哨戒艦沈没:生存者を軍病院に隔離するのはなぜか

 韓国軍当局は、哨戒艦「天安」の沈没事故から6日目を迎えた31日も生存者の大半を軍病院に収容したまま、外部との接触を遮っている。京畿道城南市の国軍首都病院に入院している生存者は、救助された58人のうち、チェ・ウォンイル艦長ら幹部6人を除く52人だ。29日に国防部が発表した「哨戒艦沈没関連状況報告」には、生存者58人のうち、負傷者は44人(重傷4人、軽傷40人)となっている。負傷していないか、擦り傷程度の生存者も大部分が病院に収容されていることになる。

 病院側は生存者の家族による面会だけを認め、メディアの立ち入りを徹底して規制している。病院関係者は「国防部報道官室からかん口令が出ている」と語った。海軍は「生存者の心理治療を行うために必要な措置だ」と説明しているが、情報流出を防ぐのが狙いではないかとの分析が聞かれる。

 軍当局は、生存者による断片的な証言は事故の真相究明にさほど役立たたいとの立場だ。これに対し、「生存者の生々しい証言が事故原因の推定や救助過程の把握に役立つ」との反論も多い。「軍当局の閉鎖主義は、『疑惑を少しも残さずに公開しろ』という李明博(イ・ミョンバク)大統領の指示と全くかけ離れている」との指摘もある。

 生存者は4-5人から10人ずつ同じ病室に収容されているという。生存者の家族の一部は「ショックで記憶がないのか、軍がかん口令を敷いたのか、事故の状況については全く口を開かない」と話した。軍当局は負傷者の外部治療も認めていない。じん帯断裂の重傷を負ったシン・ウンチョン下士(伍長に相当)の家族は民間病院での治療を希望したが、病院側は「絶対不可だ」と拒否したという。生存者を1カ所の病院にまとめて収容するのは、部隊の内外でそれぞれが沈没状況を証言した場合、かえって混乱を招きかねないとの懸念があるためだとの見方もある。

 建国大のハ・ジヒョン教授(精神科)は「大規模な惨事で深刻な精神的ショックを受けた人が帰宅し、一人でいると、生き残ったことに対する罪悪感や被害妄想に苦しむ可能性がある。生存者が経験を共有し、意思疎通を行えば、回復が早まる」と指摘した。ショックから立ち直れない状況で外部に出れば、心理的な影響が大きいとの意見もある。しかし、専門家は「行き過ぎた隔離は、目撃した真実を証言しようという生存者の気持ちをそぐことにもなりかねない」と指摘した。

 事故当時の救助過程では、海軍が56人を救助した海洋警察501号艦に対し、「生存した乗組員には何も聞かず、われわれが向かうまで隔離してほしい」と要請していたことも明らかになった。海洋警察は重傷者を除く将兵らを艦内の食堂に集め、ドアを閉ざしたという。チェ艦長が生存者を集め、「何も話すな」と指示したという話もある。その後、生存者は誰一人として言葉を発しなくなった。

チェ・ソンジン記者

城南=李碩浩(イ・ソクホ)記者

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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