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荒れた学校で過酷な勤務、自殺した教諭の「労災」認める

2010年3月29日23時30分

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 堺市の市立中学校の女性教諭(当時51)がうつ病になって自殺したのは、荒れた学校現場で過酷な勤務を強いられたためとして、夫(63)が地方公務員災害補償基金(東京)を相手に女性の死を公務災害と認めるよう求めた訴訟の判決が29日、大阪地裁であり、不認定とした基金大阪府支部の処分を取り消した。

 中村哲裁判長は「頻繁な授業妨害や生徒の暴力などで強いストレスにさらされていた」とし、学校側の支援不足を批判した。

 代理人で過労死問題に詳しい松丸正弁護士によると、「荒れた学校」での勤務と自殺との因果関係を認めた司法判断は全国初。公務災害は公務員の「労災」にあたり、補償金給付などの対象となる。

 判決によると、女性は中学2年の学級担任だった1997年6月、うつ病と診断され、休職。治療中の98年10月、自宅で首つり自殺した。

 判決は、女性が勤めていた中学校では多くの生徒が教師の指導を無視し、備品の破壊や授業妨害が頻発していたと指摘。女性は無断で帰ろうとした男子生徒を止めようとして腹部を殴られたり、職員室で女子生徒にイスごと引きずり回されたりしていたとし、「日常の職務それ自体が強い肉体的・精神的ストレスを伴うものだった」と認定した。

 さらに判決は、学校の対応について「指導方針に一貫性も統一性もなく、(女性は学校から)放置されたとも言うべき状況にあった」と批判した。

 夫は2004年、同基金府支部で申請を退けられ、再審査も棄却されたため、08年10月に提訴していた。

 「勤務条件は他の教師も同様で、自殺に至るほどのストレスがあったとはいえない」と訴訟で反論していた同基金は、「内容をよく検討したうえで対応を検討する」とコメントした。(阪本輝昭、大出公二)

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