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教科書調査官、検定意見に強い影響力 89%がそのまま

2010年3月31日8時42分

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 今回、初めて公開された教科書検定の調査意見書。大学の准教授や高校教員らから採用された文科省の常勤職員、教科書調査官が作成するものだ。教科書検定では、これを踏まえて教科用図書検定調査審議会が教科書会社に検定意見を示す仕組みだが、今回検定審が出した検定意見のうち、89%までが調査意見書と同じだった。

 調査意見書は事実関係の間違いの指摘が大半を占めるものの、見解が分かれる問題も含まれている。たとえば6年社会では、第1次世界大戦前の日本の大陸進出の理由について「日本も植民地になることをおそれ」と書いた社に「誤解するおそれがある」という意見が付き、教科書会社側は「日本が植民地になることをおそれるとともに、自らも欧米諸国にならって」と記述を追加した。また、基本的人権の中の「新しい人権」を紹介した部分で「日本に住む外国人の権利」を挙げた社にも「誤解するおそれがある」という意見が付き、教科書会社はこの部分を削除した。

 調査意見書と、それを引き写した検定審の検定意見は抽象的な表現が多く、詳しくは教科書調査官が口頭で伝えるケースが多い。「外国人の権利」を削除した社は、調査官から「かねて言われていることで、『新しい人権』という枠組みに入れるのはそぐわない」と言われたという。

 教科書検定をめぐっては、2006年度の高校日本史で沖縄戦の集団自決について「日本軍の強制」という記述が軒並み削らされたことが問題化。調査意見書の公開は、検定の透明性を高める方法の一つとして決まった。今回は検定審の部会ごとの議事概要も初めて公表されたが、意見の結論が2〜3行で個条書きにしてあるだけで、どんな議論があったのかは全くわからない内容だった。

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