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埼玉の「葬式祭」に潜入

2010年03月30日
エンタメ

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 埼玉・秩父の奇祭「じゃらんぽん」は100年以上も続く伝統ある祭りだ。「葬式祭」とも呼ばれ、その年に一番不幸だった者が死人役となり、一度葬式を挙げて厄払いをすることで、村人の無病息災を願う行事として始まったらしい。

村で一番の不幸者が死人役
「じゃらんぽん」とは、本物さながらの葬儀を村人がそれぞれ役割を担って執り行う年中行事だ。葬式は町内から選ばれる死人役(1人)、送り人役(7〜8人)、方丈役(坊さん1人)で構成される。記者は、送り人として参列させてもらえることになった。

 主役はもちろん死人だ。ひつぎに入る死人役は、その年に村で一番不幸だった者が選ばれる習わしだったが、近年は立候補制で厄年の人に決まることが多いという。
 今年の死人に選ばれたのは後厄の碇谷(いかりや)幸司さん(41)。お神酒を頂きながら「目立つのは嫌いじゃない」と気合マンマン。妻子が見守る中、足元を早くもふらつかせながら白装束に袖を通した。

 去年の死人役・高野さんはこれまでに3度も死にかかったという、まさに“ハマリ役”。「スキーでコースを外して死にかかったり、ダンプカーが落下してきたり、登山中つかまった石ごと落下したり…」と再三の憂き目も、死人役を務めてからはパッタリ。「オレは神様…信じてるんよ。不思議なもんです」としみじみ語る。

 記者も送り人に扮するべく、唐草模様の大風呂敷と三角頭巾を身に着けて列席。酒瓶を抱えたままひつぎに納まる死者を悼んでいると、方丈(川島康助さん=58)がお経を唱え始める。
 方丈が手に持っている供養用具をはじめ、じゃらんぽんで使われる道具は全部、実際の葬儀で使われる本物だという。昔は茶箱だったひつぎも、今では葬儀社から提供された本物を使用している。祭祀道具は本格的だが、方丈のお経はといえば…。「え〜、今年の死人は〜なんちゃら、こんな〜酒飲みの〜〜人身御供は初めてだ〜チーン」と唱えていたかと思えば「のどが渇いた〜」とビールを持って来させる始末。死人も自分で死に水ならぬ“死に酒”をあおっていたが、飲み干しても空の酒瓶を放さないので、ふびんに思って新しい酒を顔にかけてやった。

 終始、笑いに包まれた“和やかな葬儀”が終わると、いよいよ出棺のとき。参列者は葬儀会場の公民館を後にして、奉納先の諏訪神社に向けてひつぎを運ぶ。

大病した人も元気に
外はすっかり暗いが、秩父の夜空は星が鮮やかだ。 我ら送り人は「おり」「太鼓」「にょうはち」と呼ばれる3つの打楽器をチン・ドン・シャンと鳴らしながら列の先頭をいく。小学生からお年寄りまでの参列者らの「な〜む〜」の声を背中に聞きながら、チン・ドン・シャンと叩き続けると1分ほどで神社に到着。白装束の死人役も両脇を抱えられながら、ふらふら歩いて本殿までやって来ると、再びひつぎに納まり、あいさつとバンザイ三唱で祭りは締められた。

 じゃらんぽん。その語感といい、祭りの内容といい、どこまでもいい加減に思えるこの祭り。しかし、大病をした人が死人役を務めてからピンピン元気になるなど、この祭りには不思議な力があるのだという。

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