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携帯電話におけるSIMロック論争 - 松本徹三
2010年03月29日10時00分 / 提供:アゴラ
しかし、どうも総務省がこれから検討しようとしているのは、「SIMロックを禁止し、これを前提として存在している現在のエコシステムを全面的に廃止して、全く新しいエコシステムへと移行することを強制する」ということらしいのですから、こうなると由々しき事です。「とんでもない。そんなことをしたら、ユーザーの利益を大きく害するような、大変な事態を招きますよ」ということを、私も声を大にして言わざるを得なくなったのです。
つまり、「全ての中華料理店がコース料理だけというのもおかしいね。『飲茶』の店もあってもいいんじゃあないの」と言われるのならよいのですが、「今後中華料理店でコース料理を出すことは禁じる。全ては飲茶方式にしなければならない」と言われるとなると、これはとんでもないことだということです。
そもそも、この問題は、一年前にも話があったのですが、その時の結論は簡単でした。
「本質的な問題を議論する以前の問題として、KDDIはSIMロックを使っていないのだから、KDDI以外の通信事業者についてだけ、『現行のエコシステムを破壊するSIMロック解除』を強制すれば、KDDIだけが利を得ることになり、これは問題外。従って、将来全ての事業者が同じLTEと呼ばれるシステムを全面的に使うことになった時点で、本件はあらためて検討すればよい」ということで、一件落着になったのです。
従って、どういう経緯でこれがまた議論されることになったのかは、よく分かりませんが、KDDIと他の通信事業者をどのように分け隔てなく扱うかは、いずれにせよ避けて通れない難題として残るでしょう。
さて、ここで問題の核心に入ります。
現在の携帯電話ビジネスは、電話とメールだけだった昔と異なり、端末が様々な機能を持ち、様々なサービスをサポートすることで成り立っています。言い換えれば、ユーザーは、一つの端末を買うことによって種々のサービスを享受する事になり、その「総合的な価値」に対してお金を払っているのです。しかし、そのような種々のサービスは、高速通信回線がなければ得られないので、「端末」、「サービス」、「通信回線」の三つが、「三位一体」となってユーザーの為の価値を創出していると言えます。
そして、この三つを統合する役割を、現在の日本では通信事業者が担っているのです。
「ユーザーによるサービス選択」の入り口となる「端末機のマーケティング」についても、現状では通信事業者が主として行っています(ワンストップ・ショッピング)が、それ以上に、「端末」、「サービス」、「通信回線」のどこに問題があっても、ユーザーは通信事業者のカスタマー・サービス・センターにコンタクトすれば回答が得られる仕組みになっていることが、ユーザーにとっては大きな安心材料になっています。
もし、この三つを統合するところがなければ、ユーザーは、端末ベンダー、サービスプロバイダー、通信事業者の三箇所をあちこちたらい廻しされ、結局誰も責任を取ってくれないという事態に直面するリスクがあるからです。
毎月の請求書も同じです。ユーザーは、「回線使用料」「端末機の割賦代金(後述)」「種々の付加サービスの料金」の三つがパッケージになった請求書を受け取り、これを一括支払いすることで全てが済んでしまいます。毎月の予算管理をする上でも、これは便利です。(ワンストップ・ビリング)
一方、通信事業者は、この三つを統合し、それぞれから得られる利益をまとめて享受できることを前提に、種々の価格設定を行っています。幸いにして、現状では、少なくともドコモ、KDDI、ソフトバンクの三事業者は、ほぼ同じ体制で日夜激しい顧客獲得競争を行っていますから、どの事業者も、コストと利益を最低限まで削って競争せねばならない立場にあります。
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