2010年03月26日

◆ ミトコンドリアDNA

 (前項の)デニソワ人の系統はいくらかわかったが、デニソワ人の形質はわかっていない。これは、今回の DNA が(核 DNA でなく)ミトコンドリア DNA であるからだ。

 ──

 (前項の)デニソワ人の研究では、デニソワ人の形質はわかっていない。「 DNA がわかれば、形質もわかるだろう」と思うかもしれないが、さにあらず。なぜなら、ここで分析したのは、(核 DNA でなく)ミトコンドリア DNA であるからだ。
 
 生物の形質を知るには、DNA を調べればいいが、その DNA は 核 DNA である。一般に、単に「 DNA 」と呼べば、核 DNA を指す。
 ただし、今回のデニソワ人で調査したのは、ミトコンドリア DNA である。これを調べると、系統についてはかなり判明するが、形質については判明しない。もともと形質の遺伝子が含まれていないのだから、当然だ。

 ではなぜ、核 DNA でなく、ミトコンドリア DNA を調べたのか? それは、次のことによる。
 「 核 DNA はこわれやすいが、ミトコンドリア DNA はこわれにくい」


 このことがあるから、とても古い化石を分析するときには、核 DNA よりもミトコンドリア DNA を対象とする。(核 DNA はこわれて使い物にならないことが多い。)
 ( そもそも骨の DNA を調べるということが、あまり容易ではない。なるほど、その分析感度は、今日ではかなり高い水準にまで進んでいる。とはいえ、それは資料(骨)がきちんとした状態である場合だ。百万年もたつと、資料(骨)がボロボロになっていることもある。そういう状態では、「雑音」みたいなものがまぎれこむから、いくら感度を高めても、正確さが落ちてしまうこともある。)
 ── 

 まとめ。

 DNA の分析といっても、核 DNA とミトコンドリア DNA とは、別のものである。前者からは、形質がわかるが、後者からは、形質はわからない。
( 形質がわかるといっても、遺伝子から直ちに形質がわかるわけではない。原理的にはいつかわかるはずだということであって、今の科学水準ですぐにわかるという意味ではない。本項のポイントは、「わかる」という側の話ではなくて、「わからない」という側の話。)
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 ※ 本項の説明は、私の見解ではなくて、一般的な知識についての紹介です。
 


 ※ 以下は読まなくてもよい。
 
 [ 付記1 ]
 系統についてはミトコンドリア DNA でもわかる。とはいえ、母系についてわかるだけだから、亜種レベルの違いでは、はっきりとしたことは言えない。この件は、下記に説明されている。
  → Wikipedia 「ミトコンドリアDNA」

 [ 付記2 ]
 種レベルの違いならば、ミトコンドリア DNA だけでも、精度はあまり落ちないだろう。というのは、異なる種同士では、交雑が起こらないからだ。亜種レベルならば、交雑が起こるので、ミトコンドリア DNA だけでは父系の系統がわからないが。
  
posted by 管理人 at 18:13 | Comment(0) | 生物・進化
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