2010/03/30

一審敗訴を受けて

本日、東京地裁で医薬品ネット販売訴訟の棄却を言い渡されました。
国側の主張を全面的になぞっただけの、極めて不当な判決です。
消費者のために、医薬品インターネット販売の安全性を最大限高めようと努力してきただけに、このような判決を受けて、残念です。
司法は「法の番人」だと、小学校の時に習いましたが、それがただの幻想だったのかという虚無感を覚えてです。
今回の法令は、日本薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会といった守旧勢力が、医薬品のネット販売をつぶしたいと官僚や族議員に働きかけ、9千以上の消費者からの反対のパブリックコメントを踏みにじって、施行を押し切ったものです。
今回の判決で最も納得がいかないのは、「対面販売とネット販売を比べると情報提供の難易、実現可能性に有意な差がある」と断じていることです。
その理由として、例えば、
1. 対面販売では、購入者の年齢、性別、体格、身体上の特徴、顔色、表情、行動、態度やしぐさ、声質や口調を見聞きできるのに対し、インターネット販売ではそれらが困難である、あるいは購入者の申し出の場合は自己申告だからその申告内容の真偽の確認が著しく困難である。
2. 対面販売では、有資格者は名札で表示されているので確認できるが、インターネット販売では応対の相手が本当に有資格者であるか確認できない。
3. インターネット上で、禁忌事項に関するチェックボックスを設けたところで、それを正しく理解しているかわからない。
4. 対面販売で例え、実際の使用者が購入者以外のものであっても、対面販売であれば、購入者から情報をしっかり聞き取ることができるが、インターネット販売では購入者の自己申告に基づくしかないので、虚偽の申告を見抜けない。

実際のドラッグストアではこのような状況を実現しているでしょうか?
僕は「ポイントカードを持っていますか?」と言われた経験しかありません。
一方で、インターネット上では、ペテン師がうそつきに販売していることを想定しています。

まさに結論ありきの理由付けとしか思えません。

このような不合理な理由で既存の業界を守り、新たな業界の出現を妨げることに、司法までもが荷担するとは驚きを禁じ得ません。
司法が、「インターネット販売は対面販売に較べて情報提供の点で有意に劣る」と認めたことは、Eコマースやインターネットのビジネス全体の根幹を揺るがします。

また、今回、対面販売の優位性を認めたことで、インターネット販売だけでなく、漢方薬や伝統薬の郵送販売も、同様に安全性が劣ることを司法に認められたことになります。

立法、行政だけでなく、司法までもが堕落しているこの国に将来はあるのでしょうか?
このような国に、新しいビジネスが生まれる土壌があるのでしょうか?
この日本の何を信じていけばいいのでしょうか?

まだ1ラウンドが終わったところです。このような状況に終止符を打つまで、徹底的に戦います。

本日の記者会見で述べた内容に、一部加筆しました。

2010/03/29

判決を明日に控えて

医薬品ネット販売に関する行政訴訟の東京地裁による判決が明日30日に言い渡される。
自分側の主張はしっかりと裁判所に伝えたので、あとは天命を待つのみである。

双方の主張の内容から考えると、僕らの側の勝訴を確信しているが、今回のような理不尽な省令がまかり間違って作られてしまうような日本という国でのことだから、予想外の結果が言い渡される可能性が全くないわけではない。ただひたすら、法の番人としての司法の存在を信じている。

先日の海外特派員協会でのスピーチでも述べたが、今回の判決は、単に医薬品をネット販売できるかどうかという問題にはとどまらない。日本という国がどういう方向に向かっていくかを指し示すものになると思う。今回の医薬品ネット販売禁止は、薬剤師会や日本チェーンドラッグストア協会など、既存の業界が、一方では登録販売者という新たな利権を作り、他方では医薬品ネット販売という目障りな存在を葬り去るよう、厚生労働省および族議員に働きかけてできたものだ。要するに、守旧勢力が官僚や族議員に働きかけることで、新たなビジネスが生まれる芽を摘んでしまおうということが、今回の問題の本質だ。
こんな馬鹿げた規制がある国は先進国では日本だけだ。理屈の通らない規制を、守旧業界の働きかけで作り、その見返りに政治献金や天下り先を確保する。こんな内向きの論理で守旧業界と官僚、族議員の利権を守り、一方で消費者の安全はおざなりにし、新たな商品やサービス、流通の台頭を阻む、それが白昼堂々とまかり通るような国には未来がない。

僕はこの国に生まれ、日本が勢いを持ち、光り輝く時代も見てきた。その光が失われ、消えかかっているのが、ひどく悲しい。今回の医薬品ネット販売に関する一連の取り組みを通じて、光を失わせた原因の一端がどこにあるかはよくわかった。一筋縄ではいかないことはわかっている。相手は巨大な存在だということもわかっている。でも、これはあきらめることなく、戦い続けなければならない存在であることもわかっている。

まだ戦いは始まったばかりだ。

2009/10/26

ケンコーコムシンガポール事業開始

本日、10月26日よりケンコーコムシンガポールの事業を開始した。(プレスリリースはこちら
ケンコーコムシンガポールは日本だけではなく、アジア、世界を見据えたハブになると考えている。このアジアへのハブとして、日本ではなくシンガポールを選ばざるを得なかったのは、大変残念なことだと思う。
ケンコーコムは、従来から、閉塞感漂う日本だけでなく、成長が著しいアジアにビジネス展開を行いたいと考えてきた。日本での売上が一つの節目である100億円を突破したところで、アジアへの本格的な布石を打つ予定であったが、日本のいびつな規制が障害となり、日本を物流ハブとしてのアジア展開は断念せざるを得なかった。厚生労働省は生活者ではなく、既存の業界を守るためにさまざまな規制を行っており、これらは他の国とは大きく異なっている。このような規制に順応すると、ある意味、ガラパゴス状態になってしまう。日本国内の規制には最適化しても、生活者に対しての付加価値を出すことができず、そのようなサービスだともちろんアジアや世界の他の国々に十分なサービスできない。
ちょうど、今日のニュースでユニクロの柳井会長が世界経営者会議で日本は「政治の混迷、官僚支配の非効率な行政」などからグローバル化に遅れたが、「国内で閉じた個人や社会に未来はない」と発言したとあったが、まさにその通りだと思う。素っ頓狂な規制に閉ざされた中で、それに最適化するのではなく、もっと大きな視野から付加価値を出していきたい。
とはいえ、日本の未来を考えると、自らが飛び出るのではなく、日本という国にもっと変わって欲しいと思う。日本という国が変わらなければ、ここから飛び出す人が後を絶たなくなるだろう。
現状では、とにかく、アジアをそして世界を見据えると、日本を飛び出さざるを得ない。

2009/09/01

第2回弁論

医薬品ネット販売に関する訴訟の第2回弁論が行われた。今回は冒頭陳述もなかったので、弁護人同士が淡々と論点ごとに反論するかどうか、いつまで反論するか、などを話し合う場となった。
その後、記者会見が行われたが、その際、僕は以下のようにコメントした。

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改正薬事法が施行された6月1日以来、ちょうど3ヶ月が経過しました。この間、ケンコーコムの医薬品売上は激減しております。当社では継続購入者以外のお客さまには1類、2類の医薬品を販売できない旨をサイト上で大きく謳っています。大半のお客さまはそれを見て、当社での医薬品購入をあきらめてしまいます。また、法令上は当社で医薬品を購入する資格がないお客さまからも依然としてご注文をいただいていますが、継続購入ではないことが確認された場合、当社からお客さまに販売のお断りを入れています。6月以来、毎月2,500件ものお断りを入れています。
その結果、改正薬事法は当社の経営に対して年間売上で5億円、利益で1億円という、非常に大きなダメージを与えています。

一方で、ネット以外の事業者は今回の郵便等による医薬品販売に対する規制を公然と無視しています。

当社は今回、医薬品販売状況の実態調査を行いました。その結果、店頭における販売において、大半のドラッグストアでは第二類医薬品の販売時に、ほとんど全く情報提供を行っていないという実態が明らかになりました。一部の店舗では第1類医薬品の販売の際に薬剤師以外の販売員が販売し、情報提供すら行っていません。
さらに、いくつかの薬局では、6月以降に新たに購入した二類医薬品を郵便で届けてもらえるかどうか試験購入してみました。すると、多くの薬局で問題なく医薬品を郵便で届けてもらえました。今回、試験購入した中で、日本薬剤師会幹部が運営する薬局もありますが、そこでも問題なく医薬品を郵便で届けてもらえました。明らかに違法です。省令による医薬品の郵便等販売規制の導入を積極的に推進し、導入に成功した日本薬剤師会の幹部自らが法令を遵守していない点については、きわめて遺憾であると考えます。

また、伝統薬メーカーにおいても一部の事業者は改正薬事法施行直前に特例販売業の許可を駆け込みで取得し、許可を受けた範囲を超えて、医薬品の郵便等販売を行っています。今回の求釈明に対する回答で、このような販売は特例販売業の許可の趣旨に反するので、都道府県の判断により、行政指導、または必要に応じて改善命令もしくは業務停止、または許可の取消の対象となることが明らかになりました。国がこのような判断をしているのであれば、都道府県は適切な運用を行うべきです。

このように、改正薬事法は施行されて3ヶ月が経過したにもかかわらず、まったく遵守されていません。本来、改正薬事法にかかわる郵便等販売禁止の省令は無効なものでありますが、我々は外見上存在する法令にやむを得ず従っています。一方で、規制を強力に推進し、有効だと主張する日本薬剤師会が幹部をはじめとして堂々と法令を無視しているのはたいへん不条理なことです。このような不公平な運用が長期間にわたって放置されていることを極めて遺憾に思います。
これだけ広範に渡って法令が遵守されず、長期間にわたって放置されているのは、そもそも改正薬事法が大きな矛盾を抱え、実際の運用ができない悪法であるからに他なりません。即刻、全ての事業者が法を遵守するよう運用を徹底するとともに、改正薬事法そのものの見直しをしっかりと行うべきだと思います。

司法の手で、現在のような矛盾に満ちた状況が一刻も早く解消されることを強く望みます。

2009/07/15

第1回口頭弁論

医薬品ネット販売に関する行政訴訟の第1回口頭弁論が行われた。
http://www.nikkeibp.co.jp/it/article/NEWS/20090714/333812/

法廷に出るのは初めてだったので緊張したが、淡々と事務的に進んでいった。今回は、30分間の冒頭陳述の機会をいただいたので、こちらの主張を述べることができたが、それがなければものの10分ほどで終わってしまうような感じだった。短い時間だったが、裁判長の口から何度か「これは重大な憲法事件ですから」という言葉が出たのは予想外のことだった。数多くの訴訟を手がけている中で、今回の訴訟の意味合いを理解していただいていると受けとめた。
僕は冒頭陳述で下記のように述べた。最後に述べているように、行政の暴走を法の番人である司法に食い止めていただき、日本国憲法の精神が守られ、消費者の利益のためにも、より安全で便利な医薬品ネット販売が継続できることを心より願っている。

----------------以下、冒頭陳述----------------
改正薬事法が施行された6月1日以降、医薬品ネット販売禁止という不条理な省令により、当社の経営に甚大な被害が出ています。一刻も早く、この省令の憲法違反を判決で明らかにしていただき、改正薬事法施行前のように安全な医薬品ネット販売を再び続けさせてください。
1.医薬品ネット販売の実態
当社は薬事法に基づき、店舗所在地の知事より販売許可をいただき、薬剤師が医薬品を管理し、販売している店舗です。インターネット上でも従来から、安全な医薬品販売を行ってきました。
ネット販売にこだわっていますのは、昨今のドラッグストアに見られる医薬品の販売の仕方がとうてい安全とは言えないと感じているからです。医薬品を棚に陳列するだけで、お客さまにセルフで取りに行かせ、パッケージを見るだけで買い物かごに入れ、アルバイトの店員がレジを打ち、代金をいただいて、袋につめて お渡しする。こんな売り方が「対面」であるというだけで、十分な情報提供をしたことになるでしょうか?
むしろ我々が行うネット販売のほうがはるかに丁寧です。ウェブページ上では医薬品のパッケージに書かれている説明だけでなく、説明書に書かれている詳しい説明も読むことができます。薬を買おうとすると、必ず資料にありますような問診表がでてきて、そのお薬を買ってはいけないアレルギーがあるか、年齢制限に引っかからないかなどをチェックしなければ買えません。お薬に関してわからないことがあれば、電話やメールで問い合わせられます。必ず、薬剤師が懇切丁寧にお答えします。
お客さまはこのような医薬品ネット販売に安心して買い物にいらっしゃいます。特に、最近の新型インフルエンザ拡大の際には、医薬品ネット販売があるおかげで、感染の可能性が高い人混みに出向かずにすんだ、といったお声も多数いただいています。
よく、安全か利便かと言われますが、間違った問題の把握です。ネットは安全を確保した上で利便性を提供しています。
しかしながら、このたびの省令では、6月1日以降、ビタミン剤とか整腸薬のような一部のお薬を除いて、風邪薬とか、水虫の薬、胃腸薬、漢方薬、妊娠 検査薬といった医薬品のネット販売を危険であるとして一律に禁止されました。薬事法に明記されていない「対面の原則」に基づいて、省令で禁止するというのです。そもそも、なぜ対面でなければ安全性を担保できないのか根拠は示されていません。また、ネット販売だから発生してしまった重大な副作用も1件も報告されていません。
2.省令の問題点
今回の改悪省令の最大の問題は、国会で定められた改正薬事法を、厚生労働省が行政の権限を逸脱して解釈し、医薬品ネット販売事業者が営業するすべを不当に絶ってしまったことです。
医薬品は人の健康を守ってくれる反面、副作用のリスクがあります。その副作用リスクを低減するために、改正薬事法では第36条の6で「医薬品の販売の際に専門家が、その適正な使用のために必要な情報を提供」することを求めています。従来、当社はお客さまの副作用リスクを低減するための情報提供を、前に述べましたように徹底的に追求してきました。
しかしながら今回省令を策定するにあたって、厚生労働省は「対面でない説明は情報提供として認められない」という「対面の原則」を打ち出しました。ドラッグストアでバイトが単にレジを打つだけで、ほとんど会話も交わさない、店頭の販売現場と、お客さまがホームページ上の副作用情報をじっくり見た上で、メールや電話で薬剤師と相談しながら医薬品を購入するネット販売のどちらが副作用リスクの情報提供をしっかりと行えるでしょうか?厚生労働省は「ドラッグストアは店頭での対面なので情報提供できるが、ネットは情報提供にはならない」という前提で、今回の省令を作りました。

裁判官の方にお願いがあります。一度、ケンコーコムのサイトで医薬品を購入しようとすると、どのような情報提供がなされるか、試してみてください。そして、同じ医薬品を薬局やドラッグストアで購入しようとしてみてください。どちらの方法が副作用リスクを低減する、より安全な方法かが明らかになるはずです。

3.改悪省令施行を阻止するための活動
今回の理不尽な省令が公布、施行されるのを食い止めるために、我々は取りうる手段を尽くしました。2005年より厚生労働省に働きかけを行い、ネッ ト販売の安全策も示してきました。この省令づくりの検討会へ参加させてもらえるよう求めましたが、門前払いされました。省令が公布された後に、舛添大臣の肝いりで始まった「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」においてはようやく委員としての参加が認められ、省令の再改正に向けて、忌憚なく意見を述べさせていただきました。しかし、ネット販売に以前から反対してきた委員が大半を占めるいびつな構成の検討会での議論は平行線に終わり、報告書すら出せない状況で、5月22日に第7回をもって終了しました。
一方で、検討会に承認されず、パブリックコメントでも賛成が9,824件中42件の0.5%にとどまる経過措置の省令が5月29日に公布・施行されました。この省令は「2年間の経過措置で、離島居住者および継続購入者に限って2類の販売を認める」という、とても承服しがたいものでした。このような経過措置では、当社が改悪省令により被る甚大な被害はほとんど救済されません。継続が確認できないお客さまには断腸の思いで販売をお断りせざるを得ません。6月は前月と較べて医薬品売上が62%も減少しました。1ヶ月間で2,300人のお客さまに販売のお断りをしました。しかも、お客さまが医薬品を購入されるたびに、その購入が継続購入であるかどうかを確認しなければなりません。お客様の安全な医薬品購入には何ら貢献とならず、コストだけがかさむ業務は実にむなしいものです。
4.改正薬事法施行後の実態
このように、医薬品ネット販売という業態をまさに殺そうとしている改正省令ですが、この改悪によって情報提供がしっかり行われるようになったのでしょうか?店舗の現場、あるいは通信販売を見ても決してそうは言えません。
改正薬事法施行後の7月に、第二類医薬品を買うためにドラッグストアに行きました。薬剤師でも、登録販売者でもない、単なるアルバイトの店員が、レジで販売してくれました。その際に店員からかけられた言葉は「ポイントカードをお持ちですか?」ということだけでした。別チェーンのドラッグストアに行ってみましたが、そちらでも同様です。このような対面販売を守るために、まじめなネット販売が禁止されたのは、本当にやるせないです。
また、改正薬事法施行後も、伝統薬のメーカーは新聞広告で新規顧客に対して相変わらず第二類医薬品の販売行為を行っています。これは僻地で薬剤師がいないところでも医薬品が供給されるように作られた特例販売業という許可を、施行直前に駆け込みで取得したことにより可能になりました。特例販売業であれば、通信販売は禁止されていないのです。伝統薬のメーカーも生き残りに必死なので同情するところはありますが、まことにおかしな話です。登録販売者すらいない特例販売業は通信販売ができて、薬剤師がいる薬局や店舗では通信販売が禁止されます。厚生労働省はネット販売だけを目の敵にしているようです。
実態として店舗が情報提供を行わなくても厚生労働省は看過し、伝統薬メーカーの脱法行為まで容認しています。一方でネット事業者は不本意ではありますが、外観上存在している以上、やむを得ず法令を遵守した販売をしています。その結果、ケンコーコムは年間5億円もの売上を失います。「正直者が馬鹿を見る」というのはまさにこのことです。
5.司法へのお願い
今回の改悪省令は、ドラッグストアや薬剤師を守るために、厚生労働省が露骨なネット潰しをたくらんだ全くアンフェアな省令です。
行政の暴走を、法の番人である司法に食い止めていただき、日本国憲法の精神が守られ、消費者の利益のためにも、より安全で便利な医薬品ネット販売が継続できることを心より願います。

2009/07/01

改正薬事法1カ月

改正薬事法が施行されて1カ月経った。
表面上は施行前とほとんど変わらないが、よく見るとさまざまなひずみが出ている。

まず、店頭。
たしかに、陳列に関しては変わった店が多い。
医薬品分類ごとに棚が分けられ、一類医薬品は空箱を置くように変更された店も多い。
一方で、情報提供に関して言えば、予想されていたことではあるが、施行前とはほとんど変わらない状態が全国的に蔓延している。全国からの投書を見ればわかるとおり、一類医薬品も薬剤師以外が販売しているし、二類医薬品はほとんど説明されていない。
http://www.online-drug.jp/hotline/form.html

二類医薬品の場合でも、お客さまが説明を求める、求めないにかかわらず、購入の際には専門家が情報提供を始めるというのが情報提供の「努力義務」の意味だと、検討会では言われたが、そういう現場がどれだけ存在しているのだろうか?

一方で通信販売。
正直言って、大きな打撃を受けている。ケンコーコムでも二類医薬品は継続購入が確認された方以外、販売をお断りするようにしたので、医薬品の売上は激減した。年間で5億円近い販売が失われることになる。毎日、数十人のお客さまに、前回購入が確認できないため販売をお断りするという作業は、お客さまに対して大変失礼なことであるが、断腸の思いでそのようなご連絡をさせていただいている。
まじめにやればやるほど、お客さまの不満が高まり、販売機会を逃すというのは実に理不尽なことである。

ただし、今回の改正薬事法ではいくつもの抜け穴があるので、それを上手に活用している事業者も多い。

例えば再春館。
http://www.saishunkan.co.jp/tsusanto/7_sample/7_sample.html

痛散湯という指定二類医薬品の無料サンプルを配っている。無料サンプルの配布先は当然新規のお客さまである。これは再春館が施行直前の5月22日に特例販売業という特殊な許可を取ったため、今回の規制対象外となったためである。特例販売業というのは僻地のよろず屋等、薬剤師の確保が難しいところで、やむを得ず薬剤師無しでの販売を認めるという許可である。このような許可を取ることで、原則的に禁止された医薬品の通信販売が専門家無しで自由にできるというのはおかしな話であるが、厚生労働省的には問題ないと言っている。

また、医薬品の買い物代行業、というビジネスも登場した。
http://www.hal-pharmacy.com/daikou/index.html

お客さまから代金を預かり、買い物代行業者が薬局から対面で医薬品を購入し、購入した医薬品をお客さまに郵送する。たしかに、今回の改正薬事法を見ると、このビジネスも成り立つかもしれない。

改正薬事法は「正直者が馬鹿を見る」法令であるとしか言いようがない。そもそも、「対面の原則」という、完全に守ることが非常に困難な原則を根幹に据えているため、抜け穴だらけになってしまったのが現実だ。一刻も早く、「正直者が馬鹿を見る」状態を解消しないと、矛盾は広がる一方だろう。

2009/06/01

改正薬事法施行

非常に残念だが、改正薬事法が議論不十分なまま見切り発車されてしまった。
4年にわたり、今回の改正薬事法に伴うネット販売、通信販売に対する省令の問題点を指摘し続けてきたが、それが容れられることなく、施行されてしまった。

なぜここまで混迷してしまったかを考えると、厚生労働省の考えるロジックに致命的な欠陥があるからだ。

・医薬品は副作用リスクがあるので、安全が最も重要
・安全な流通のためには、対面販売でなければならない
・対面販売でないネット販売、通信販売は安全ではないから禁止しよう

このようなロジックである。

最初の、安全が最も重要ということに対しては、全く異論がない。
しかし次の、「安全な流通のためには、対面販売でなければならない」というのは勝手な思いこみである。はっきり言うと、対面販売でも安全ではない。今日から始まる「登録販売者による対面販売」の行く末をしっかり見て欲しい。専門教育を受けていない登録販売者による、購入者(使用者ではない)に対する対面販売を、どうして安全だと言い切れるだろうか?単にレジ打ちのバイトに登録販売者という資格を持たせるだけである。一つ一つの医薬品に対して、禁忌事項をしっかりと確認し、顔色や表情をみながら適切なアドバイスをできるのだろうか?「ポイントカード持ってますか?」と登録販売者が聞きながら、レジをたたくだけだったら、対面販売の意味は全くない。
さらに、対面販売でなくても、対面販売と同等の安全性を確保できるかどうかの検証がなされていない。僕たちネット販売推進派はネット販売でも十分に安全性を確保できると主張したが、厚生労働省およびネット販売反対派の人たちは最後まで対面販売神話を頑なに守り続けてしまった。
「安全な流通のためには、対面販売でなければならない」ということが論理破綻していることを施行前に認めて欲しかった。認めるには十分な時間と機会があった。にもかかわらず、最後まで誤りを認めなくて、取り繕うことに終始した。その結果が、施行の前営業日、5月29日に公布された経過措置である。離島在住者と継続購入者だけにしか2類の購入を認めない。しかも期間は2年間。このようなつぎはぎだらけの策が施行直前に出てきてしまった。
今回の混乱を解消するのは実は簡単だ。「安全な流通のためには、対面販売でなければならない」というロジックの間違いを厚生労働省がすなおに認め、そこに立ち戻って法令を見直すことだ。
厚生労働省が頑なに誤りを認めないために、本日をもって医薬品を購入できなくなった消費者が多数発生し、医薬品を販売できなくなった薬局・店舗も多数発生していることを、厚生労働省はしっかりと直視して欲しい。

2009/05/26

舛添大臣、国民的議論とは何なんですか?

先週末まで開かれた「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」は、もともと舛添大臣の「両派の意見をよく聴き、国民的議論にしたい。」という発言から開かれたものだ。
その後の経緯を見ると、7回にわたる検討会が開かれたが、両派の意見が平行線をたどってしまった。5回目の検討会では、検討会の意向を無視したまま、突然、厚生労働省から省令案なるものが飛び出した。そして、その省令案に対してパブコメが募集された。その募集も通常は30日のところ、わずか7日間しか集めなかった。それにも関わらず、実に9,824件ものパブコメが集まった。(PDF)
その結果は、今回の経過措置に賛成するのはわずか42件(0.5%)、郵便等販売の規制をするべきでないという意見が85%にのぼる8,333件となった。
国民の意思は舛添大臣にもしっかりと伝わったはずである。

しかし、報道を見ると、省令案のままの省令が公布されるというリーク記事が次々と出ている。省令は、厚生労働省の現場が素案を作っても、最後に舛添大臣の印鑑が押されなければ公布はされない。まさか、0.5%の賛成しかない経過措置の省令に、舛添大臣が印鑑を押すのだろうか?8,333件の郵便等販売の規制をするべきでないという意見を一顧だにしないのだろうか?
国民の意見に耳を傾け、リーダーシップを発揮すれば、何をすべきかは自明である。

舛添大臣に聞きたい。あなたにとって、国民的議論とは何なんですか?

2009/05/25

賽は投げられた

「ここを渡れば人間世界の悲惨、渡らなければわが破滅。(兵士たちに振り返って)進もう! 神々の待つところへ! 我々を侮辱した敵の待つところへ! 賽は投げられた!」(ユリウス・カエサル@ルビコン川)

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本日、医薬品ネット販売の件で、国を東京地方裁判所に提訴しました。
これに関して、以下のように考えています。

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「医薬品ネット販売の権利確認請求、違憲・違法省令無効確認・取消請求事件」訴訟提起にあたっての声明

ケンコーコム株式会社および有限会社ウェルネットは、本年2月6日に公布された、医薬品のインターネットを含む郵便等販売を、第3類を除き禁止する改正薬事法施行規則(厚生労働省令)について、国を相手取り、本日、5月25日午前、東京地方裁判所に提訴いたしました。
6月1日の同省令施行後も、我々は3類以外の医薬品もネットで販売できるという権利の確認とともに、この省令が、憲法に違反し、法律にも違反していることを前提にその無効を確認し、またはその取り消しを求めるものであります。

我々は薬事法に基づき、店舗所在地の知事より販売許可をいただき、薬剤師が医薬品を管理し、販売している薬店です。店舗も構えておりますが、インターネット上でも従来、安全な医薬品販売を行っています。
ネット販売にこだわっていますのは、昨今のドラッグストアに見られる医薬品の販売の仕方がとうてい安全とは言えないと感じているからです。医薬品を棚に陳列するだけで、お客さまにセルフで取りに行かせ、パッケージを見るだけで買い物かごに入れ、アルバイトの店員がレジを打ち、代金をいただいて、袋につめてお渡しする。こんな売り方が「対面」であるというだけで安全でしょうか?
むしろ我々が行うネット販売のほうがはるかに安全です。ウェブページ上では医薬品のパッケージに書かれている説明だけでなく、説明書に書かれている詳しい説明も読むことができます。薬を買おうとすると、必ず問診表がでてきて、そのお薬を買ってはいけないアレルギーがあるか、年齢制限に引っかからないかなどをチェックしなければ買えません。お薬に関してわからないことがあれば、電話やメールで問い合わせられます。必ず、薬剤師が懇切丁寧にお答えします。
お客さまはこのような医薬品ネット販売に安心して買い物にいらっしゃいます。特に、最近の新型インフルエンザ拡大の際には、医薬品ネット販売があるおかげで、感染の可能性が高い人混みに出向かずにすんだ、といったお声も多数いただいています。
よく、安全か利便かと言われますが、間違った問題の把握です。ネットは安全を確保した上で利便性を提供しています。

しかしながら、このたびの省令では、6月1日以降、ビタミン剤とか整腸薬のような一部のお薬を除いて、風邪薬とか、水虫の薬、胃腸薬、漢方薬、妊娠検査薬といった医薬品のネット販売を危険であるとして一律に禁止しました。薬事法に明記されていない「対面の原則」に基づいて、省令で禁止するというのです。そもそも、なぜ対面でなければ安全性を担保できないのか根拠は示されていません。また、ネット販売だから発生してしまった重大な副作用も1件も報告されていません。

今回、医薬品のネット販売に対する規制を強行するならば、6月1日から施行される改正薬事法令は二つの点で致命的な問題をかかえた欠陥法令であるというしかありません。

一つは憲法で保証された「営業の自由」を侵害していることです。我々は安全性の担保にこだわりを持って医薬品のネット販売を行ってきました。それを突然、厚生労働省がルールを変え、あなた達はネット販売できなくなりました、と言われるわけです。ケンコーコムは年間数億円の売上が吹っ飛んでしまいます。ウェルネットは商売を続けられなくなるかもしれません。
今回の改正薬事法ではコンビニでも医薬品が売れるようになります。ドラッグストアもアルバイトを登録販売者に仕立てることで、薬剤師不足を解消できます。そのような規制緩和が進む一方で、なぜネット販売だけが大きく割を食うような制度改正がなされるのでしょうか?既得権グループの利権を守るために、新興のネット企業は犠牲にならなくてはならないのでしょうか?
我々は安全なネット販売を行うための情報提供のルールを自主規制でつくっていますが、さらに、これを省令で定めて全ての業者に遵守させるように提案しています。ネット販売は、かくも安全なのに、問答無用で販売禁止と言われることには、全く納得ができません。明白に営業の自由を侵害して,違憲です。

二つ目は、厚生労働省が暴走して、ネット販売の規制を進めていることです。改正薬事法上では3類以外のネット販売を禁止することなど、全く記載されていません。単に情報提供方法を定めること(36条の6)となっているだけです。薬事法を施行するために、法の具体的な規定に則って省令を作るのであればわかります。しかし、今回は薬事法に書かれていない、「3類以外のネット販売禁止」という省令を厚生労働省が独断で作ってしまったのです。法律に書かれていない重大なルールを厚生労働省が勝手に作る。こんな官僚の横暴がまかり通ったら、法治国家とは言えません。
しかも、このような暴走を防ぐためのパブリックコメントをも厚生労働省は無視しました。今回の省令に対しては異例の2,353件というパブコメが出されました。そのうち、実に97%にあたる2,303件が省令に反対であるという結果でした。これだけの民意があるにも関わらず、何ら手を加えないまま省令公布を強行しました。法律を無視して省令を作り、それをパブコメで反対されても、強行する。こんな暴挙がまかり通ったら、民主主義とは言えません。厚生労働省は裸の王様ですが、「王様は裸だ」と指摘されてもなお、自分が裸だと気づきません。

今回の理不尽な省令が公布、施行されるのを食い止めるために、我々は取りうる手段を尽くしました。2005年より厚生労働省に働きかけを行い、ネット販売の安全策も示してきました。この省令づくりの検討会へ参加させてもらえるよう求めましたが、門前払いされました。省令が公布された後に、舛添大臣の肝いりで始まった「医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会」においてはようやく委員としての参加が認められ、省令の再改正に向けて、忌憚なく意見を述べさせていただきました。しかし、検討会での議論は平行線に終わり、報告書すら出せない状況で、5月22日に第7回をもって終了しました。
一方で、検討会に承認されない経過措置の省令案が5月11日に発表されました。その案も「2年間の経過措置で、離島居住者および継続購入者に限って2類の販売を認める」という、とても承服しがたいものでした。この経過措置に対するパブリックコメントは、わずか1週間の募集でしたが、9,824件もの意見が寄せられ、経過措置への賛成は42件、わずか0.5%という悲惨きわまるものでした。一方で、85%にあたる8,333件もの意見が「郵便等販売の規制をするべきでない」というもので、3類以外の医薬品ネット販売を禁止する省令に対して、国民の怒りは一層高まっています。このような状況であっても、報道によれば、厚生労働省は経過措置を省令案通りに近々公布する見通しです。

このように、憲法に二重の意味で違反し、国民から全く支持されない省令ですが、6月1日の施行まであと1週間となってしまいました。検討会も終了し、パブリックコメントも終わり、我々がこの省令の施行を食い止める手段は、唯一、行政訴訟を起こすだけしか残っていません。司法の場に出ずとも、しっかり議論すれば行政は理不尽な結論を出さないはずだと信じて、今まで4年間、厚生労働省と折衝してきました。日本という国の政治・行政の良心を信じていただけに、大変残念です。

行政の暴走を、法の番人である司法に食い止めていただき、日本国憲法の精神が守られ、消費者の利益のためにも、より安全で便利な医薬品ネット販売が継続できることを心より願います。

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2009/05/23

検討会終了

2月から始まった検討会が、第7回をもって終了した。
最後の最後まで、厚労省はやってくれた。先日出されたヘンテコな省令案、7日間という異例の短期間の募集期間にもかかわらず、実に9824件という異例に多いパブコメが出された。パブコメを投稿いただいた方、どうもありがとうございました。
9824件の意見のうち、今回の省令案に賛成は、42件。わずか0.5%しか賛成していない。また、検討会メンバーも全員そろって今回の省令案には賛成できないとなった。今回の検討会では、議論が最後まで平行線をたどり、隔たりが大きすぎることから報告書すらまとまらなかったが、厚生労働省の出した省令案に賛成しないということだけは満場一致したのは皮肉なことだ。
検討会は、今回の厚労省の出した省令案には全く関与していない、ということでコンセンサスが得られた。
それでも、厚労省は省令案どおり省令を決行するだろう。彼らの暴走を誰が止めることができるのか?有識者が集まっていると言われている検討会の意向も聞かず、1万件近いパブコメのうち、99.5%が賛成していないという驚異的な事態にもたじろがず、我が道を突き進んでいる。

7回にわたってネット賛成派も反対派も熱弁をふるいまくった検討会だった。たぶん、行政で行われる検討会としては異例の盛り上がりだったと思う。三木谷さん、ありがとう。足高さん、増山さん、ありがとう。井村さん、おつかれさまでした。他の委員の方もおつかれさまでした。委員全員が意見に大きな隔たりがあるものの、純粋に議論を楽しんでいたと思う。
毎回、検討会のたびに全精力を傾けて討議に臨んだ。毎回が真剣だった。委員全員がそうだろう。にも関わらず、検討会の終了時に、誰からも拍手ひとつ出なかった。あれだけ議論を楽しんだし、座長も困難な中で何とか議事を切り回したのだから、盛大に拍手をしたいと通常は思うところだが、厚労省の役人の顔を見ると、そういう気持ちは全く起こらなかった。
厚労省がどういうところか、身をもって知ることができたのが、今回最大の収穫だ。

2009/05/18

パブコメ提出

ケンコーコムとしてのパブコメを提出した。
僕個人としてのパブコメも別に提出したが、今回の省令再改正案に対して、総合的な意見はこのパブコメに集約されている。
1週間というパブコメ募集期間はあまりに短すぎる。

しかしながら、この短期間の中で、数多くのパブコメが提出されたようだ。お忙しい中、パブコメを提出していただいた方、どうもありがとうございました。

締切期限の18日24時までまだ時間がある。まだ提出されてない方、ぜひパブコメ提出をお願いします。

以下のバナーにパブコメへのリンクもあります。



ケンコーコムから提出したパブコメ
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○件名:薬事法施行規則等の一部を改正する省令の一部を改正する省令案について
○意見:
[該当箇所] 
(1)離島居住者に対する経過措置
  ○ 郵便等販売の方法等
  ○ 一般用医薬品に係る情報提供の方法等
(2)継続使用者に対する経過措置
  ○ 郵便等販売の方法等

[意見内容]
経過措置は講ずるべきだが、省令案の内容には以下のとおり反対である。
(1)本経過措置の対象となる消費者を離島居住者および継続使用者に限定すべきではない。
(2)2年の年限を区切った経過措置とすべきではない。
(3)インターネット販売を含む郵便等販売のありかたに関する審議会の設置・法令化について、この省令に盛り込むべきである。

[理由]
(1)本経過措置の対象となる消費者を離島居住者および同一医薬品の継続使用者に限定すべきではないことについて
 インターネットを利用して医薬品を購入する消費者は、山間部などのへき地、田舎にお住まいの方、視覚・聴覚・身体にハンディキャップをお持ちの方、対人恐怖症・男性恐怖症などの方、近くの薬局・店舗で取り扱われていない特定の医薬品を必要とする方、都心に住んでいても子育てや介護に追われる方、一人暮らしで仕事が忙しい方、またこれらの事情を複数もっている方など様々な方がいる。また、現在は近隣の薬局・店舗で医薬品を購入できているが、体調の変化や周囲の環境の変化などによって、今後、インターネットによって医薬品を購入する必要が生ずる消費者はむしろ増える一方である。
 本経過措置の対象となる消費者を離島居住者および同一医薬品の継続使用者に限定すれば、この条件を満たさない多くの消費者は、今後自分に合った医薬品を入手できず、健康維持に大きく影響することになり、かえって不平等な措置となるのではないか。
 本経過措置においては、(1)離島居住者に対する経過措置と(2)継続使用者に対する経過措置を分けて定める必要はなく、専門家による電話その他の方法による情報提供と相談対応を前提として、平等に全ての消費者を対象とする郵便等販売の経過措置とすべきである。

(2)2年の年限を区切った経過措置とすべきではない。
 2年の年限を区切るのみでは2年後に再び、郵便等販売を通じて医薬品を購入する消費者が、一般用医薬品を入手できなくなったり、郵便等販売を行う薬局・店舗が経営上の窮地に追い込まれたりするおそれが高い。
 よってこの経過措置は、後述のような「インターネット販売を含む郵便等販売において、適切な情報提供等がなされる実効性のある制度が構築されるまで当面の間」とすべきである。

(3)インターネット販売を含む郵便等販売のありかたに関する審議会の設置・法令化について、この省令に盛り込んでいただきたい。
 当社は、服薬説明機能をはじめとする安全確保のための措置を継続的に拡充しながら、一般用医薬品を販売しており、今日までに、インターネット販売に起因する健康被害、副作用の報告を受けていない。また日本全体でみても、インターネット販売に直接起因して発生した一般用医薬品の副作用は把握されていない。このような中で、一般用医薬品(第3類医薬品を除く)のインターネット販売が一律に禁止されることを前提とした措置に何ら合理性はないと考える。
 インターネット販売を含む郵便等販売においても、適切な情報提供等がなされる実効性のある制度を構築するため、審議会の設置や制度の法令化についてもこの省令に盛り込むべきである。
以上

2009/05/14

パブコメのお願い

5月11日に第6回の検討会が開かれた。
その際に、厚生労働省から省令の再改正案が提出された。

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6月1日以降に第2類医薬品をネットで購入できるのは、以下の二つの条件のいずれかを満たす人だけに限定する。
・離島にお住まいの方(北海道、本州、四国、九州、沖縄本島以外にお住まいの方)
・5月31日以前に医薬品を購入された方が、同一店舗で同一医薬品を継続購入される場合

これらの条件は2年間の期間限定で、2年後にはこれらの方も第2類医薬品のネットでの購入を禁止する。
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全然話にならない。2類の販売が一部でも認められたことは多少の評価ができるが、ネットで購入できるのは離島か継続購入者のみ。冗談としか思えない。

この省令案に対するパブコメが開始されたが、その期間はたった1週間のみ。5月18日が締切りだ。通常はパブコメの募集期間は30日以上が必要だ。施行日が近いからという理由だろうけど、1週間ということはないでしょう。。。

このヘンテコな省令案を変えられるとすると、パブコメの力を信じるしかない。このブログをご覧になった方。ぜひとも、この省令案に対する想いをパブコメにこめてください。

以下のバナーに今回の省令案の詳細、およびパブコメのやり方を記載しています。
ぜひ、よろしくお願いします。

2009/05/04

第5回検討会議事録CNET記事

先日の医薬品新販売制度の円滑施行に関する検討会 第5回の議事録がCNETに掲載された。

http://japan.cnet.com/sp/drag/story/0,3800097284,20392676,00.htm

CNETの記事にもあるとおり、土壇場で厚生労働省がどんでん返しを行った。
改めて、この記事を読み返してみると、検討会がここまで混乱した大きな原因の仮説が出てきた。

厚生労働省の現場事務局(総務課)と舛添大臣が十分に連携を取れていないのではないかということだ。今回、第5回の検討会には舛添大臣は出席されなかった。しかしながら、各委員からさまざまな意見が出され、着地点に向けて大きく前進していた。今まで5回の検討会の意見を踏まえて、結論は厚生労働省に委ねるとされた。今回の検討会は舛添大臣の意向で開催された。その検討会の以降を踏まえた決断は当然、舛添大臣によってなされるはずである。にもかかわらず、検討会を締める段階になって事務局から省令再改正案が出されるタイミング、およびその骨子が指し示されたのは、事務局が相当お人よしなのか、大臣の意向を無視して暴走していることが赤裸々になったか、どちらかであろう。
舛添大臣の決断を期待している。

2009/04/29

馬鹿にするにも程がある

ここのところ、医薬品ネット販売の件は検討会で話すことに集中しようかと思い、ブログでの更新は控えていた。
昨日、第5回の検討会が開かれたが、最後に大どんでん返しがあった。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/04/28/medicinesell/

一通りの論点に関する議論が一段落した後、いくつかの総括的な話が始まった。僕は、とにかくあと1カ月しか残っていないので、通信販売の継続ができなくなることによる混乱が発生することを何とかして避けて欲しい、2類だけでも暫定的に継続させて欲しいというお願いをした。
最後に井村座長が、今回は主張がいくつかの点で平行線に終わったので、報告書ではなく、議論の内容を行政に報告し、後は行政に委ねるとした。ここまでは、まだわかる。

最後の最後に厚生労働省から今後の進め方が提案された。
・省令案を考えているのでそれを近日中に提出する。
・施行まで時間がないので、早速その省令案に対してパブコメを求める
・次回の検討会は5月中旬に開く。その際に省令案に対して議論して欲しい

とのこと。馬鹿にするにも程がある。今までの検討会は何のための検討会だったのだろうか?検討会とは別に、厚生労働省が新たな省令案を考えている。その省令案を検討会に提示もせずに、パブコメにかけるという。有識者として呼んでいる検討会にまず諮るのが当然の筋だろう。厚生労働省の独善的な裁量行政、これに極まれりの象徴だ。

そこで三木谷さんが激怒し、厚生労働省からしぶしぶ省令案の骨子が出された。暫定的に次の二つの場合は当面、ネット販売を認めるという。
・特定の漢方薬等、現在通信販売の利用者が6月1日以降に継続購入する場合
・離島等、入手しづらい環境にいる場合

これまた馬鹿にするにも程がある。何のためのリスク分類だったのだろうか?2類の中でも伝統薬や漢方薬はリスクが低いとでも言うのか?それなら最初から3類にすれば良いであろう。
そもそも、誰だけは買っても良い(逆に言うと、その人以外は買ってはいけない)という規制自体、全くナンセンスである。何度か検討会でも指摘しているが、医薬品販売の安全策を定め、それを満たさない販売方法を規制するというのがやるべきことである。
何らかの理由で、伝統薬と漢方薬は救う、ネットは潰すという既定路線があるということが改めて浮き彫りになった。その結論に持ち込むため、強引な決定プロセスを採り、安全をないがしろにした規制を提案しようとしている。
厚生労働省の事務方はその検討会を"お飾り"としてしか扱っていない。いくら検討会で真摯な議論が交わされても、こんな厚生労働省の下では、とんでもない裁量行政が繰り返され続けるだろう。この裁量行政とは徹底的に闘い抜くことを、改めて決意した。