日本人が“やめられない”理由
2010年03月29日19時08分 / 提供:Business Media 誠
日本の組織や人の特徴の1つに、“EXITできない”ということがあります。例えば、後継ぎがいない零細企業の経営者でも、「会社を誰かに売る」などとは考えもしない人がたくさんいます。そして文字通り“倒れるまで”自分で経営します。
会社単位ではなく、事業単位でもそうです。旧カネボウも会社が崩壊するその時まで、粉飾決算までして紡績事業を持ち続けていました。まるで「企業全体が倒産する方が、特定の事業から撤退するよりマシである」とでも考えていたかのようです。戦争の時の判断もそうだったのかもしれません。国が滅びそうにならないと降伏しないのです。
西欧の企業はまったく考え方が違います。例えば、英国の「Boots」という雑貨・ドラッグストアが10年くらい前に日本に進出してきましたが、あまり流行らなくて、2年ほど後に撤退しました。カルフールも3年くらいで撤退の方向を決めています(実際の売却までは5年)。米系の金融機関では赤字が数年続くと「部門ごとクローズする」というのはよくある話です。
日本企業と欧米企業では、この“引き際のタイミング”が大きく違う、といつも思います。
「撤退をとにかく避ける」という傾向は個人もまったく同じです。例えば、夫婦関係において、「だめだ……」と思ったら躊躇(ちゅうちょ)せず離婚する欧米と、「まずは修復しよう」として、それでだめでも「本当に我慢できないか、もう少し様子をみてみよう」とか言い、加えて「何年間か冷却期間を置いて」離婚する日本、というような違いです。
仕事選びでも同じですね。「この仕事じゃないよ、オレの人生の時間を投資すべきは」と思えば、入社1年目でもすぐに転職する欧米に対して、「まずは、石の上にも3年」の日本。
ちきりんは、この理由のために「日本人には投資が向いていないのでは?」と思います。ちきりんの周りで投資している人の多くが、「いつ売ればいいのか」を知りません。「買う決断」はできても「売る決断」ができないので、損を引きずったままひたすらに待つ人が多いです。一方、株式などとは違い、預貯金ならずっと持っていてもいいので、預貯金や保険が(投資より)日本人には人気があるのかもしれません。
とにかく「引き際のタイミングが非常に遅い」のが日本の公私にわたる特徴です。
●日本人が“やめられない”理由
なぜこんなに“EXIT”、もしくは“撤退”ができないのか。
1つの違いは解雇の法的困難さです。その部門や工場で働く人の処遇に困るから撤退が遅れる。また、契約概念が希薄ということもあるのでしょう。欧米なら工場進出にあたって自治体から優遇措置を受けていても、契約の中に撤退条件も明記してあり、それ以上の義務はありません。しかし日本では、企業と自治体は運命をともにしているようで、工場撤退などは企業から自治体への仁義問題にさえなりえます。
その他にも、日本の組織・個人が撤退が苦手な理由があります。
●(1)リーダーさえ変化を望まない
たとえ赤字でも、思考を止めて惰性に身を委ね、昨日と同じことを今日も淡々と進めるのは、とても楽です。動きを止めて何かを変えるにはエネルギーが必要で、誰かがその仕事を引き受け、泥をかぶらないと大きな変化は起こせません。
この「泥をかぶってでも、変化を起こす人」をリーダーと呼ぶわけで、企業においてはトップ経営者がその役目を果たすべきです。工場1つ閉めるだけでも、経営者の仕事はものすごく増えるし、ましてや事業部門をクローズするのは、気が遠くなるほど大変な仕事です。
しかし、高齢になってから“社長の順番が回ってきた経営者”は、そんなことには手を付けたくないのが本音でしょう。一方、欧米ではそういう「ものすごく大変な仕事を遂行すること」への対価として高額な経営者報酬が払われているので、「大変だからやりたくない」では済みません。株主も「変化は嫌い」などという経営者を許さない。そういうガバナンスが効いているのです。
会社単位ではなく、事業単位でもそうです。旧カネボウも会社が崩壊するその時まで、粉飾決算までして紡績事業を持ち続けていました。まるで「企業全体が倒産する方が、特定の事業から撤退するよりマシである」とでも考えていたかのようです。戦争の時の判断もそうだったのかもしれません。国が滅びそうにならないと降伏しないのです。
西欧の企業はまったく考え方が違います。例えば、英国の「Boots」という雑貨・ドラッグストアが10年くらい前に日本に進出してきましたが、あまり流行らなくて、2年ほど後に撤退しました。カルフールも3年くらいで撤退の方向を決めています(実際の売却までは5年)。米系の金融機関では赤字が数年続くと「部門ごとクローズする」というのはよくある話です。
日本企業と欧米企業では、この“引き際のタイミング”が大きく違う、といつも思います。
「撤退をとにかく避ける」という傾向は個人もまったく同じです。例えば、夫婦関係において、「だめだ……」と思ったら躊躇(ちゅうちょ)せず離婚する欧米と、「まずは修復しよう」として、それでだめでも「本当に我慢できないか、もう少し様子をみてみよう」とか言い、加えて「何年間か冷却期間を置いて」離婚する日本、というような違いです。
仕事選びでも同じですね。「この仕事じゃないよ、オレの人生の時間を投資すべきは」と思えば、入社1年目でもすぐに転職する欧米に対して、「まずは、石の上にも3年」の日本。
ちきりんは、この理由のために「日本人には投資が向いていないのでは?」と思います。ちきりんの周りで投資している人の多くが、「いつ売ればいいのか」を知りません。「買う決断」はできても「売る決断」ができないので、損を引きずったままひたすらに待つ人が多いです。一方、株式などとは違い、預貯金ならずっと持っていてもいいので、預貯金や保険が(投資より)日本人には人気があるのかもしれません。
とにかく「引き際のタイミングが非常に遅い」のが日本の公私にわたる特徴です。
●日本人が“やめられない”理由
なぜこんなに“EXIT”、もしくは“撤退”ができないのか。
1つの違いは解雇の法的困難さです。その部門や工場で働く人の処遇に困るから撤退が遅れる。また、契約概念が希薄ということもあるのでしょう。欧米なら工場進出にあたって自治体から優遇措置を受けていても、契約の中に撤退条件も明記してあり、それ以上の義務はありません。しかし日本では、企業と自治体は運命をともにしているようで、工場撤退などは企業から自治体への仁義問題にさえなりえます。
その他にも、日本の組織・個人が撤退が苦手な理由があります。
●(1)リーダーさえ変化を望まない
たとえ赤字でも、思考を止めて惰性に身を委ね、昨日と同じことを今日も淡々と進めるのは、とても楽です。動きを止めて何かを変えるにはエネルギーが必要で、誰かがその仕事を引き受け、泥をかぶらないと大きな変化は起こせません。
この「泥をかぶってでも、変化を起こす人」をリーダーと呼ぶわけで、企業においてはトップ経営者がその役目を果たすべきです。工場1つ閉めるだけでも、経営者の仕事はものすごく増えるし、ましてや事業部門をクローズするのは、気が遠くなるほど大変な仕事です。
しかし、高齢になってから“社長の順番が回ってきた経営者”は、そんなことには手を付けたくないのが本音でしょう。一方、欧米ではそういう「ものすごく大変な仕事を遂行すること」への対価として高額な経営者報酬が払われているので、「大変だからやりたくない」では済みません。株主も「変化は嫌い」などという経営者を許さない。そういうガバナンスが効いているのです。
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