっしゃいました。配送方法にも注文があったため、上司に相談しました。結果、店舗から送るには手続き上、手間がかかるため、一度、私が外へ持ち出して送ることにしたんです。それから3日後のことです。AVコーナーのフロア長に呼び出され、『AV機器を持って行ってないか?』と。実はその1カ月くらい前の棚卸しの際、あるAV機器の欠品が出ていたらしいんです。従業員出入り口の防犯カメラの映像に、箱を持っている私の姿が映っているとも言われました。その後、もちろん否定しましたが、聞く耳を持たず、さらにまったく関係のない話までされたんです。少し前にレジに2万円ほどの違算がでたことがありましたが、それも『お前やないんか』と、3時間に渡って詰め寄られたんです」

 これによりAさんは体調を崩し、結果、退社したが、こうした話は、本部では問題視されないのだろうか? 前出のヤマダ電機の店員は企業体質についてこう語る。

「店長やその上の統括部長は、担当店舗で起こる問題を本部に報告していません。店員の自腹があるのもそのためです。しかしつらいのは、現場店員だけではありません。店長や部長は、本部からはかなり厳しく数字を追及されていると聞きます。そのため、自分の担当する店の"問題"など本部には言えないのでしょう」

 05年には業界初の1兆円の売上高を達成し、現在では2兆円にも迫る勢いのヤマダ電機。数字ももちろん大切だが、自社の社員の声に耳を傾けることも重要だと思われるのだが……。

(取材・文/辻口美枝)

【ヤマダ電機】
設立年月:1983年9月
本社所在地:群馬県高崎市栄町1-1
売上高:1兆4899億円(9年度第3四半期連結)
業界トップを走り続けるも、売上高は前年同期比6.4%と増加率は微増。エコポイント開始なども相まって、日本総本店池袋は目標値を上回るペースで推移している。

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  • 最終更新:3月26日(金) 21時54分
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