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企業の内部留保

2010年4月1日0時19分

 企業は経済活動を正確に記録し、決算という形で業績を国に報告している。努力の結果、利益を計上し、それに見合った税金を納める。おおむね経常利益の45%程度を納税し、残る55%の中から株主への配当金、役員への賞与などを支払う。最後に残った分は、留保利益として資本勘定に繰り入れられ、内部留保となる。

 2月中旬、鳩山由紀夫首相が、共産党の志位和夫委員長と会談した。「大企業の内部留保が日本経済の成長力を損なっている」と内部留保に課税を求める志位委員長に、首相は「検討してみたい」と応じた。結局、政府内で検討されなかったようだが、そもそも内部留保は悪いものなのか。

 健全な企業は、内部留保など自己の金融資金を、新たな設備投資や研究開発投資にあて、福利厚生施設も建設する。内部留保は、立派に社会へ還元される資金であり、脱税してため込んだタンス預金ではない。

 何より内部留保は、納税が無くては構築できない。つまり納税した証しともいえる。不況の嵐の中、当面は赤字であっても、雇用を保障して賃金を確実に支払える企業は、自己資本比率の高い企業であり、内部留保の大きい企業である。

 法人税の実効税率をみると、日本は40%程度。一方、欧州諸国や、韓国、中国など新興国では、二十数%という国が多い。つまり、内部留保としての自己資本の蓄積が、日本よりも容易ということだ。その蓄えは、研究開発や設備投資に回り、企業の成長力となる。

 中国や韓国企業の躍進ぶりとは対照的に、日本企業は成長力に欠ける。競争に敗れることも、しばしばだ。法人減税を真剣に考えるときではないか。(樹)

    ◇

 「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。

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