元厚生次官ら連続殺傷事件で、殺人や殺人未遂などの罪に問われた無職小泉毅被告(48)の判決公判が30日、さいたま地裁で開かれ、伝田喜久裁判長は求刑通り死刑を言い渡した。地裁は、元厚生官僚トップとその家族を相次いで狙い、社会に衝撃を与えた事件を厳しく断罪。一方で、「殺したのはマモノ」と無罪を主張し、共同通信社などに「無罪以外は即控訴する」と手紙を送っていた小泉被告は判決を不服とし同日午後、予告通りに控訴した。
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伝田裁判長は判決理由で、「犯行は周到かつ綿密に計画を立てており、完全責任能力があったのは明らか」と述べた。
弁護側は、「妄想性傷害のため心神喪失か心神衰弱だった疑いがある」とし、自首による減刑と合わせて死刑回避を訴えた。起訴前の精神鑑定のやり直しも訴えたが、却下された。
伝田裁判長は自首について「当初から計画されており、刑を軽くする趣旨にそぐわない」と指摘。「保健所で殺処分された愛犬のあだ討ち」とした動機には「狂犬病予防法を所管する旧厚生省の実質的トップを狙う論理自体に、特段の飛躍はない」と述べ完全責任能力を認めた。
「殺したのは人ではなくマモノ」とした無罪主張は「被告人独自の見解」として退けた。
さらに「生まれ変わったらもっと多くのマモノを殺したい」とした小泉被告の発言を「被害者らを冒とくし更生の意欲を全く見せていない」と批判。「死刑の選択はやむを得ない」と結論付けた。
判決によると、小泉被告は2008年11月17日夜、さいたま市南区の元事務次官山口剛彦さん=当時(66)=宅で、山口さんと妻美知子さん=同(61)=を刺殺。翌18日夜には東京都中野区の元事務次官吉原健二さん(78)宅で妻靖子さん(73)の胸を刺し、重傷を負わせるなどした。