哨戒艦沈没:救助・引き揚げはどうやって?

空気バッグで艦尾を浮かせ、鉄のワイヤーを引っかける

 海軍は沈没した天安号艦尾の位置を29日に確認し、海難救助隊(SSU)の隊員と民間の潜水作業員らを動員して行方不明者の捜索作業に全力を投入した。

 海難救助の専門家は誰もが、「海底に沈んだ船の乗組員を救助する作業は非常に難しい」と口をそろえる。船体を引き揚げれば済むと考えがちだが、泥に埋まっている船体を引き揚げるのは簡単なことではない。

 船体がまっすぐな状態ならまだラッキーだが、天安号艦尾のように一方に傾いている場合、強い潮の流れの中で、大型の「リフトバッグ」を使い、船体をまっすぐにしなければならない。忠南大学船舶海洋工学科の盧仁植(ノ・インシク)教授は、「ホースを利用して船内に1平方メートルの空気を注入すれば、1トンの重さを浮かせるだけの浮力が得られる。しかし、爆発で破壊された船体のすき間から空気が抜けるため、十分な浮力は得られない可能性がある」と述べた。

 専門家は「艦尾の状態をまっすぐにできたとしても、艦尾を海面にまで引き揚げる際に大事故が発生する可能性がある」と警告する。艦尾そのものの重量に、中に詰まっている海水の重さも加わるため、瞬間的に発生する波で重心が揺らいだ場合、鉄製のワイヤーが切れたり、ひどい場合にはクレーンのブームが折れる可能性もあるという。

 船体の引き揚げには多くの時間がかかるため、行方不明者の捜索が目的なら、最優先の方法とはならない。29日午後に2200トン級の海上クレーンが慶尚南道の巨済を出発し、5日後には現場に到着する予定だ。3000トン級のバージ船は30日に平沢を出発し、31日には引き揚げ作業に取り掛かる。

 2002年の第2次延坪海戦では、130トン級のチャムスリ357号が沈没した。この艦船を海軍が引き揚げたのは沈没から53日後、作業が始まってから17日後だった。天安号の事故海域は潮の流れが強く波も高い。さらに干満の差も激しいため、引き揚げ作業にチャムスリ号以上の時間がかかるのは間違いない。

 艦尾の一部に鉄製のワイヤーを引っかけ、近くのペンニョン島に移動させることも検討に値するが、これもやはり簡単ではない。水中溶接で船の複数の位置にワイヤーを掛ける方法では、400トン以上とされる艦尾部分の重量がわずかの位置に集中してしまうため、船体が裂けてしまう可能性があるという。沈没時の爆発で船のあちこちにはすでに亀裂が生じているため、この作業もリスクが非常に大きい。船舶の救難を専門に手掛ける韓国サルベージのキム・ジョンイン社長は「重量を分散させるためには、船の下部に太い鉄のワイヤーをいくつも敷き、全体を包み込むようにして引き揚げるしかないだろう」と語る。

 現在、生存者救出のために考えられる方法としては、船体に直接接近して船を浮かせるか、ハッチを開いて行方不明者を直接捜し出す方法以外にない。盧仁植教授は「潜水作業員が船室内部に入って行方不明者を船の外に出すとしても、圧力差を考慮しなければならない」と語る。無理にハッチを開けた場合、密閉された部屋に海水が一気に流れ込むため、たとえ生存者がいたとしても、救助直前に命を失ってしまうという。船室に水を入れて船室内外の圧力を合わせてから救出するのは、非常に困難な作業になる。盧仁植教授は「たとえ密閉された空間だとしても、船室にはすでにかなりの水が流れ込んでいるはずだ。船室内の水が詰まっている方向から穴を開ければ、圧力の損失なしに空気を注入でき、そうすれば救助作業もより安全に行うことができるだろう」と述べた。

チェ・ソンジン記者

ヤン・モドゥム記者

【ニュース特集】哨戒艦「天安」沈没

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版
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