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【石川】

多重債務者支援10周年 金沢あすなろ会 記念誌が完成

2010年3月27日

10年間の活動を振り返る榊理事長=金沢市内で

写真

行政との懸け橋に

 昨年11月に発足から10年を迎えた多重債務者の支援に取り組むNPO法人「金沢あすなろ会」が、これまでの歩みを振り返る10周年記念誌を完成させた。違法な金利や取り立てとの闘いに加え、近年は貧困層の生活再建を支える活動にも積極的に乗り出している。榊国雄理事長は「困った人たちの“居場所”であり続けたい」と決意を新たにしている。(福田真悟)

 同会は、商工ローンの過激な取り立てが社会問題化していた一九九九年十一月に発足。当初は、被害に遭った事業者らが集まり、集団訴訟を行うなど「被害者の会」の側面が強かった。その後、個人で多重債務に陥る人からの相談が増え始め、二〇〇二年夏には金沢市内に事務所を構えて相談機能を強化した。

 「多重債務者は、借金は恥などと自らを責める傾向にある」と榊理事長。「過剰な貸し付けでもうける業者側にも問題がある。『自分だけじゃない』と感じられ、闘う英気を養える居場所が何よりも大事」と考える。

 約五十ページの記念誌には、相談に訪れ、救われた多重債務者の体験談が数多く収められている。「解決できない借金はないと言われ、何とかなるかなと思えるようになった」「なぜか事務所にくると気持ちが軽くなる」−。

 〇六年から、相談員たちは債務整理だけでなく、生活保護などの勉強も始めた。不況の影響で、借金はなくなっても仕事に就けないなどの理由で生活苦に陥るケースが増えてきたためだ。昨年暮れからは事務所で、食事を確保できない人向けの炊き出しも始めた。

 支援の範囲を広げる一方、行政への注文も忘れない。「制度からこぼれ落ちた人たちを救うのは本来は行政の仕事」と榊理事長。運営費は会費と協力者のカンパでまかなうが、財政に余裕はない。

 記念誌は、県や市町にも送った。「会の活動を知ってもらい、行政との連携を深めたい」との狙いからだ。

 「二十周年の記念誌は作りたくないね」。そうほほ笑みながら、榊理事長は“弱者”に優しい社会の実現を願った。相談は「金沢あすなろ会」事務所=電076(262)3454=へ。

 

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