2010年2月3日 11時42分 更新:2月3日 13時30分
【ワシントン草野和彦】今月予定されているチベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世の訪米に関し、バートン米大統領副報道官は2日、「大統領はダライ・ラマと会談する」と明言した。中国は先に、会談実現の場合は対抗措置をとると警告していたが、これをはねつけた形だ。米中協調を重視するため懸案事項を先送りしてきたオバマ政権だが、ここにきて、真正面から対処せざるを得ない状況になっている。
副報道官は、大統領が昨年、中国指導部にダライ・ラマと会談すると伝えていたことを明らかにし、「中国政府にチベットの文化と宗教の伝統を守るよう求める」と語った。
オバマ政権は米中を「世界で最も大事な2国関係の一つ」と位置付け、柔軟な対中路線をとってきた。ダライ・ラマが昨年10月に訪米した際には、翌月に中国訪問を控えた大統領がダライ・ラマとの会談を延期する配慮もみせた。ところが、気候変動問題などを巡り、中国は米国の思惑と異なる対応をしてきたのが現実だ。
こうした中、オバマ政権には、人権問題が絡むダライ・ラマの訪米でも中国側に譲歩すれば、世界に米国の弱腰を示すことになりかねない、との危機感がある。クローリー国務次官補(広報担当)は2日、「中国が国益を追求するように、米国も国益を追求する」と主張した。中国が抵抗しているインターネット規制の廃止や、米国から台湾への武器売却などを念頭に置いた発言とみられる。
国内事情もある。大統領は先月の一般教書演説で、国内経済の再建に向け、超党派路線にかじを切る姿勢をみせたばかり。中国に従来通りのソフトな対応を続ければ、野党・共和党の反発は必至の情勢だ。