両党首、苦境にあっての論戦である。鳩山由紀夫首相と自民党の谷垣禎一総裁らによる2度目の党首討論が行われた。焦点の米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題について首相は5月末までに地元了解を取り付け、新たな政府案を決着させることを約束した。
初回の討論が迫力不足として党内の強い批判を招いた谷垣氏だが、普天間問題にほぼテーマを絞り込んだこともあり、それなりに聞き応えがあった。夏の参院選に向け2大政党が混乱するばかりでは、政治への国民の失望を深めるばかりだ。両党首は討論を逃げずに対立点の明確化に努めなければならない。
首相、谷垣氏とも足元がぐらつく中での討論だった。首相は郵政改革見直しをめぐり深刻な閣内対立を招き、亀井静香金融・郵政担当相案の事実上の丸のみで、辛くも空中分解を免れた。一方で、谷垣氏にもきついプレッシャーがかけられた。2月の初討論を境に自民党内から迫力不足との批判が噴出し、反転攻勢どころか逆に党掌握に不安を来す波乱要因となったためだ。
そんな危機感もあってか、特に普天間問題をめぐる応酬は緊張感があった。首相が一時、政府案を3月中に決めると公言した点を谷垣氏は突いたが、首相は「腹案」をまとめており、公表できないと述べるにとどめた。
谷垣氏はさらに新たな政府案について「(辺野古に移設する従来計画が想定する)14年までに普天間の危険を軽減するのか」と迫り、首相はこの点は約束した。また、首相がかねて5月末を期限としている意味合いについて単に政府方針だけでなく、移転先や米側の了解も含むのかを谷垣氏はただし、首相は「政府案としてその案を5月末までに認めてもらうのが私の役割」と応じた。
仮に5月末に決着できない場合は退陣か衆院解散を谷垣氏が求めたのに対し、首相は明言しなかった。しかし、地元了解も含めた決着を首相が約束した言質は重い。
「政治とカネ」について、首相は相変わらず守勢だった。自らの資金管理団体の偽装献金事件に関して、資料の公開も含めた説明についてあいまいな発言に終始した。
自民党内では今回の討論で谷垣氏が首相に即時退陣を迫らなかった点に批判が出ることも予想される。だが、論戦を通じて国民に政策の違いを示し、課題によっては建設的に接点を探ることが討論の目的であり、倒閣運動の道具ではない。郵政改革、財政再建問題を今回、谷垣氏は取り上げなかった。実のある討論を挑むにはまず、選挙に向け自党の政策をより明確にしなければならない。
毎日新聞 2010年4月1日 2時35分