きょうの社説 2010年3月31日

◎金沢港の合い積み 「重点港湾」選定の弾みに
 金沢港で、県内の複数企業が共同で貨物船をチャーターする「合い積み輸送」が始まっ た。出荷時期などを調整し、金沢港からの輸出を増やすのが狙いで、この仕組みが軌道に乗れば、神戸や名古屋港など太平洋側へ運ばれていた貨物を取り戻すことが期待できる。

 国土交通省は金沢港など全国103の重要港湾のうち、約40港を「重点港湾」に選定 し、2011年度から投資を重点化する方針を打ち出している。貨物取扱量の実績や地域の拠点港としての機能などが判断材料になるとみられるが、合い積み輸送は、一部の企業にとどまらず、地元産業界として港を活用し、地域経済と港が一体の関係にあることを示すうえでも重要な取り組みとなる。「重点港湾」選定へ向け、着実に実績を重ねてほしい。

 合い積み輸送は、コマツなど荷主企業20社が金沢港利用促進会議を発足させ、出荷の 調整を進めていた。昨年11月にはコマツ粟津工場とコマツ産機のグループ企業同士がインドへ向けて実施したが、今月28日にはコマツ粟津工場と根上工作所が建機とプレス機を韓国に輸送し、別企業による初の共同出荷となった。

 金沢港のコンテナ取扱量は2月まで4カ月連続で前年同月比プラスとなり、輸出の回復 傾向が見えてきた。受注生産の場合、輸出国が同じでも出荷時期を合わせるのは簡単でないが、全体の輸出量が増えてくれば、調整できる環境も整ってくるだろう。この仕組みを通じて、輸出企業の間で地元港を優先するという意識を広げていくことが大事である。

 金沢港整備促進期成同盟会などは、コンテナの取扱貨物量では金沢港が重要港湾で2位 であることや、旅客船寄港数も上位であることを国に示し、「重点港湾」選定の働きかけを強めている。そうした実績に加え、「合い積み輸送」で企業同士の連携を打ち出せば、金沢港独自の将来性をアピールすることができる。

 県や金沢市も新年度から、荷主対象の助成制度を拡充する。港湾経営に官民一体で知恵 を絞り、貨物量の増大が航路の充実につながる好循環を引き出したい。

◎中小企業応援センター 試される地域の支援力
 経済産業省が新年度に実施する「中小企業応援センター事業」に石川、富山県から地方 銀行と公的機関を中心にした2グループがそれぞれ選ばれた。2008年度に始まったばかりの「地域力連携拠点事業」に替えて地域の中小企業の新事業展開や再チャレンジ、事業承継などを支援する取り組みが応援センターを拠点に展開される。

 前政権の地域力連携拠点事業では、全国の商工会議所や中小企業団体中央会など300 以上の機関が中小企業支援の拠点に選ばれた。鳩山政権の事業仕分けで同事業は大幅に見直され、全国84カ所の中小企業応援センターに集約して出直す形になったが、基本的な目的は同じである。

 中小企業をサポートする国、自治体や公的機関など官の援助にはおのずと限度があり、 日常的に中小企業を支援している商工会議所や商工会の活動も、IT化や異業種連携の高まりなど企業側の支援要請が高度、複雑になり一つの曲がり角を迎えている。

 このため地域の関係機関、団体が連携し、それぞれの資源、能力を総動員して中小企業 の活動をバックアップしようというものである。各県の総合的な支援力が試されているのであり、その力量や熱意いかんで地域経済の勢いにも差がつく時代であるという認識で取り組んでほしい。

 複数の支援機関の連合体である応援センターで中心的な役割を担うのは、地域企業と濃 密な関係を築き、さまざまな経営情報を蓄積している地域金融機関である。石川は北國銀行、富山は北陸銀行と富山第一銀行が応援センターの中核となっている。

 石川では今後、信用金庫などとも連絡協議会を設けて企業ニーズを幅広く吸い上げる体 制にしていく予定というが、各金融機関は日ごろは競争関係にあり、例えば、応援センターの活動の背後で、新規の取引先開拓に関して摩擦が生じないとも限らない。

 そうしたことから、金融機関同士の連携が円滑に行われるかどうかも、応援センターの 成否の鍵の一つといえる。