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きょうのコラム「時鐘」 2010年3月30日
羽咋市にある妙成寺の五重塔に登った時のこと。外観は5階建てだから中も5層かと思っていたら、まったく違っていた
2階以上は各層の床がなく階段もない。はしごで上に登る。五重塔は「一本の柱の空間」と表現した方が正確だ。「心柱」と呼ばれる太い柱の回りを複雑な木組みが上に延びている。築400年。地震と台風に耐えた秘密がそこにあった 工事中の東京スカイツリーが日本一の高さになった。完成すると634メートルになる。街中にそんな高い鉄塔を建てて大丈夫かと心配になるが、近代技術の粋を集めた塔は、日本古来の五重塔と同じ制震構造なのだという 五重塔が地震で倒れた記録はない。五重塔の心柱に相当する円柱がスカイツリーの中心を貫いている。地震が起きると回りの構造材と別の動きで揺れを吸収する。見る角度によって三角柱にも円柱にもなる不思議なツリーの姿である 昔も今も塔は独特の魅力を持っている。妙成寺の塔内には藩政期の大工の落書きがあった。スカイツリーにも落書きがあれば、何百年後かにだれかの目に触れ、建設従事者の感動を伝えるに違いない。 |