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きょうのコラム「時鐘」 2010年4月2日
4月に入った途端に、金沢で桜の開花宣言。「花だより」にはまだ「つぼみ」の文字が並ぶ。つぼみをつけた桜並木も、風情がある
祭りを前にしたざわめき、旅行前日の旅支度のワクワクする気持ちに似ている。「お楽しみはこれからだ」と告げている 「酒はほろ酔い、花はつぼみ」と言うそうである。深酒は禁物、花もそろって品よく咲くわけではない。つむじやヘソを曲げたような花も出てくる。もっとも、つぼみのままが良いと言うのは人間の勝手でしかない。それでは花の役目は果たせない 好んでバラを描いた画家から、つぼみの見分け方が大事だ、と聞いた。すぐに花開くのはダメ、気をもませるほどゆっくりつぼみをほころばせるのが好ましいという。「苦労して時間を掛けた方がいいものが生まれる。何事もそうだ」。ことしの桜は、美しく咲いてくれるだろうか。激しい寒暖の差に見舞われて、例年よりも苦労の時を過ごしたはずである 街では、入社式を終えた若者たちの姿が目に付く。着慣れないスーツに身を包んだ社会人のつぼみ。彼らも、とりわけ厳しい冬に耐えたはずである。 |