2010年4月1日。神奈川県小田原市某所。
自称自宅警備員 元木太陽は今日も立派に自宅警備を果たしていた。
そんな彼の前に突如現れたアイアムゴッドと名乗る白い男。
彼は神々しい光に包まれながら元木に告げた。
「ヘイ、YOU 自宅ついでに地球も守っちゃわない?」
頭には、先日買ったピラミッドストラップが眩しいほどに輝いている。
「……」
元木は無言のまま、立ち上がり、布団に向かった。
そして、万年床の上に乗っているマンガの山を気にも留めず、元木は布団を持ちあげてそのままもぐりむ。
バラバラと崩れたマンガがただでさえキレイとは言い難い部屋を更に、散らかした。
しかし、元木は全く気にする気配はない。
その姿を見て、自称神、アイアムゴッドは涙を隠せなかった。
これから、このどんくさそうなニートをリーダーにして戦わなくてはいけない、
他色のレンジャー達の心を思うと悲哀な気持ちがあふれてくるのだ。
「起きろぉ!!私は神様だぞ!この70年以上前からまことしやかに囁かれてきた、
ピラミッドひいては正四角錐の形状そのものが持つ、不思議なパワー『ピラミッドパワー』
を持ってるような気がする神秘の四角錐のストラップの力を借りて、天からやって来たのだ!
もちろんこのストラップは高級感にもこだわっており、本体部分のゴールドには18金メッキ、
シルバーにはユリジュウムメッキが施されているんだぞ。神奈川県小田原市の会社員Nさんも、このピラミッドパワーストラップを使用している。
効果はまだ未知だが、付けていると前向きな気分になれるといっている!だからこそ、神である私が降りて来られたのだ。」
「・・・・・・・・・・・・」
一息で、ツバが飛ぶほどに激しい口調で言うアイアムゴッドの気迫に押されたのか、
元木がもぞりと、布団から顔を出して、アイアムゴッドに目を向けた。
「説明、乙。」
ぼそりと、一言呟き、元木はまた布団にもぐった。
=略=
もうすぐ4月に入ろうともするのに、肌寒い日が続いていた。
そんな中、待ち合わせを長時間待つのは結構、つらいものがある。
「まだかなぁ…」
渋谷のハチ公前に来てから、すでに30分が経過していた。
待ち合わせは11時、時計の針は今11時15分を示している。
「いつも、待ち合わせ前には来てるのに…」
変だな、と思いつつ、携帯を開けて連絡を取ろうとする。
「…あれ。圏外?」
渋谷の駅前では見た事がない文字が赤く表示されていた。
「??あ。しかも電源切れた。」
圏外の状態は電池を消費するという話を聞くが本当だったのか、あれよあれよという間に
電池の残量が減っていき、画面が真っ黒になった。
これでは連絡が取れない。
移動しようにも、次の時間に相手が来てしまったら、と思うと動けない。
「どうしよう…」
そんな困り果てて、立ちつくす彼女をそっと見ている集団がいた。
「ふふふふ。これで、また一つこの世界に破滅のカップルが誕生した。」
黒いスーツにサングラスを身に付けた女性が嬉々として笑う。
そんな彼女の元に、全長20cm程度の灰色の人間がわらわらと集まってきた。
全て同じ顔で、口々に「スーっスーっ」と空気が抜けるような音を発している。どうやらそれが言語らしい。
良く見ると複数人で、10cm程度の長方形の機械を背負っている。
その機械で妨害電波を出し、待ち合わせ場所や時間の間違いで破局するカップルを激増させる。
そして、それは地球上の出生率の低下につながり、人類は滅亡の一途を辿る…!
というのが、『携帯電話の充電を出来なくする悪の組織』KZA団の悪辣たる策略である。
「呪ってやるわ!リア充なんて、破滅しろぉぉおお!」
「姐さん、どうしたんっすか。」
黒いスーツに身を包んだ手下Bが呟く。
「また振られたらしい。(英語)」
「この作戦、いつも思うんすけど、私怨が入ってませんか?」
=略=
「警備したくない。警備したくない。俺の守備範囲は、狭いんだ。」
レッドは出動する時はいつもこうだった。
「ついでなんだから、地球も警備しなさいよ!!」
これから出掛ける予定があったのか、分厚い化粧を施したパープルが、元木の耳を引っ張りながら叫んだ。
『携帯電話の充電を出来なくする悪の組織』KZA団が街を攻める時は、いつも突然だ。
レンジャー達は普段は普通の生活をしているため、突然の召集には、正直困っていた。
仕事の途中だったり、休日の途中だったり、授業の時だったり…
それでも、地球を守るために出動命令に従った。
なのに、一番時間に制限がないであろうレッドはいつも出動を拒否した。そのため、
出動命令が出たら、毎回持ち回りで2名がレッドを迎えに行くというルールが出来た。
「戦ったら負けだと思っている」
戦う前からまさかの戦線離脱宣言をするレッドをパープルが冷たい目で見下ろして、呟いた。
「イエロー」
「ほーい。」
イエローと呼ばれた結構、肉が付いている男がレッドの潜る布団に突進し、首ねっこを掴んで中からレッドを引っ張り出した。
嫌がるレッドだったが、日頃カレーを食べて、大食漢なイエローにとってはそんな動きはないも同じだった。
「ブルー辺りならいなくてもいいけど。レッドはいなきゃ駄目なのよ。」
パープルは手の平を頬に当て、溜息をつく。腕に巻いたブレスレットがキラキラと動きに合わせて輝いた。
=略=
「わははは!無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁ。どうしたぁ!レッド!貴様の力はこんなものか!」
「クッ。くそう!」
色々あってパワーアップしたKZA団の前にレッドは片膝をついた。
後ろをみれば、仲間たちは皆倒れていた。
「俺に…!携帯にもっと力があればこんな事には!!」
拳を握りしめ、レッドは呟く。全てに後悔したが、何もかもが遅すぎた。
「わははは!」
KZA団の高らかな笑いだけが響いた。
ーここまでか…!
レッドがそう思った時だった。
「レーーーーーッド!!」
聞き覚えのある声に顔を上げると、道路の地平線の彼方から、車が走ってきた。
窓からは、博士が手を振っている。
「すまない!開発に手間取ってしまったッ!!これを使うんだッ!!」
博士が何かをレッドに向かって投げた、太陽の光を受け、キラリとレッドの手の中に飛び込んできたのは、
ソーラーチャージに似てはいたが、サイズも、ソーラーパネル面も大きい今まで見た事のないものだった。
「これは…!」
「電池容量はこれまでの約2倍以上!ほとんどの携帯電話をフル充電にすることも可能になった、はいぱぁアイテムッ!
ソーラーチャージeco Wッッッッ!!!とってもよく晴れた太陽光を直角90度に当たるようにすれば、約10分で
4分も通話可能になるッ!それを使って新たなソーラーレンジャーに変身だッ!
全てのステータスが今までの2倍になるんだぁぁあッッッ!」
博士が最後の言葉を叫んだ時、キラっと一瞬光ったかと思うと、爆音を立てて、車が爆発した。
「はかせぇぇぇぇ!」
レッドは思わず叫び、後ろのKZA団を見た。
ニヤリと笑うKZA団と目が合う。
「説明乙。」
「きさまぁあ!」
レッドは叫ぶと、博士が最後に残してくれたソーラーチャージeco Wを高く天に掲げた。
「絶対、貴様を倒す。充電on!変身!」
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レンジャー達の未来は?
博士の命は?!
彼らは人類滅亡を止められるのか!
続きは劇場で!