西日本新聞

日韓歴史研究 時間をかけて近づけよう

2010年3月26日 11:17 カテゴリー:コラム > 社説

 日本と韓国の歴史学者による「日韓歴史共同研究委員会」が、第2期の研究報告書をまとめ、公開した。予想されたことではあるが、双方の歴史認識の溝の深さが、あらためて浮かび上がった。

 日韓歴史共同研究は、2001年10月の日韓首脳会談で合意して始まった。この年の教科書検定で「新しい歴史教科書をつくる会」メンバーが執筆した扶桑社の歴史教科書が合格し、韓国側が「植民地支配を美化している」と反発したのが契機だった。05年に第1期の報告書を出し、第2期は07年から議論していた。

 第2期研究では、第1期からの「古代史」「中近世史」「近現代史」の3分科会に加え、「教科書」を専門に論議する小グループが新設された。

 このうち、特に近現代史と教科書で、双方の主張が激しくぶつかり合った。

 例えば、教科書での従軍慰安婦の扱いについて、韓国側は日本の教科書の記述が「縮小の一途をたどっている」と指摘し、その背景を「根本的な要因は政治、社会的状況の保守化」と分析した。

 一方、日本側は「青少年に『戦場と性』という難題を教えるべきか教育現場の真摯(しんし)なためらいがある」と説明し、韓国側論文について、従軍慰安婦と勤労動員だった女子挺身(ていしん)隊を「いまだに混同しており、重大な欠陥がある」と批判した。

 近現代史では、竹島(韓国名・独島)の帰属をめぐり、韓国側が北方領土や尖閣諸島にも触れて「日本の戦後処理では、日本固有の領土と帝国主義日本が侵奪した領土との区分が度外視された」として、日本の戦争責任に対する態度を「歴史的記憶喪失」と断じた。

 この論文について、日本側は「歴史的記憶喪失とは何を指すのか。外交史的蓄積が不十分だ」と反論している。

 議論がかみ合っているとは言い難い部分も多く、日本側委員が「共同研究は不毛だった。歴史研究への姿勢が日韓では違いすぎる」と記述したほどだ。こうした経緯から、日本側は第3期の研究継続に消極的だとされる。

 だが、共同研究の利点はある。これまでは歴史教科書問題といえば、日本の教科書の記述に韓国側がクレームを付けるというパターンで、韓国の教科書は見過ごされてきた。今回、日本側は韓国の教科書が憲法9条を「まったく記述していない」と言及し、「天皇や首相が歴史の謝罪と反省に努力した事実を記述すべきだ」と要求した。双方が注文を付け合う土俵が存在する意義は大きい。

 植民地支配した側と支配された側が歴史認識を共有しようというのは、そもそも困難な作業だ。民主主義の社会で、歴史観を完全に統一する必要もない。

 しかし、偏狭なナショナリズムに基づく感情論ではなく、時間をかけて理性的に歴史を論じる努力を続けることで、お互いに「違いを認め合える」くらいには近づけていきたい。「どうせ無理」と放り出してしまうのは惜しい。


=2010/03/26付 西日本新聞朝刊=

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