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携帯電話におけるSIMロック論争 - 松本徹三
2010年03月29日10時00分 / 提供:アゴラ
今年の1月から半信半疑でTwitterをやり始めましたが、多くの人達と同様、やり始めると癖になり、その上、効能も大きいことが分かりました。実名でTweetしていますが、特に宣伝はしていないのに、3ヶ月を経ずしてFollowerは5,460人を超えました。140字の制限があるおかげで、メッセージがついつい長くなることへの自省が働く為、ちょっとした待ち時間を利用しての、自分なりの「気晴らし」にもなっています。
しかし、軽く書いたコメントに賛否両論が生じ、文字数を気にせずに詳しく説明をせねばならなくなる羽目になることもあります。いや、もう少し前向きに考えるなら、即座に反論がきたり、これまで盲点になっていたことを教えられたりするので、Blogレベルで筋道を立てた議論をする為の「良い刺激」にもなります。そういうわけで、今回は、携帯通信事業会社に勤務している私の専門分野について、アゴラの場を借りて、Twitterで約束した表題の件を、少し議論させて頂きます。
歴史を遡って基本的な問題から解説する必要がある為に、大変な長文になってしまった上、少し専門的になるので、ご興味のない方には甚だご迷惑だとは思いますが、出来れば我慢してお付き合い頂ければ有難く存じます。というのも、このことは、「国はどういうことに関与し、どういうことに関与すべきでないか」という一般論にも若干関係すると思うからです。
表題の「SIMロック」というのは、「SIMカードと呼ばれる、特定の携帯通信事業者のネットワークを利用する為に必要なカードを、一定の端末機と一体不可分にすること」を意味します。(ちなみに、このSIMカードは、欧州で始まって今や世界の携帯通信市場の90%近くをカバーするまでに至った「GSM方式とその後継のWCDMA方式」に使われているもので、CDMA方式のKDDIは使っておりません。)
こう言っても、普通の方には何が何だか分からないと思いますが、GSM方式の歴史を説明すると分かりやすいかもしれません。
欧州の人達は常日頃から国境を越えて旅行し、その先々で手持ちの携帯電話を使って電話をしたりメールの送受信をしたりしますが、通信会社は通常国境を越えるごとに変わります。従って、国境を越えると携帯電話機の中のSIMカードを取り出して、その国の通信事業者が発行しているものに変えることが必要だったのです。
従って、ユーザーは、通常、ノキアとかエリクソンとかいったメーカーブランドの携帯電話機を買い、それから通信事業者の店に行ってSIMカードというものを買って、携帯電話機の中にそのカードを入れて、初めて使用OKということになっていたのです。
今はもうそんな面倒くさいことはしません。例えばノキアの店でノキアの携帯電話機を買ったとすると、店員は「通信事業者はどこにしますか?」と聞き、ユーザーの好みに従って特定の事業者のSIMカードを挿入します。一方、通信事業者の直営店に行けば、始めからその事業者のSIMカードの入った携帯電話機だけが並べられていますから、機種だけを選べばよいのです。
国境をまたいで旅行する時も、現在は通信会社同士が「ローミング契約」というものを結んで、お互いのネットワークの貸し借りをしていますから、いちいち自分の携帯電話機の裏蓋を開けてSIMカードの交換をするというようなことはしません。
一方、日本ではどうなっているのでしょうか? 日本の携帯電話は端末の買い取り制度が始まったのを機に発展しました(それ以前は通信事業者が貸与していました)が、それと同時にドコモを始めとする通信事業者が、端末機の販売網をそれぞれに確立しました。(ドコモの場合は伊藤忠が最初から協力しましたので、私自身も深く関与し、後楽園や新宿五丁目のドコモショップの開店時のテープカット等に参列したのを憶えています。)
しかし、軽く書いたコメントに賛否両論が生じ、文字数を気にせずに詳しく説明をせねばならなくなる羽目になることもあります。いや、もう少し前向きに考えるなら、即座に反論がきたり、これまで盲点になっていたことを教えられたりするので、Blogレベルで筋道を立てた議論をする為の「良い刺激」にもなります。そういうわけで、今回は、携帯通信事業会社に勤務している私の専門分野について、アゴラの場を借りて、Twitterで約束した表題の件を、少し議論させて頂きます。
歴史を遡って基本的な問題から解説する必要がある為に、大変な長文になってしまった上、少し専門的になるので、ご興味のない方には甚だご迷惑だとは思いますが、出来れば我慢してお付き合い頂ければ有難く存じます。というのも、このことは、「国はどういうことに関与し、どういうことに関与すべきでないか」という一般論にも若干関係すると思うからです。
表題の「SIMロック」というのは、「SIMカードと呼ばれる、特定の携帯通信事業者のネットワークを利用する為に必要なカードを、一定の端末機と一体不可分にすること」を意味します。(ちなみに、このSIMカードは、欧州で始まって今や世界の携帯通信市場の90%近くをカバーするまでに至った「GSM方式とその後継のWCDMA方式」に使われているもので、CDMA方式のKDDIは使っておりません。)
こう言っても、普通の方には何が何だか分からないと思いますが、GSM方式の歴史を説明すると分かりやすいかもしれません。
欧州の人達は常日頃から国境を越えて旅行し、その先々で手持ちの携帯電話を使って電話をしたりメールの送受信をしたりしますが、通信会社は通常国境を越えるごとに変わります。従って、国境を越えると携帯電話機の中のSIMカードを取り出して、その国の通信事業者が発行しているものに変えることが必要だったのです。
従って、ユーザーは、通常、ノキアとかエリクソンとかいったメーカーブランドの携帯電話機を買い、それから通信事業者の店に行ってSIMカードというものを買って、携帯電話機の中にそのカードを入れて、初めて使用OKということになっていたのです。
今はもうそんな面倒くさいことはしません。例えばノキアの店でノキアの携帯電話機を買ったとすると、店員は「通信事業者はどこにしますか?」と聞き、ユーザーの好みに従って特定の事業者のSIMカードを挿入します。一方、通信事業者の直営店に行けば、始めからその事業者のSIMカードの入った携帯電話機だけが並べられていますから、機種だけを選べばよいのです。
国境をまたいで旅行する時も、現在は通信会社同士が「ローミング契約」というものを結んで、お互いのネットワークの貸し借りをしていますから、いちいち自分の携帯電話機の裏蓋を開けてSIMカードの交換をするというようなことはしません。
一方、日本ではどうなっているのでしょうか? 日本の携帯電話は端末の買い取り制度が始まったのを機に発展しました(それ以前は通信事業者が貸与していました)が、それと同時にドコモを始めとする通信事業者が、端末機の販売網をそれぞれに確立しました。(ドコモの場合は伊藤忠が最初から協力しましたので、私自身も深く関与し、後楽園や新宿五丁目のドコモショップの開店時のテープカット等に参列したのを憶えています。)
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