2010年04月01日(木)
保険医取り消し違法 甲府地裁判決 「処分は重過ぎる」 小児科医の無診察処方
 |
判決後の記者会見で感想を述べる溝部達子院長(左)と石川善一弁護士=甲府市塩部4丁目 |
|
「無診察処方」などで不正に診療報酬を請求したとして甲府市の小児科医院「みぞべこどもクリニック」の保険医療機関の指定と、溝部達子院長(54)の保険医登録を取り消した山梨社会保険事務局(当時)の行政処分は違法として、溝部院長が国を相手取り処分の取り消しを求めた訴訟は31日、甲府地裁で判決があった。太田武聖裁判長は「裁量権の範囲を逸脱した違法な処分」とし、原告の請求を認める判決を言い渡した。一方で、無診察処方をした事実を認定し、「軽率と言わざるを得ない」と指摘した。原告代理人によると、同様の処分取り消しを命じた判決は神戸、福島両地裁に次いで全国3例目。 溝部院長は2003〜04年、患者の子どもや家族を直接診療せずに薬を渡したりして約42万円を不正に受給。同事務局は05年12月から5年間、同病院の保険医療機関の指定と溝部院長の保険医登録を取り消す処分をした。 溝部院長は「不正請求とした内容の一部に事実誤認がある。無診察処方は患者のためにしたことで、5年間の取り消し処分は重過ぎる」として、同年11月に提訴。国は「違反要件に該当することは明白。不正請求の違法性は高い」と反論、争う姿勢を示していた。 太田裁判長は判決で、同事務局が不正請求とした内容の多くを事実と認め、「誤診を防ぐためにも対面診察が原則だが、(無診察処方を)安易に行った」と指摘した。 しかし、(1)溝部院長が自分の利益のためでなく、患者のために行った(2)ほかの事例と比べ、不正請求が高額と言えない−などと原告の主張を取り入れ、「原則5年間、保険医として再登録できないという処分は極めて重い。違反の悪質性に比べ、社会通念上著しく妥当性を欠くことは明らか」と指弾。裁量権の範囲を逸脱した違法な処分だったと認定した。 溝部院長は判決後、同病院で記者会見し、「画期的な、重い判決をいただいた。厳しい裁判だったが、患者らの温かい支援に支えられた。日本の医療をより良い方向に進めるきっかけになってほしい」と述べた。取り消し処分は現在執行停止中で、溝部院長は同病院で保険診療を行っているが「無診察処方など違反行為はしていない」という。 代理人を務めた石川善一弁護士は「保険医登録の処分について厚生労働省に巨大な権限があるのに、法律で明確な基準が定められていない。今回の判決は司法が『行政の裁量にも限度がある』と指摘したもので、素晴らしい判決」と話した。6歳の娘のかかりつけという甲府市山宮町の平沢昭子さん(42)は「娘は病気になりやすく月1回、お世話になっている。親身になって対応してくれる先生で、良い判決が出てうれしい」と喜んだ。 一方、同事務局から業務を移管された厚労省関東信越厚生局山梨事務所の轟祐明所長は「判決文の内容をもとに上級庁と協議し、対応を検討する」としている。
|
|
山日携帯サイト 県内ニュース ランキング トップ5
|
「お茶の倉惣」破産へ 江戸期創業 (1日 5:56)
|
大宮・塚本選手を支援 VF甲府選 (1日 0:42)
|
住民登録忘れないで 入学式会場に (1日 11:16)
|
農業と“アキバ文化”コラボ 南ア (1日 9:24)
|
濁った水で菓子に損害 中央市に8 (31日 22:14)
|
|
→携帯サイトについて詳しくはこちら |
|
|