昨年10月の消防法改正で都道府県に設置が義務付けられた「救急搬送の実施基準」。救急患者の受け入れ拒否やたらい回しを防ぎ、適正な搬送体制をルール化するものだ。基準を策定するために消防・医療関係者で作る協議会は39都道府県で設置済みだが、本県はまだ委員の選定を進めている段階。法改正から5カ月経過しても「違法状態」のままだ。
改正消防法は、都道府県に協議会設置を求めている。総務省消防庁は「実施基準の策定に、ある程度時間がかかるのはやむを得ない」としている一方、協議会設置は法施行に間に合わせるよう求めていた。鹿児島県は協議会設置だけではなく、実施基準まで策定している「先進県」。一方、今年度中に協議会さえ設置できないのは本県など8県のみとなった。
県は法改正後の1月になって関係者に協議会委員就任を打診した。了承を得て、協議会が発足するのは年度明けの4~5月になりそうだという。
県内では昨年4月、日向市で意識を失った男性(当時65歳)が7病院から受け入れを断られて死亡した問題も起きており、救急体制の構築は喫緊の課題だ。県消防保安課は「協議会の重要性は理解している。できるだけ来年度の早い時期に設置したい」と説明している。【種市房子】
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■ことば
実施基準は、救急患者を搬送する医療機関のリストや、症状の分類リストから構成される。脳卒中はA病院、アルコール中毒はB病院というように、症状に応じて搬送先の病院を取り決めているのが特徴。地域状況に則した基準を策定するために、都道府県は消防・医療関係者らから構成される協議会を作ることが求められている。
毎日新聞 2010年3月31日 地方版